上坂樹里、生活全てを“朝ドラ”に捧げる 直美と共に歩む1年…体調一度も崩さず「意外と頑丈なんだなと(笑)」

NHKの連続テレビ小説『風、薫る』(月~土曜午前8時)の撮影がいよいよ終盤に入った。主人公の一人・大家直美を演じる俳優の上坂樹里は、長い時間をかけて直美の人生に寄り添ってきた。そして20日から放送の第17週では、直美にとっての大きな山場が描かれた。その撮影を振り返るとともに、夢だった“朝ドラ”と過ごした20歳の日々を聞いた。

インタビューに応じた上坂樹里【写真:藤岡雅樹】
インタビューに応じた上坂樹里【写真:藤岡雅樹】

『風、薫る』で大家直美を熱演

 NHKの連続テレビ小説『風、薫る』(月~土曜午前8時)の撮影がいよいよ終盤に入った。主人公の一人・大家直美を演じる俳優の上坂樹里は、長い時間をかけて直美の人生に寄り添ってきた。そして20日から放送の第17週では、直美にとっての大きな山場が描かれた。その撮影を振り返るとともに、夢だった“朝ドラ”と過ごした20歳の日々を聞いた。(取材・文=猪俣創平)


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 物語序盤、直美は身寄りのない境遇の中、たった一人で自分の人生を切り開いてきた“たくましさ”が前面に出ていた。その後、本作のもう一人の主人公・りん(見上愛)と出会い、看護婦となったことで、生き方にも変化があったと上坂は話す。

「直美はいろいろな人に出会い、その人の生き方に触れていくことで、人のために何かをしたいと動くようになりました。最近だと、(長屋の隣人の)トヨさん(松金よね子)に対して看護婦として何もできない自分をもどかしく思う姿もありました」

 第15週の第74回で、直美は担当患者・山本辰治(本田大輔)の死から仕事に身の入らないりんを思いやり、看護婦を辞めるようにあえて厳しく伝えるシーンもあった。

「直美はあまり人のために泣くことはなかったと思うのですが、『看護婦、辞めな』と言うシーンでは今までよりも感情が出ています。持ち合わせている強さは変わらないけれど、いろいろな人と出会ったことによって、その強さをもともと直美が何に使いたいかという対象が変化したなと思います」

 そして第17週では、今までに見たことのない直美の姿が描かれた。探し続けてきた実の母が、瑞穂屋の店員・文(内田慈)だったことが判明。第82回では、牧師の吉江(原田泰造)に「抱きしめてほしかった。おっかさんと呼びたかった」と涙ながらに思いを吐き出す姿が印象的だった。

「第17週では特に、直美の感情に揺れ動きがありました。それまで直美を演じてきた中にはなかった気持ちなので、この感情をどう表したらいいのか、今までの直美のように気持ちを押し殺し、切り替えて人と接した方がよいのかと悩みました」

 その後、文は胃がんのため余命わずかであることが判明。第85回では、文が「教会に捨てられていた子がこんなすてきな看護婦さんになって」と直美の歩みを認め、「あなたならきっと大丈夫」と言葉を残して生涯を終えた。りんの母・美津(水野美紀)から「よく頑張りました」と声をかけられた直美は、これまでの思いを決壊させるように大号泣した。

「直美は文さんと接する中で、看護婦としての自分と、一人の人間・大家直美としての自分とのコントロールがうまくできなくなりますそういう複雑な思いも文さんの前では出すことで、今まで見ることがなかった直美が17週では見られると思います。演じる上でも、実の母親が目の前にいるのに一枚壁を感じ、親子なのに100%通じ合っていないような、そういう小さな心の揺れを大切にしながらお芝居していました」

 探し続けてきた母との再会、そして別れ。そんな特別なシーンを演じ終えた直後は、「集中していたこともあって、一旦抜け殻になりました」と振り返った。

朝ドラの撮影を通して実感した成長とは【写真:藤岡雅樹】
朝ドラの撮影を通して実感した成長とは【写真:藤岡雅樹】

NHKのスタジオが「自分のもう一つの居場所」に

 準備期間も含めて、“朝ドラ主人公”としての時間は1年弱に及ぶ。「完全に生活の軸が朝ドラになりました」と日々のルーティンを明かした。

「平日は撮影なので、土日の過ごし方も決まるようになりました。土日にセリフを覚えて、あとはその1週間に撮るシーンが分かるように、台本に付箋で目印をつけるんですが、付箋の消費量がすごいです(笑)。なので、見つけたら買うようにしていて、とにかく全てを朝ドラに捧げています」

 長丁場の撮影を通して、俳優としての成長も実感している。

「セリフを覚えるのが早くなりました。今までより近い距離で直美を理解できるようになりましたし、知れば知るほど、大家直美が愛おしくなりました。一つの役を長い時間をかけて演じる良さってこんなところにあるんだということを実感できています」

 当初は現場でも緊張していたものの、「今ではNHKのスタジオが自分のもう一つの居場所と思えるぐらいに安心感のある場所になりました」と表現し、感謝の言葉を続けた。

「長い期間、スタッフの皆さんやキャストの皆さんと一緒に過ごし、周りに頼っていいんだと学ぶことができました。キャストの皆さんやスタッフの皆さんを信じ、その時に生まれた感情を大事にしてお芝居することができています。本当に周りの環境に恵まれていると感じます」

 多忙な日々だが、「今のところ一回も体調を崩していなくて、意外と体が頑丈なんだなと思っています」と笑顔が弾けた。撮影も終盤に入り、“朝ドラ”の先についても少しずつ考えるようになったという。

「急に終わりが見えてきて、この先のことをいろいろと考えるようになりました。今は、大家直美という役と長い間向き合ってきて、一つの役にすごく愛着が湧いています。この感覚を忘れずに、次にどんな作品やどんな役が来ても、役と向き合うことを大切にしたいなと思っています」

 取材日は、21歳の誕生日の2日前。かねて目標だと公言してきた“朝ドラの主人公”として歩んだ20歳の1年間について聞くと、「1年とは思えないほど、あまりにも充実していました。21歳の1年もそれを上回るぐらい、後悔のないように、いろいろな自分と出会えたらいいなと思っています」と前を向いた。

 20歳でかなえた夢は、21歳へと続く。これからも一つ一つの芝居を積み重ねながら、直美という一人の人生を最後まで生き抜いていく。

□上坂樹里(こうさか・じゅり)2005年7月14日、神奈川県生まれ。21年8月から『Seventeen』専属モデルを務め、同年に俳優デビュー。22年にNHK『ヒロイン誕生! ドラマチックなオンナたち』、23年にNHKの特集ドラマ『生理のおじさんとその娘』やフジテレビ系連続ドラマ『いちばんすきな花』、24年に日本テレビ系連続ドラマ『となりのナースエイド』『ビリオン×スクール』に出演。25年はNHK BS『TRUE COLORS』、TBS系連続ドラマ『御上先生』に生徒役としてレギュラー出演。またギャラクシー賞を獲得したNHK夜ドラ『いつか、無重力の宙で』に出演して注目を集め、26年は映画『ロマンティック・キラー』、『山口くんはワルくない』に出演。NHKの連続テレビ小説『風、薫る』では見上愛とダブル主演を務める。特技は書道。身長160センチ。

次のページへ (2/2) 【写真】上坂樹里の撮り下ろしアザーカット
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