東大王・河野ゆかりが理三に現役合格した勉強法 「地頭は決定的な要因にならない」と語るワケ
東京大医学部医学科卒、医師免許取得。現在はスイスのジュネーブ大大学院に在籍しながら、東大・松尾研のAIオンライン講座で優秀修了生に選ばれ、国際機関でのプロジェクトにも参画……。TBS系『東大王』などでも圧倒的な知力を見せたセント・フォース所属の河野ゆかり(25)が、今月15日に著書『東大医学部卒・河野ゆかりの「仕組み化」勉強法 意志力に頼らない学習自走化メソッド』(KADOKAWA刊)を上梓した。同書には、早くから最高峰の東大理科三類(医学部)を目指すも、根を詰めずにバッファ(ゆとり)を大事にした勉強法が記されている。それを具体的に知りたくなり、スイス・ジュネーブにいる本人に話を聞いた。

小学生の時は優等生にあらず
東京大医学部医学科卒、医師免許取得。現在はスイスのジュネーブ大大学院に在籍しながら、東大・松尾研のAIオンライン講座で優秀修了生に選ばれ、国際機関でのプロジェクトにも参画……。TBS系『東大王』などでも圧倒的な知力を見せたセント・フォース所属の河野ゆかり(25)が、今月15日に著書『東大医学部卒・河野ゆかりの「仕組み化」勉強法 意志力に頼らない学習自走化メソッド』(KADOKAWA刊)を上梓した。同書には、早くから最高峰の東大理科三類(医学部)を目指すも、根を詰めずにバッファ(ゆとり)を大事にした勉強法が記されている。それを具体的に知りたくなり、スイス・ジュネーブにいる本人に話を聞いた。(取材・文=柳田通斉)
リモート取材開始は、ジュネーブの早朝だった。多忙な中で時間を割いた河野は、意外なことから口にした。
「私は小学生の時、勉強する習慣が全くありませんでした。集中力もありませんでしたし、成績もいい方ではありませんでした」
小学、中学、高校の一貫校で過ごした河野が、自身の勉強法を考え始めたのは中学時代からだという。
「勉強をすること自体よりも『環境とシステムの方に目を向けるべき』と思い、一般のメソッド本を買って読みました。それが使える時もあれば、合わない時もあったので、自分なりにカスタマイズして今に至りました。同じ時間かけても全然定着の仕方が違うことも分かってきました」
ここで多くの人が思うことは、「勉強ができる=地頭が良い」。DNAに恵まれていれば、少ない勉強時間でも覚えが速いだろうということだ。だが、河野は言った。
「それは否定しませんが、私自身が塾などでいろんな受験生を見ていると、地頭はそこまで成績を上げる決定的な要因になっていない。そう感じています」
さらに言うと、「気合」と「根性」があっても、大学受験は乗り切れない。そのマインドは同書にも記してある。
「モチベーションは、天気みたいなものです。自分の意志とは無関係に追い風の日もあれば雨の日もあります。ダウンは自分の力ではどうにもならないという事実を受け入れましょう」
行き着いたのは「勉強の9割は、『ペンを握る前』にかかっている」の境地。それは長期、中期、短期で目標を立て、誘惑に負けない環境作りをし、勉強時間も敢えて制限することだった。河野は中3で渡辺謙主演の映画『明日の記憶』を鑑賞。「難病研究を通じて世界の苦しむ患者たちを救いたい」と思い、医師を志した。高校入学後には、東大を訪問。建物の歴史ある佇まいや通学路の雰囲気を感じ取った上で、学園祭にも足を運び、「ここに通いたい」と決意したという。そして、高1の段階で立てた目標は以下だった。
・長期目標:東大理科三類に合格者平均点以上で合格する
・中間目標:塾内模試で全科目3位以内、東大の冠模試(駿台・河合塾)の理三部門でA判定、成績優秀者一覧に名前を載せる
・短期目標:1か月後までに数学の○○の単元を仕上げる。その範囲の模試の過去問で応用レベルまで全て正解できるようにする(教科ごとに)

