コロナで7億円損失、苦境のRIZIN 覚悟の資金調達に隠された真の目的とは

3大会中止で7億円が飛んだ

「コロナの影響で、なかなか大会の開催ができず、RIZINはもちろん、格闘技界全体が大変な状況になっています。今回のクラウドファンディングは、危機に陥っているRIZINを救うためのものです。ぜひ、みなさんのお力をお借りできればと思います。僕自身はリングで戦うことしかできませんが、みなさんからお寄せいただいた思いを、必ず最高の試合を魅せることでお返しします」

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 続いて兄の未来は、以下のようなコメントを寄せている。

「榊原社長ともいろいろ話をしました。このクラウドファンディングに自分なりに協力できればと思っています。8月は試合をしませんが、その分、大会やRIZINを盛り上げるためにサポートをして行きます。僕はこのRIZINのリングで、自分自身の夢の一つをつかむことができました。僕に続く誰かが、僕と同じように夢をつかめるようにすることが、夢をつかんだものの責任だと思っています。みなさんのお力添えを、どうかよろしくお願いいたします」

 ここまで書いて気になるのは「8月は試合をしません」という未来のコメントだが、怪我のためなのか、もしくは他に理由が存在するのか。その点に関しても9日の会見の際に榊原CEOが明らかにすると思われるが、主力の1人である未来の試合が行われないのはやはり残念。

 というのは今やチャンネル登録数100万人を越えたYouTuberとして、日本格闘技界の最注目人物に成り上がった未来がリング上でパフォーマンスを披露しないのである。その分、別のサポートに尽力するとのことだが、これは考えようによっては未来の使い方や活動の仕方が、別の意味で危機的状況にあるRIZINの救世主として成立する可能性を示唆していると考えるべきか。

 ともあれ、前述通り今回の会見は、RIZINにとって前回4月2日のウェブ会見以来、実に3か月以上ぶりになる。その間、紆余曲折があっての今に至ることはすでに述べたが、実は今から3週間ほど前に、今回の会見につながるコメントを榊原CEOは自身のツイッターアカウントで発している。

「国の要請に従い3つの大会を中止し7億円の売上が飛んだ」

 榊原CEOがこの衝撃的な数字を含んだツイートを発したのは6月17日。その後、瞬く間に拡散されたこのツイートは今現在、2600件以上のリツイートと8000件弱のいいねが付き、550件余りのコメントが寄せられている。

 もちろん、先にも挙げた朝倉兄弟をはじめ、堀口恭司や那須川天心、矢地祐介や扇久保博正、浅倉カンナや浜崎朱加、渡辺華奈といったRIZINファイターもコメント付きで返信をし、総じて協力を惜しまない姿勢を示していた。

 それを受けて翌日には「昨夜は選手達からの反応に感動しました。また1000人以上の方々から、温かい言葉やアドバイスをいただき、昨夜はなかなか眠れませんでした。未来や海、天心、格闘技を愛するRIZINや他団体の選手達、格闘技ファンの皆様、本当にありがとう。ここで終わらせる訳にはいけない。絶対に。」とツイート。これには実に1100件を越えるリツイートと6500件に達するようないいねが付いた。

 そうした様々な人々の思いを榊原CEOなりに感じ取った結果、今回のウェブ会見で榊原CEOは「生きるか死ぬか、死ぬんだったら本当に前に倒れて死にたいと常に思っているし、毎日毎日RIZINのために、本当に全力で生きていられる日々を、僕自身はツラいけど、幸せだと思っています」とまで発言。自身の人生をあと20年と想定し、「お涙頂戴ではなく、未来をファンと一緒につくるチャレンジに協力していただきたい」と締めくくった。

 なお、ここまでに記してきたような内容が、RIZINが立ち上げたクラファン特設サイトにも榊原CEOの長文でつづられているわけだが、実は榊原CEOの長文で思い出すのは、PRIDE最後の大会となった「PRIDE34」(07年4月8日、さいたまスーパーアリーナ)の公式パンフレットにあった特別機構になる。

 記憶が確かならこの際、榊原CEOは「最後のご挨拶(ラストメッセージ)」と題した長文を掲載。今回同様、PRIDEを売却せざるを得なかった、切なる思いをつづっている。ブラジルに在住する選手にそれを直接伝えに現地に赴き、ヒカルド・アローナと山登りをしたエピソードが書かれていたように思う。

 また、このパンフレットには人生初となる辞世の句を詠んでおり、非常に稀有な話としてこちらの脳裏に刻まれたことを思い出したが、改めてその句を紹介すると、以下のようなもの。

「君の夢 絶やすことなく一人発つ 桜と共に 散れる喜び」
 
 ここまで書いたところで、熱心なファンならご存知の通り、今回の榊原CEOの会見が実施されるとわかった段階で「ビッグサプライズ」が期待され、中には「解散か!」といった声もネット上には多数上がっていたことにも触れてみたい。

 結果としてまったくそういった発表にはならず、その点で言うなら拍子抜けしたファンも少なからずいたに違いないが、裏を返せばあっと驚くような発表がなかった時点で、今まで同様のRIZINを開催するための方向性を改めて示せたのだから、その事実こそが正解だった気がする。

 なお、今後の方向性を改めて示したという点を少しだけ掘り下げると、榊原CEOは会見上、「世間を振り向かせてナンボ」と言いつつ、「戦後、第二次世界大戦と言っても今の20代には届かないかもしれないけど」と前置きしながら、意外な人物の名前を挙げている。

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