高石あかり、山田尚子監督作『きみの色』でボーカル役 自分の歌に「変と思いながら泣きました」

俳優の高石あかり(21)がアニメーション映画『きみの色』(8月30日公開)で声優初挑戦した。本作は『映画 聲の形』の山田尚子監督による、少年少女3人が音楽によって心を通わせるオリジナル作品。バンドでボーカルを務める作永きみを演じ、劇中では、“きみ”として劇中歌『水金地火木土天アーメン』も披露している。

インタビューに応じた高石あかり【写真:荒川祐史】
インタビューに応じた高石あかり【写真:荒川祐史】

別役でオーディション受けるも最終的にボーカル役に抜てき

 俳優の高石あかり(21)がアニメーション映画『きみの色』(8月30日公開)で声優初挑戦した。本作は『映画 聲の形』の山田尚子監督による、少年少女3人が音楽によって心を通わせるオリジナル作品。バンドでボーカルを務める作永きみを演じ、劇中では、“きみ”として劇中歌『水金地火木土天アーメン』も披露している。(取材・文=平辻哲也)

 高石は殺し屋女子コンビが活躍する『ベイビーわるきゅーれ』で映画初主演し、映画、ドラマに活躍。今も映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』が公開中の売れっ子だ。9月4日からは連続ドラマ化されるテレビ東京系『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』、同24日からは『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』の公開も控えている。

 本作は、人が「色」で見える長崎市内の全寮制高校に通う日暮トツ子(鈴川紗由)が古書店で出会った美しい色を放つ少女・作永きみ(高石)、音楽好きの少年・影平ルイ(木戸大聖)と出会い、バンド「しろねこ堂」を組む物語。

 オーディションは1600人が参加するという狭き門だった。

「元々アニメが好きだったんですが、山田監督の『映画 聲の形』が大好きで、よく好きなシーンを練習していたんです。オーディションは絶対に無理だという気持ちだったんですが、どんどん進んでいって、決まった時は信じられなかったです。うれしくて親にすぐ連絡して、喜びを分かち合いました。オーディションは、トツ子で受けていましたが。アフレコに挑んだら、監督から『きみの声を録音して送ってくれないか』とメッセージをいただいて、きみ役になって、歌も歌うことになりました」

 きみは、トツ子の同級生だったが、突然、退学。同居する祖母に辞めたことを伝えられず、学校に行くふりをして古書店でアルバイトをしている少女。バンドではボーカルとギターを担当する。

「きみは、学校の友達、おばあちゃんから思われている自分と、本当の自分にギャップがあって、苦しんでいる子。去年の自分も、同じような悩みを持っていました。人によって違う“自分”を一緒にしなきゃと思っていたんですけど、どの自分も自分なんだと認めることができてからはすごく楽になれたんです」

 アフレコはトツ子(鈴川)、ルイ(木戸)の3人で行った。ラフな絵の状態で声を入れていった。

「全員初めてだったので、緊張していました。初めて収録したのは出会うシーンだったので、お互い緊張していたのが声に出ていたと思います。監督の演出は、シチュエーションに合わせて、やってくださるんです。3人が暗闇でボソボソと自分の気持ちを話していくシーンでは、部屋も暗くしたり、すごくやりやすい環境を作ってくださったなと思います」

『きみの色』について語った高石あかり【写真:荒川祐史】
『きみの色』について語った高石あかり【写真:荒川祐史】

『きみの色』は「幻のような美しさのある作品」

 俳優としての活躍は目覚ましい高石だが、声だけの演技はどうだったのか。

「台本のページをめくる音、呼吸も録れてしまうので、できるだけ動かないようにと意識しました。普段だったら、感情があってその後に言葉が出てくるんですけど、声優は決められた秒数の中で、セリフを当てはめて、感情もそのキャラクターに合わせていく。そこはすごく難しかったです」

 アフレコでは常に「これで合っているのか」と自分に問いかけながら演技をしてきた。

「本当に手探りでしたが、監督のOKを信じました。ラストシーンでは、きみが感情を爆発させるのですが、監督からは『全身全霊で自分の出せるすべてを出して』といった言葉をいただいていたので、そういう気持ちで挑みました。OKはもらえたんですが、モヤモヤしていたので、改めて監督に『大丈夫でしたか?』と聞いたら、『よかったけどね』って。それでも、次の日に『もう一度やりましょう』と言ってくださった。(リテイクでは)演じながら涙があふれてきて、何かつかめた気がしました。もう1回やらせてもらい、本当にありがたかったです。だから、悔いはないです」

 クライマックスのライブシーンでは“きみ”として「水金地火木土天アーメン」などを歌う。

「どうしたら、“きみ”というキャラクターが歌っていると思ってもらえるのかは悩みました。監督からは『“きみ”には湿気がある』という言葉をいただきました。“きみ”には学んだことを100%でやるみたいな部分はあるので、『私は“きみ”だ』と暗示をかけながら、背筋を伸ばして、しっかり歌うことでつかんでいきました。最後の方は“きみ”が入り込んできて、目の前がライブ会場のような感覚があったんです」

 実は涙があふれ出しながらも、歌い、少し音程がブレてしまった瞬間もあった。

「大丈夫かなと思ったのですが、監督は『これでいこう。音に合わせて絵を作っていきます』と言ってくださって、アニメは生もので作られているんだと感じました」

 完成作品はメインキャストの2人と隣り合って鑑賞した。

「声を録っている時も、作品への愛、役への愛がすごいから、こんなにすてきに見えているのかと思ったんですが、途中から自分がやっていたことを忘れるくらい作品に夢中になって見ました。最後は、自分が歌っているのに、そう思えなくて。涙が溢れそうになりました。でも、私が泣いたら、変だよなとか思いながら、最後はこうなんかドキドキしながらでももう無理でしたね。みんなで泣いていました」と振り返る。

『きみの色』は大きな作品になったという。

「幻のような美しさのある作品です。すごい挑戦もいっぱいさせてもらいましたので、思い出しかない。私の周りの人には全員見てほしいと思います。きっと心が揺らぐ瞬間があると思うんです。上海国際映画祭でも金爵賞アニメーション最優秀作品賞を取りましたが、海外にもいくんだ、と不思議な気持ちも味わっています。大切な作品になったので、早くお客さんに届いてほしいです」と劇場公開での反響を楽しみにしている。

□高石あかり 2002年12月19日、宮崎県出身。19年より女優活動を本格化。21年『ベイビーわるきゅーれ』のW主演で映画初主演。その後、2023年には、『わたしの幸せな結婚』(塚原あゆ子監督)、『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(阪元裕吾監督)などでの演技が評価され第15回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。公開待機作に映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』(坂元裕吾監督/9月27日)映画『スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム』(中田秀夫監督/11月1日)映画『私にふさわしいホテル』(堤幸彦監督/12月27日)。身長160センチ、特技は歌、ダンス。

※高石あかりの「高」の正式表記ははしごだか。

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