ひと晩で約5Lのリキュールを飲み干す女子プロレスラー、“無情の境地”開眼「人を人だと思わないで殴るようになりました」
「魂の女子プロレス」を掲げるSEAdLINNNG(シードリング)では、年頭から「最強トーナメント」と題し、女子プロレス界の精鋭7人+SEAdLINNNG所属枠1人、計8人によるトーナメント戦を実施してきた。そして今月17日、後楽園ホールで決勝戦が行われる。

「笹村あやめに最強はまだ早い」
「魂の女子プロレス」を掲げるSEAdLINNNG(シードリング)では、年頭から「最強トーナメント」と題し、女子プロレス界の精鋭7人+SEAdLINNNG所属枠1人、計8人によるトーナメント戦を実施してきた。そして今月17日、後楽園ホールで決勝戦が行われる。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
「最強トーナメント」決勝戦は、同団体のシングル王者・松本浩代と笹村あやめの一騎打ちになった。
数ある女子プロレス団体の中にあっても、SEAdLINNNGのシングル王座は「強さの象徴」と呼ばれてきた。そのベルトは常に、“強さ”をその身に宿したレスラーの腰に巻かれてきた。近年で言えば中島安里紗、Sareee、VENY、真琴。現在は松本が第13代王者として君臨しているが、今回の決勝戦ではそのシングル王座も賭けられる。
「このタイトルマッチで負けませんとか、あきらめませんとかの次元を超えていかなければいけないと、自分は思っているので、徹底的にやり通してこのベルトを手に入れたいと思います」
9日に都内で開かれた会見の席上、笹村はそう言った。
笹村はSEAdLINNNGでは過去3度のシングル王座挑戦の経験を持つものの、いずれも敗れてきた。それでも持ち前の打たれ強さを武器に、同団体のタッグ王者には3度君臨。今回は満を持して、4度目のシングル王座挑戦にこぎつけた。
そもそも昨年末の段階で、王者・松本への挑戦を最初にぶち上げたのは笹村だった。その流れを踏まえ、会見上、笹村を迎え撃つ松本はこう言った。
「何度も言ってごめんね。笹村あやめに最強はまだ早い」
何度も、ということは、それだけ強調したいことになるが、そうは言いながらも松本は「この決勝戦になってよかったと思っています。今までこうやって笹村と闘い合うこともなかったし」とも口にし、最後は笹村に向かって「覚悟はあるのか」と詰め寄るように言い残した。
これに対し、キャリア9年目の笹村は、以下のように返している。
「私自身、覚悟を持ってこのトーナメントに参戦して、決勝に進出しました。SEAdLINNNGは苦しいこと、つらいこともあったけど、成長させていただいた団体なので、必ず獲りたい。覚悟はあります」
さらに、「前回(準決勝戦の直後)、松本さんが『笹村は怖くない』とおっしゃっていたので、それはさすがに笹村を知らないだけだと思う。しっかりタイトル戦で伝えられたらなと思います」と意気込んだ。
加えて笹村は「言い出しっぺが強くないと。私が挑戦するタイミングにみんなわらわら上がってきたから、私の気持ちが一番強いはず。決勝はしっかり勝ちたい」と語る。
さて今回、そんな笹村から興味深い言葉を聞いた。最近、一つ“開眼”したことがあるという。
「最近、人を人だと思わないで殴るようになりました」
これを傍で聞いていた、笹村の師匠格に当たる中島安里紗は「怖~い!」とかわいく反応していたが、笹村はすかさず「どの口が……何を言ってるんですか」と突っ込む。
その上で笹村は、その真意を明かした。
「(相手が)人間って思っちゃうと、かわいそうだと思っちゃう。敵は敵なので、ぶちのめす気持ちで殴っています」

「人を殺したいと思ったことはあるか?」
情けは無用。そう言い切る笹村に、中島は思わず「恐ろしく育ちました」とひと言。対して笹村は「強くたくましく育つことができてます」と返した。
このあたり、現役時代に“悪魔”と呼ばれた中島安里紗を源流に持つ笹村の言葉だと思うと、説得力は増すばかりである。
ちなみに笹村は、松本との激闘を想定し、今回の大会翌日はオフにしてあるという。それだけこの一戦に賭けるものの大きさが伝わってくるが、それはそれとして笹村はこのタイトル戦を終えて落ち着いた段階で、大がかりな打ち上げを計画しているとも聞いた。
なにせ笹村はかなりの酒豪としても知られており、過去にはひと晩で「クライナー230本」を飲み干したことがあるという。クライナーといえば、20ミリリットルの小瓶に入ったリキュールで、アルコール度数は15~20度。230本となれば単純計算で4.6リットル。約5キロのリキュールをひと晩で飲み干したことになる。
なかなかの酒豪だが、それがいつの話かと聞くと、「去年か一昨年」と言う。要するに、つい最近の話だった。
一方、王者・松本に目を向けると、「最強トーナメント」では1回戦、準決勝戦ともにタイトルが賭けられた。つまり松本は、すでに今年だけで2度の防衛を果たした上で、決勝戦では笹村を相手に今年3度目の防衛戦に挑むことになる。
これについて松本は、「布石がない中でタイトルマッチをすること」の難しさと醍醐味に触れながら、その心境を次のように話した。
「(相手は)どんな気持ちでこのトーナメントに挑んできているんだろうか。どんな思いで闘っているのか。それに対して自分はどうなのか。そういうことを問いかけながら、しっかりトーナメントに向かい合ってきた」
たしかに、前振りのない相手といきなりタイトル戦を闘うのは過酷なものだと思う。しかしそれを乗り越えた松本はこれまでにない経験値を手に入れたことで、さらに一段、強さの階段を上がった。今まで以上の王者の風格もまた、その身にまとい始めている。
だからこそ、楽しみも広がったのだろう。そう笑みを浮かべる松本の姿には、王者としての厚みがにじんでいた。
そう考えると、松本と笹村の一戦は、試合前から壮絶さが目に浮かぶ。互いの死力を削り合う、凄惨な肉弾戦になるに違いない。
実はSEAdLINNNGでは昨年5月、挑戦者・花穂ノ利を退けて防衛を果たした王者・VENY(当時)が、試合後のマイクで穂ノ利に対し、こんな衝撃的な言葉を残していた。
「お前、人を殺したいと思ったことはあるか? 私は何回もあるよ。レスリング時代を含めて監督、コーチ。それからプロレス界に入って、師匠の浜田文子に対しても本当に憧れたけど、何回も頭の中で殺してきた。それくらい稽古をつけてもらったよ」
その上でVENYはこう続けた。
「だから今、このベルトを巻いてここに立ってるの。分かる?」「周りと同じことをしていても取れないよ。そんなに甘くないよ」
それだけ、「強さの象徴」を引き継ぐということは極上のハードルを伴う。だが同時に、それだけ勝負のしがいがあるベルトだということでもある。
ならば今回のタイトル戦はどうなるのか。こうなったら言葉はもういらない。リング上のすべてを、ただ凝視したい。
(一部敬称略)
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