わずか5分で学生のレポートが次々到着 生成AIの“疑い”が…大学教員「ショックを受けている」と苦悶

大学でレポート課題が出されてわずか5分。本来ならば解答に時間のかかるはずのレポートが、片手では数えられない人数の学生から届く。教育現場での生成AIのあり方を巡り、議論が巻き起こっている。いったい何があったのか。投稿者に話を聞いた。

生成AIを巡る教育現場の課題は尽きない(写真はイメージ)【写真:写真AC】
生成AIを巡る教育現場の課題は尽きない(写真はイメージ)【写真:写真AC】

わずか5分で片手では数えられない数のレポートが……

 大学でレポート課題が出されてわずか5分。本来ならば解答に時間のかかるはずのレポートが、片手では数えられない人数の学生から届く。教育現場での生成AIのあり方を巡り、議論が巻き起こっている。いったい何があったのか。投稿者に話を聞いた。

「レポート課題を出した1分後に1000字程度のレポートを出してきた学生が数人おり、かなり不愉快である」

 今月2日、SNS上で学生が提出したレポートに嘆いたのは、大学で「哲学」や「論理学」の教鞭をとっている常勤研究員の榎本啄杜(@enomoto_system2)さん。生成AIにより書かれた可能性を示唆した榎本さんは「壁打ち相手としての生成AIの優秀さ」を認めつつも「一切確認してないことが丸わかりな時間に送っていることに気付いてもなさそうなことにショックを受けている」と続けた。

 この投稿に対して「1分で1000字はさすがに『考えた痕跡』がゼロですね」「書く時間より考える時間のほうが長いのが、本来のレポート」「先生のご配慮がそのような形で返ってくるのは、心苦しいものがあります」など、ユーザー間でもさまざまな意見が飛び交った。

 投稿者の榎本さんによると、レポートは学生の救済措置のためだった。オンラインでの小テストを受けられなかった学生に向けて「事情があって受けられなかった学生には別途用意した課題を出すので、レポートを作成してメールで送ってください」と案内。授業内容を理解していれば必ず解ける問題ではあるものの、解答にはある程度の時間を要するはずが、課題を出してから1分後には「1000字程度の答案が送られてきて、5分もたつと、片手では数えられない人数の学生から答案が届いた」という。

 昨今、生成AIの扱い方は各所で議論されているが、大学では今回のようなケースが「昨年度までもあったのですが、今年度になって急増しています」と榎本さん。解答が生成AIにより作られたものか否かを疑うきっかけはあり「まず、課題を出されてから提出までのスピードが、通常の作成過程を経たものとは考えにくい水準だという点。専門家でも、それっぽい文章を羅列したとてなかなかできません。それから『問いに対して十分に答えられていない程度の無難な話を、同じ抽象度で繰り返し述べがち』というのも特徴です。また、例えば、『論理学』であるのに『倫理学』の話になっているなど、本来の授業内容とまったく異なる内容に変わってしまっているのも、生成AIの可能性を疑うきっかけになります」という。

 ただ、これらはあくまでも生成AIによるものだという可能性に過ぎず「基本的には『疑わしきは罰せず』のスタンスですし、断言できない以上は『疑わしいから減点または却下』にはできない」と、榎本さんは頭を悩ませる。

 さらに、学生間での影響も。「生成AIに丸投げしたレポートなどで点数を取った学生を見て、まじめに取り組んでいる学生のモチベーションが下がる」というケースもあり、榎本さんは「教壇に立つ身からすると、あらかじめ示した評価基準に沿った提出物で採点するしかありません。しかし、そろそろ真剣に学生のモチベーションをいかにマネジメントするかも考えなければならない。生成AIを意識しすぎて難しい問題を作ると、まじめに取り組む学生にとっても解きづらい悪問になりかねませんし、学生が『自力で解いてみせる』と前向きになってくれる教育の仕方を、我々も考えなければならないと思っています」と、近い将来をみつめる。

 発端となった投稿では「不愉快」と強い表現もあったが、榎本さんはその言葉を発信してしまったことで「新たな『マナー』を作り出してしまったのではないかと反省しています。学生たちの間で『どうせ生成AIに丸投げすればいいし、同じ内容でも時間を置いてから提出した方が教員を不愉快にさせずベターだ』という、無駄に空気を読む風潮が生まれないかと心配もしています」と続ける。

 刻一刻と進化を続ける生成AIはもはやあらゆる日常に浸透しており、おそらく切り離すのは不可能だ。人はいかに生成AIと向き合うべきか。大学で起きた一部始終は、新たな社会課題を浮き彫りにした。

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