果てしないデスマッチの進化 ラッシャー木村、大仁田厚、伊東竜二を経てたどり着いたもの

プロレス界も観客を入れての大会が徐々に始まった。ソーシャルディスタンスを取っての有観客試合だが、ファンの応援がレスラーをよりイキイキとさせることは間違いない。

邪道・大仁田厚
邪道・大仁田厚

生きるためのデスマッチ

 プロレス界も観客を入れての大会が徐々に始まった。ソーシャルディスタンスを取っての有観客試合だが、ファンの応援がレスラーをよりイキイキとさせることは間違いない。

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 中でも大日本プロレスのデスマッチファイターたちは、ファンの後押しという「プロレスの力」を再認識している。

「お客さんがいないと、100倍痛い」とぼやいていたアブドーラ・小林は「やはり、ファンのみんなの力はスゴイ」と血だらけの顔をほころばせる。

 まだまだデスマッチ全開とはいかないが、徐々に観客数も増やしていくはずで、工夫をこらしたデスマッチアイテムもどんどん登場する。

 大日本は元より、日本マット界のデスマッチは、日々、変化を遂げている。有刺鉄線、画鋲、蛍光灯、カミソリ、空き缶、フォーク、ハンマー、梯子、コンクリートブロックなど、素材となる凶器を集め、束にし、大型化する。凶器は形を変え、新たな脅威を生み出す。デスマッチアイテムの進化は果てしない。今やデスマッチのワンダーランドである。

 デスマッチファイターはそれぞれ、得意とするデスマッチアイテムを考案しているが、大日本では、伊東竜二や菊田一美を中心に、作成されてきた。菊田は「とんでもないアイデアが徐々に、具体化していく様子は楽しい」とニンマリ。

 思えば、デスマッチも当初は「金網」ひとつだった。1970年代、国際プロレスで「金網の鬼」と恐れられたラッシャー木村さんは、金網に額をぶつけ、連日のように流血していた。

 木村さんの額はギザギザだった。柔道選手などに多い「耳が沸く」のではなく、まさに「額が沸く」。アブドーラ・ザ・ブッチャーの額もすごかったが、木村の額も沸いていた。「沸騰していた」という方が良いかも知れない。

 リングを降りれば優しく人の好い木村さんは、額を突き出し「コッペパンみたいでしょ」と、ちびっこファンに語り掛けていた。笑いを取るつもりだったが、ドン引きされ泣かれたこともある。

 愛犬家で、熊五郎と大五郎という犬を飼っていたが「血が滲んだら心配そうな顔してペロペロなめてくれるんだよ」と、嬉しそうに笑っていた。

 当時は東京12チャンネル(現テレビ東京)が、国際プロレスを中継していたが、あまりの凄惨さにそのまま中継することはできなかった。選手の悲鳴が流れる中、度々「このシーンは凄惨なため、放送を自粛します」というテロップが流れ、客席や水面を優雅に泳ぐ白鳥の姿を映し出していた。

 現在では、7月15日に復帰戦を控える沼澤邪鬼の額の沸き具合が、他を引き離している。止血してもくしゃみをすると血が滲んで来る。試合後、酒を飲むと血のめぐりが良くなるのか、額から血がしたたり落ちてくる。「あ! いけね」とハンカチで押さえるが本人は意に介さない。カードを額に挟み「ウルトラマン」もできる。額から血を滲ませニコニコしている男と酒席をともにするのは、貴重な経験だ。

 デスマッチファイターの多くは「生きるためのデスマッチ」と口を揃える。死ぬためのデスマッチではない。生きるためのデスマッチだ。新型コロナウイルスが蔓延する今のご時世。生死について考えてしまうことも多々ある。この社会情勢の中、平常時よりもデスマッチが心に染みる。

 半世紀前にスタートしたデスマッチは、FMWを旗揚げした大仁田厚が電流爆破マッチで、一世を風靡し、現在では大日本やフリーダムズなどで人気を呼んでいる。

 デスマッチBJの伊東、小林に加え葛西純、竹田誠志など、多くのデスマッチスターも誕生している。日々、危険度が増加し、デスマッチアイテムや試合方法もバリエーションが増え続けている。

 いつの時代も、背筋がゾクゾクしてくるデスマッチ。これまたプロレスの魅力だ。

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