最終日迎えたスペース・マウンテンは「夢と希望を与え続けた」 リニューアル時の担当者の思いとは
東京ディズニーランド開園当初から親しまれてきた人気アトラクション「スペース・マウンテン」が31日、最終搭乗日を迎えた。2007年4月に現在の姿となった同アトラクションのリニューアルに携わった西尾智憲氏が当時の思い出を明かした。
2007年のリニューアルを担当した西尾智憲氏にインタビュー
東京ディズニーランド開園当初から親しまれてきた人気アトラクション「スペース・マウンテン」が31日、最終搭乗日を迎えた。2007年4月に現在の姿となった同アトラクションのリニューアルに携わった西尾智憲氏が当時の思い出を明かした。(取材・文=猪俣創平)
「スペース・マウンテン」は1983年の東京ディズニーランド開業と同時に登場し、2006年10月から約半年間のリニューアル期間を経て、07年4月に現在の姿に。そして、この日をもって現在の「スペース・マウンテン」はクローズし、トゥモローランドの周辺環境を含めて一新され、27年に開業を予定している。
07年リニューアル当時にアトラクションデザインを担当した西尾氏は、1989年の入社以来、東京ディズニーランドと東京ディズニーシー両パークのさまざまなデザインを担当してきた。なかでも「スペース・マウンテン」には「すごく思い出の詰まっている」と語り、最終搭乗日を迎えて「個人的にはすごく寂しい気持ちもあるんです」と心境を明かす。
この日も猛暑の中、多くのゲストがラストライドに訪れる様子に「これだけの多くの方々に、こんなに暑い日にも関わらず来ていただいて、とても感謝しています。そして、やはり『スペース・マウンテン』というのは、東京ディズニーランド、それから世界のディズニーパークの中でも象徴するアトラクションだなっていうのを、改めて今日、知らしめられたという思いです」と目を細めた。
リニューアル以前は「真っ暗な宇宙の中を疾走する」というシンプルなコンセプトだった。そこで、「よりそのゲストの方に楽しんでいただくためには何をしたらいいかと考えまして、そこでショーエハウスメントという基礎のあるものにして、アトラクションをより魅力あるものに強化するということで開発を進めました」と当時を振り返り、次のように続けた。
「まずはショーストーリーを追加させていただきました。それは、“漆黒の宇宙を疾走する”という当初のコンセプトはそのままに、宇宙の果てにある未知なるエネルギーをスペースコールという宇宙船で収集しに行って帰還し、その未知のエネルギーをもとにスペース・マウンテン全体と、ゲストが乗車するロケットが稼働しているというストーリーになりました。さらに、ストーリーに合わせたデザインを加えています。外観はそれほど変わっていないんですが、内部の乗り場ですとか、宇宙船といったもの、それから宇宙の中で体験する演出の部分は大きく変えました」
リニューアル初日には涙「苦労も吹っ飛ぶぐらい」
なかでも乗車中の演出は細部まで調整を加え、タイミングや見せ方、明るさなどを確認するために、「何十回」と連続して乗車したという。そのため、「苦労したというよりは、体力勝負で、もう“ゲロゲロ”といった具合でした(笑)。そんな笑い話もありますけど、いろいろ苦労しながらも、みんなで作り上げたっていうところが印象に残っていて、いい思い出になっています」と回想する。
また、特に印象に残っているのはリニューアル初日のこと。「一番最初に乗られたゲストの方々が、もう笑いながらとか大きな叫び声とともに拍手をしながら帰ってきたというのがすごく印象的です」と笑みを浮かべ、「苦労も吹っ飛ぶぐらい、もううれしくてうれしくて。ちょっと建物の影に隠れてウルっとしたことは覚えております」とうれし涙を流したと明かす。
そんな現在の「スペース・マウンテン」も、ついにクローズの日を迎えた。2027年には、現在のジェットコースタータイプの屋内型アトラクションという形態はそのままに、新たな性能や特殊効果が加わることで、今まで以上にスリルと興奮に満ちた宇宙旅行へとゲストをいざなう。
西尾氏は改めて、これまで乗車したゲストに感謝するとともに「夢と希望というものを与え続けてこれたんじゃないかなと思っております。体験時間というのは、ほんの数分間で短いですけれど、今日の『スペース・マウンテン』がなくなっても、その思い出というのは今後もゲストの心に残っていくんじゃないかと思っております」と力強く語った。
その上で、「すでに次なる歩みということで、新しい、進化した『スペース・マウンテン』が開発されていますので、それがゲストの方にどんな感動や思い出になるのかなと私自身もすごく楽しみで、待ち遠しいという思いです」と次なる未来に思いをはせた。
猪俣創平