「無理にテレビで出そうとは思わない」 カンニング竹山がライブでしか“芸”を見せないワケ
2008年に始まり、今年で14回目を迎えるカンニング竹山(50)の単独ライブ「放送禁止」。放送作家の鈴木おさむがタッグを組み、自身の不倫報道や相方・中島忠幸さんの死など、これまで多くのタブーを笑いに変えてきた。そのタイトル通り、映像化を極力避け、「ここでしか見られない」ネタにこだわる理由は何なのか。“お笑い芸人”竹山の持つ哲学に迫った。
鈴木おさむと二人三脚で作り上げた究極の舞台「放送禁止」
2008年に始まり、今年で14回目を迎えるカンニング竹山(50)の単独ライブ「放送禁止」。放送作家の鈴木おさむがタッグを組み、自身の不倫報道や相方・中島忠幸さんの死など、これまで多くのタブーを笑いに変えてきた。そのタイトル通り、映像化を極力避け、「ここでしか見られない」ネタにこだわる理由は何なのか。“お笑い芸人”竹山の持つ哲学に迫った。(取材・文=佐藤佑輔)
――DVDやアーカイブ配信など、映像を極力残さないことをコンセプトにした経緯は。
「初めは金がなくて、サンミュージックがDVDにしたら製作費を出すっていうから、5回目くらいまでは映像も残してたんですよ。でもなるべく『ここは切ってくれ』『そこはピー音を入れてくれ』とおいしいところはカットしてた。根本的に、ライブって会場に足を運んでくれたお客さんのためのものだろうっていう考えがあって、チケットを買って見に来てくれた人を一番大事にしたいから、極力映像には残したくなかった。DVDを見た人が『ここ、なんて言ってるんだ?』『生で見てみたい』と思うように誘いたくて。アダルトビデオのモザイクみたいな感じ? たしかに、そういうことかもしれないですね。
葛藤はありましたよ。当然、芸人としては多くの人に見てもらいたいという思いがある。でも、子どものころに『ザ・ベストテン』を見てて、テレビ出演NGの大御所は最後まで出てこなかった。『なんでだよ!』なんて子ども心に思ったけど、今思えば、それが彼らのブランド力になっていたし、本当に見たいのならコンサートに来いってことだったんだよね。だから6回目からは金銭的にも余裕が出てきたので、そろそろ映像を残すのはやめようと。その辺りから閉鎖性というものをもっと意識してつくるようになりましたね」
――今年で14回目を迎えるが、あらためて立ち上げ当初のことを振り返って。
「相方の中島(忠幸)が亡くなって、落ち込んでた時期に(鈴木)おさむさんが舞台の話を持ちかけてきてくれて。おさむさんの演出ってストロングスタイルで、一度舞台に立ったらエンディングまで(舞台袖に)はけさせないんですよ。最初のうちは僕1人じゃ無理だろうと幕間の芝居を女優さんや男優さんに出てもらってました。
2年目に僕の不倫報道が出て『すいません!』と謝りに行ったら、おさむさんは『竹山くん、やったじゃん! ネタに使えんじゃん!』と大喜びで。記事を出した週刊現代さんにお願いして、報道の裏側でどういう風に取材が進められていたのか、タレコミ料はいくらだったのかとか、逆取材したときの話を披露したりして。そのころから、何となく『放送禁止』の形というのが見えてきましたね。
始めたときからのおさむさんとの約束は、中島のことを絶対に話さないっていうこと。その代わり、中島の七回忌の年、放送禁止が5回目を迎えたら、そのときは人が死んだというネタだけで2時間笑いを取ってやろうと。相方が死んだことで取材を受けたり、テレビに出たりする生き方が僕は嫌だった。でも、いつまでも相方の話をしないわけにもいかないじゃないですか。目標を立てた5年目、僕もおさむさんも勝負をかけた舞台『カンニングのお葬式』はすごく評判がよくて、翌年からはチケットが飛ぶようになくなりましたね」
――DVDに残っていない6年目以降で手応えを感じた企画は。
「『刑務所数珠つなぎ』って企画をやりたくて、ダルク(=DARC、薬物依存症からの回復をサポートする施設)にいるマーシー(田代まさしさん)を訪ねたやつですかね。『刑務所で一番悪かったやつ誰ですか?』って次々と紹介してもらっていって、ヤクザでもなんでも、一番悪い奴にたどり着くっていう。でも、田代さんから『バカ野郎、ムショの中で仲良くなんかなんねえよ。それなら、ここにいるやつみんなシャブ中だから“シャブ中数珠つなぎ”でもやんなよ』って言われて。ダルクの会長さんに聞いたら、真面目にやるならいいよってことで、各地のダルクに行って、結果的にゴリゴリの元ヤクザの方から話を聞いたりもできました。
『ツイッター1か月炎上生活』っていうのもやりましたね。1か月間わざと炎上するようなことばっかり投稿して、30日目のライブの日に『文句あるやつは俺のところに電話してこい』って言って僕の携帯番号をさらす。すぐに『おい! 竹山!』と電話がかかってきて、『もしもし? オレが今何やってるか知ってるか? ツイッター見てるならわかるだろ、今ライブの舞台だよ!』って通話をマイクに乗せて流したり」