俳優・のん（31）と“ROCKETMAN”ことふかわりょうがコラボした配信シングル『no worries』が4月9日にリリースされた。俳優業にとどまらず、音楽や創作活動など幅広い表現活動を行うのんに、その多彩な活動を続ける理由を聞いた。（取材・文＝中村彰洋）

　これまで共演経験のない、ふかわからのまさかの誘いで実現した今回の楽曲参加。「本当にびっくりしました」と素直な驚きを口にした。普段、のんが歌っているものとはテイストの異なる楽曲への挑戦となったが、「チャレンジできるのは楽しそう」と前のめりで参加を決断した。

　のんといえば、俳優としてのイメージが定着しているが、芸能活動のスタートはティーン誌のモデルからだった。現在では、精力的にライブを行うなど音楽活動に注力するほか、リボンアートなど創作活動も行っている。

「お芝居と音楽などの創作活動は、頭の全然違う部分を使う感覚があります。表現方法や創作過程は全く違うので、そこを両立していくと体がちぎれそうな気分になりますが、全く別の世界を知ることで柔軟になれました。

　例えば音楽だったら、役者の世界とは関わる人の雰囲気も違っていて、一緒のステージに立ったら『仲間！』みたいな感覚。それって一瞬の出来事なんだけど、演技の現場は一つの作品を撮っていく中でじわじわと信頼関係を作れるか？　という感じです。音楽やアートと向き合うことで、自分の気持ちも考え方もより自由になっていきました。全部の表現が切磋琢磨し合っている感覚が最高に気持ち良いです」

　音楽にアートとたくさんのアウトプットが必要となるが、「何かで心を動かされた時、気持ちが抑えきれない時に表現したくなります」とインスピレーションの源を明かす。「お布団に入って、『眠れない！』みたいな時に生まれるものが多いです」とも笑う。

　2006年のモデルデビューから、まもなく芸歴20周年を迎える。「音楽活動の中で、KAIWA（RE）CORDという自主レーベルを発足していて、その周年は気にはしていましたが、自分の芸歴については気にしていませんでした。今初めてもうすぐ20周年なんだと認識しました」と自分のことながらも驚きの表情を浮かべた。

「私はあまり気にしていないですが、応援してくださるファンの方たちから『おめでとう』と声をかけてもらえたりもするので、『みんな、ありがとう』と感謝の気持ちを伝えていきたいです」

「雑誌に出たい」という思いでスタートした芸能活動。「自分が役者をやっているとは思ってもみませんでした」とデビュー当時には想像もしていなかった未来が待っていた。

　しかし、芝居というものに触れたことで、その思いは大きく変わっていった。「初めて演技というものを目の当たりにした時に、『役者の仕事ってこういうものなんだ。面白そうだな』と演技の面白さを感じ取りました。それからは『私は一生役者をやっていくんだ』と思うようになっていきました」。

　夢や目標については「いつも高く設定しています」と明かす。「役者の仕事でいえば、朝ドラ（NHK『あまちゃん』）で共演した宮本信子さんみたいに演技できるようになりたい、という目標や憧れの俳優さんの演技というのは膨大にあるので、その途方もない数々を思えば達成感を感じることはほとんどないです」と笑みをこぼす。

「夢は遠いところにあるからこそ、どんどん頑張っていけます」。一生を懸けて“途方もない目標”を現実のものへと近づけていく。

□のん　1993年7月13日、兵庫県出身。2006年にティーン誌『ニコラ』のオーディションでグランプリを獲得し、芸能界デビュー。10年に映画『告白』で俳優デビュー。13年にNHK連続テレビ小説『あまちゃん』でヒロインを演じた。22年には初の劇場映画監督作『Ribbon』が公開され、主演映画『さかなのこ』で第46回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。また、17年には音楽レーベル「KAIWA（RE）CORD」を発足。24年には第16回伊丹十三賞を受賞するなど、音楽やアートの世界でも才能を発揮している。