朝の支度時は英語のリスニング
それらを達成していくために、「今日はやる気がなかったな」と思う日でも、自動的に手が動いている状態を作ったという。つまり、「自走」の状態。電車に乗ったら単語帳を手に取り、朝の支度時は英語のリスニングなどだ。習慣化するまでは、スケジュール帳に「やるべきこと」を記述。勉強法はトライ&エラーを繰り返しながら、自分に適したものを見つけていく。その中でも、河野は全科目で「間違い直しノート」を作り、それらを宝物にしていたという。
「模試や演習問題で間違えたところには、自分の弱点や理解が足りていない部分が詰まっています。せっかく見つかった課題ですし、使わないものはもったいないです。『東大理三に合格する人は間違えないのでは』と思われますが、そんなことはありません。実際、理三合格者の入試正答率は7割程度ですから」
その上での時間の有効活用だ。「東大理三に現役合格」と聞けば、睡眠時間を削っての猛勉強を想像するが、河野は全く違った。
「私の場合は、高1から休日の勉強時間は1日約7時間程度でした。そして、それを最後まで続けました。午前7時頃から勉強を始め、午後3時には終了。その時間になった瞬間、集中力が切れてしまうんです。なので、夕方以降はテレビを見たりしてプライベートの時間を確保していました。そういうバッファは今も大切にしています。睡眠は夜11時から朝6時で習慣化して、絶対に削りませんでしたね。睡眠不足の状態での学習は、制限のかかったスマホで調べものをしているような状態ですから」
ラストスパートに頼るのではなく、一定のペースで走り続ける。現実に河野は高3の夏でゴール地点を視界にとらえ、東大理三の冠模試(駿台)で「成績優秀者一覧」に名前を連ねている。
「確かに終盤に頑張って伸ばす人も多くいます。私はそういう人たちに負けないように、コツコツと組み立てて高3の夏までに目標レベルまで到達する方を選びました」
そのコツコツ学習は、自宅ではなく、高校の自習室や塾で積み重ねていたという。何かと誘惑の多い自宅では「勉強しない」と決めていたからだ。当時、携帯電話はガラケーを使用していた。

スマホは玄関のポストに放り込み
「母親には『スマホは買わないでほしい』と自分から頼んでいました。誘惑に弱い自覚があったからです。今の時代はスマホを持たないことは難しいですし、持っていればAIを使って先生への質問事項をまとめるなど、有効活用もできます。ただ、スマホを触って『気づいたら1時間』ではダメです。私は大学時代、家でやるべきことができた時はスマホを玄関のポストに放り込んでいました。『SNSを見たい』と思っても、『面倒くさい』という感情になるからです」
食事面では、血糖値を急激に上げない昼食(低GI食品やタンパク質)を心がけていた。おいしすぎる間食も遠ざけていたという。コンディションを維持し、午後の眠気を防ぐための環境整備だ。
「もともとの私はチョコ1袋を10分で食べきってしまうタイプなので、あえて間食は魚肉ソーセージや栄養補助食品にしていました」
そんな河野は、自分自身を「2人」に分けているという。
「長期的な計画を立てて環境を整える『マネジャー』と、現場で淡々と動く『実行役』です。計画通りに進まなかった時、悪いのは実行役ではなく、無理な計画を立てたマネジャーという感じで」
だからこそ、計画は決めた時間までの「3分の2」で終わるように組む。残りの時間は不測の事態のための「バッファ」とし、予定通りに進めば日曜日はご褒美の自由時間にする。集中力が切れたタイミングはマネジャー役が冷静に記録し、「伸びしろのデータが取れた」と前向きに分析・改善していく。机に向かっているだけでは意味がなく、「やったつもり」を防ぐためのルールも徹底していた。
「勉強は『定着する』までが1セット。知識をインプットしただけで満足せず、何も見ずに自力で無意識にアウトプットできる状態まで持っていくことです。勉強時間の7割はアウトプットに割くべきです」
教科別のアプローチでは、数学・物理は公式の丸暗記を避け、「なぜ成り立つのか」の論理的根拠を理解する。英単語は日本語をいくつも並べて覚えるのではなく、核となる「ニュアンス」をつかんでいくことなど、河野が会得した勉強法を詳しく同書に記されている。東大理三の2次試験中、カフェインを摂取し過ぎて3回もトイレに行った話、東大で格段に視野が広がった理由なども明かしている。
現在、河野は研究に加え、複数の高難易度のプロジェクトを並行して進めている。この超多忙な生活を支えているのも、受験期に培った完璧な自己管理能力と「バッファ」を持たせた計画術に他ならない。最後に同書を通じて読者に最も伝えたいことを問うと、真摯(しんし)な眼差しでこう答えた。
「勉強に悩む読者の方に苦しんでいる原因は『自身ではなく仕組みにある』と知ってほしいです。なので、自分を責めたり、DNAのせいにしないでください」
才能や地頭を嘆く必要はない。環境と仕組みの改善に焦点を当てれば、前進できる。河野が伝える学習法は、受験生の強力なコンパスになるに違いない。
□河野ゆかり(こうの・ゆかり) 2000年6月14日、兵庫県生まれ。神戸海星女子学院中・高を卒業後、東京大理科三類に入学。TBS系『東大王』などに出演し、「東大医学部の絶景クイーン」として注目を集める。25年3月、東大医学部医学科を卒業し、医師免許を取得。同時に医療従事者との結婚とスイス移住を発表。現在はスイス・ジュネーブ大大学院に在籍しながら、東大・松尾研のAI講座や国際機関でのプロジェクトにも参画。趣味はワイン、旅行、読書、食べること(特にラーメン)、血液型A。
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