年度替わりで新生活がどんどんと本格化し、働き方や職場について見つめ直す機会も多いだろう。こうした中で、「退職代行」を通じて従業員が辞めることを聞いて、「ショックだった」。コンビニの女性店長がモヤモヤする思いを吐露したSNS投稿が話題を集めた。職場環境や人間関係に悩み、退職という大事な決断を直接言えないほどに苦しい思いを抱えていたのか…。“代理人”に任せることに理解を示す一方で、「辞めたければ自分の口から自分の言葉で話をするべき」とも。複雑な胸中を聞いた。

「去り方って大事なんだよな…」。これが、店長歴5年の女性店長の何とも言い難い心境だ。

　今回、ミドルエイジの女性従業員が退職希望であることについて、コンビニのオーナーに退職代行業者から電話があったという。その従業員は他店舗が主な勤務先で、女性店長の店舗には週1回勤務。過去に一度辞めて戻ってきたという背景があった。代行業者を通して、「人間関係が原因」ということを伝えてきたという。代行業者から連絡があった日、従業員は出勤してきたとのことだ。

「まずそんな代行業があるのを初めて知ったし、直接言えないほど悩んでいたことがショックだった。やっぱり本人も、人間関係が原因だと言っていると代行が伝えてきた。潮時かなと思った」。女性店長は自身のXのアカウント、ろーみ店長（@lowmi_diet）に実情を記した。

　店舗関係者が皆驚いた当日。従業員が出勤してきた様子について、「いつも通りに話しケロッとしている。オーナーが、代行から連絡があったことと、退職の承諾を伝えるとバツが悪そうだった」と振り返る。そして、「代行を利用すること自体が悪いとは思わないけど、（その従業員の場合は）自分がやってきたことの始末を代行に頼ったことで、利用料1万5千円と信頼関係を失ってしまった」との思いをつづった。

　女性店長は40代。シングルマザーで3人の子育てをしながら、仕事と育児に励んでいる。

　あらためて女性店長に今回の出来事の受け止めについて聞いた。

「最初はショックを受けました。話したくない、顔も見たくないということなのかなと、よっぽどだなと。でも、従業員は出勤しました。責任感があったのかもしれませんが、退職を切り出すのもストレスがありますから、それで退職代行を利用したのだと思います」。

　ただ、少し違和感を覚えたといい、「その従業員のようにカジュアルに利用する人も多いのかな？　と驚きました。逃げて代行に頼るというのは、周囲から『どうぞ辞めてください』と思われてしまい、自分の評価を下げるだけだと考えます。ただ、代行を使用せざるを得ない状況があることも確かだと思います」と話す。

　社会人として生きるうえで、辞め方は大事だ。ライフイベントや経済状況の変化によって、一度働いた実績のある職場への復職を考えることがあるかもしれない。のちのちに影響することもある。

「『立つ鳥跡を濁さず』ということわざがありますが、どんな場面でも、今後の自分のために評価を下げるようなことはするべきじゃないと思います。その時は縁を切るつもりでいても、どこでどう縁がつながるか分かりませんので。敵は少ない方が生きやすいと思ってます」と強調した。

　退職代行サービスを巡っては、入社したばかりの新入社員が利用するケースが報じられるなど、議論を呼び起こしている。

　実際に今回の投稿にも「退職代行実際に使う人いるんですね　あるのは知ってましたが…」「去り方にその方の人となりがでますよね…」「ファックスだけとかメールだけとか、何も言わないで辞める人もいますよ。わたしは電話かな」「世の中には退職の意識を伝えただけで小一時間罵声を浴びせたり人員が用意できない事を理由に退職させない会社もあるので退職代行も必要な仕事だと想います」といった反響の声が寄せられている。

　女性店長は一定の理解を示したうえで、一般論として冷静な意見を聞かせてくれた。

「どうしても頼らなきゃいけない人もいるんだと思います。自分を守るために利用することは、悪いことだとは思いません。ストレスを抑えて退職できることは、メリットだと思います。ただ、使い方によってはデメリットとして一気に信用を失くすと思います。『自分の責任を取れない人』と見られて、自分が縁を切ったつもりでも相手からも縁を切られるのではないでしょうか。基本的には、辞めたければ自分の口から自分の言葉で対面で話をするべきだと思います。ちなみに以前私はそれで、給料の不満を上司にぶつけたら一気に月給8万円アップして、辞めるのを辞めました（笑）」。自身の体験談をまじえて、大事な話は面と向かって伝えることの意義を訴えた。

　人間関係の構築は、職場で重要な要素の1つだ。より前向きに、楽しく長く働くためにどんなことが必要なのか。

　女性店長は性格診断のツールを参考にすることで「人間関係の攻略しやすくなりました」と、人の上に立つ管理職として日々工夫を重ねているという。そのうえで、「まずは、周りの人を肯定することだと思います。考え方や仕事のやり方など、自分と違うのは当たり前で『そういう考え方もあるんだ』と一度受け入れることで、相手に寄り添えるのではないでしょうか。嫌な人も、これで乗り越えてきました（笑）」と話している。