【ONE】武尊、音声トラブルを“神演出”に 勝利マイク切れても生声で挨拶…轟音のアリーナが静寂
元K-1・3階級王者の武尊(34=team VASILEUS)は29日、格闘技イベント「ONE SAMURAI 1」(東京・有明アリーナ)で現役最終戦を行った。フライ級暫定王座をかけて、昨年1R・KO負けを喫したロッタン・ジットムアンノン(タイ)から計4度のダウンを奪い、5R・TKO勝ちで劇的なフィナーレを飾った。試合直後、最後のマイクアピールでは突然音声が切れるまさかの音響トラブルに見舞われたが、それが感動の光景を生み出した。

劇的勝利後に異様な光景
元K-1・3階級王者の武尊(34=team VASILEUS)は29日、格闘技イベント「ONE SAMURAI 1」(東京・有明アリーナ)で現役最終戦を行った。フライ級暫定王座をかけて、昨年1R・KO負けを喫したロッタン・ジットムアンノン(タイ)から計4度のダウンを奪い、5R・TKO勝ちで劇的なフィナーレを飾った。試合直後、最後のマイクアピールでは突然音声が切れるまさかの音響トラブルに見舞われたが、それが感動の光景を生み出した。
打ち合い上等の武尊だが、この日の試合運びは慎重だった。しっかりと顔の前にガードを固めて、カウンターのフックを放つ。ローキックやミドルキックなども繰り出し、パンチを散らした。
2Rに2度のダウンを奪ったシーンでは会場のファンは大盛り上がり。花道脇にはその場で飛び跳ねる者もおり、文字通り耳が壊れそうになるほどの地鳴りのような歓声が上がっていた。
4Rには、普段の“笑いながら打ち合う”武尊が見えた。昨年KOされたロッタンのパンチをあえて顔面に被弾。ハラハラドキドキさせる展開になったが、無事に乗り越えた。
そして最終5R。表情を変えずにどんどん圧をかけてくるロッタンに対し、武尊は吠えて応戦。最後はパンチのラッシュでロッタンを沈めた。
勝利の瞬間、武尊はリングに突っ伏し、絶叫し、涙を流した。そしてコーナーに駆け上がり、最後のムーンサルトを決めると、会場の熱狂は最高潮に達した。
まさにお祭り状態で、隣の人の声も聞こえなくなるほどの轟音に包まれるなか、武尊が最後のマイクアピールに入った。
「ホッとしました。このベルトとることだけ考えて、数年間毎日やってきた。いろんなケガがあったり、遠回りしましたけど、最後の最後に獲れて本当に感謝。引退する僕にこの試合を組んでくれたチャトリに感謝します。僕が引退しても、この格闘技の熱はこれからのファイターにも力になる。どこの団体がすごいとかじゃない。格闘技がすごいんですよ」

熱いメッセージを伝え、「最後にひと言いいですか?」と口にした時だった。武尊のマイクの音声が突然切れた。午後10時以降は有明アリーナの音響が使えないというルールのためだった。
それでも武尊はリングを下りなかった。何か生の声でファンに訴えている。すると、直前まで割れんばかりの歓声を送っていた会場に異変が起きた。段々と声援が小さくなり、なかにはファン同士で「静かに!」と呼びかける者も現れた。
あれだけ盛り上がっていたアリーナが、静寂に包まれた。全員がリングの中央で叫ぶ武尊の“肉声”に耳を傾けている。激闘後、しかも引退マッチの劇的勝利直後とはとても思えない、異様で、神聖ささえ感じてしまう光景だった。
「元々格闘技の才能なくて、運動神経もよくないし、そんな僕でも世界チャンピオンになれました。夢持ってる人、諦めないで。もっと強い人、もっとうまい人たくさんいるけど、こんな僕に格闘技界引っ張らせてくれてありがとうございます! ここでストップしちゃだめなんですよ」
静まり返った空間に、かすれた生声だけが響き渡った。
「次の引っ張ってくれる選手が出てくるまで、みんなで盛り上げてください。今日まで格闘家として、リングに立たせてくれて、戦わせてくれて、今日までこれました。本当にありがとうございました。今日、僕はこれでリングを降ります。このベルトは今日、みんなにプレゼントさせてください!」
不測のトラブルすら、会場中を巻き込んだ“神演出”に変えてしまった。十数年にわたり日本の格闘技界を最前線で引っ張り続け、パニック障害やうつ病にも苦しんだ武尊の引退マッチは、あまりにも出来過ぎていた。
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