ナイツ塙、「M-1」審査員を務めるワケ 大会への恩義と「僕だからこそできる自負がある」

ドキュメンタリー映画『漫才協会 THE MOVIE~舞台の上の懲りない面々~』(3月1日公開)で監督業に初挑戦したお笑いコンビ・ナイツの塙宣之(45)。テレビ、ラジオ、舞台と多忙な日々を過ごしているが、週に約20本、連ドラ鑑賞が欠かせない、というから驚きだ。

インタビューに応じたナイツの塙宣之【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じたナイツの塙宣之【写真:ENCOUNT編集部】

『漫才協会 THE MOVIE 』で映画監督に挑戦「面白かったです」

 ドキュメンタリー映画『漫才協会 THE MOVIE~舞台の上の懲りない面々~』(3月1日公開)で監督業に初挑戦したお笑いコンビ・ナイツの塙宣之(45)。テレビ、ラジオ、舞台と多忙な日々を過ごしているが、週に約20本、連ドラ鑑賞が欠かせない、というから驚きだ。(取材・文=平辻哲也)

 地上波の連続ドラマはほぼ見ているという塙。きっかけは2018年、内藤剛志主演のテレビ朝日系『警視庁・捜査一課長』に俳優として出演し、ネットで演技が下手だと叩かれたこと。10代からあまりドラマは見てこなかったそうで、たくさんドラマを見たら、演技もうまくなるんじゃないかと思ったのだ。

 多忙なスケジュールでドラマ鑑賞をどうこなしているのか。

「1日4本くらい見ています。ドラマは正味1本45分ぐらい。だから、毎日3時間ぐらい見ていますね。朝は早起きしてラジオ(『ナイツ ザ・ラジオショー』月~木曜午後1時)に行くまで見られる。それで、家に帰ってきて、お風呂で。後は移動中。週末、特に日曜日はだいたい地方営業が多く、移動時間も長いので、TVerや配信で見ていますね」

 演技のために見てきたドラマだが、映画監督にも活かせた部分はあるという。『漫才協会 THE MOVIE 』は22年11月、電車事故で右腕を切断しながらも、舞台復帰に向けてピン芸人としてリハビリに励む大空遊平(72)、「M-1グランプリ」初戦突破に手応えを感じつつ、相方・えざお(23年9月死去、40歳)の突然の病死に直面したカントリーズ・福田純一(41)ら芸人たちの悲喜こもごもを描く。

「週に20本くらいドラマ鑑賞をこなしてきたから、他の人よりはわかるかもしれないです。この時の音は余計だなとか、あんまり音で笑わせるのはイヤだなとか、ドラマを見ていると、思うんです。いいドラマだと感じるものほど、下手な演出をしていない。映画の中では、音を消してもらったり、息遣いを聞かせるようにした部分もあります。ナレーションは製作の方のつてで、小泉今日子さんにお願いしたのですが、作品の深みが増しました。小泉さんは舞台を大切にされる方で、温かみが出たと思います」

 漫才作り、映画監督、作家など活動の領域を広げているが、18年からは「M-1グランプリ」の審査員を務めている。

「めちゃくちゃ視聴率のいい番組に出られるのはモチベーションの一つです。それに、『M-1』で大きくしてもらったという恩義もありますし、めちゃくちゃ漫才を作ってきた僕だからこそ、審査できるという自負もあります。正直、あまりネタを作っていない人が審査するのはどうかなと思ってしまいますから。例えば、芸人がグルメレポートで『うまい』としか言えないのは料理を作ってないからですよね。そんな思いが2割くらい。後は、何と言っても、漫才協会の大宣伝になるというのは大きいです」

 その漫才協会を宣伝するために、映画監督を務めたことは、どんな経験になったのか。

「僕は、ゼロから何かを作ることはできない人だと思っています。だから、自分で脚本を作って、メガホンを取れ、と言われても無理。ただ、誰かが持ってきたものに、アイデアを加えてやるのは楽しいと思いました。この映画も、プロの方が撮影して、形にしてくれたことを組み合わせていく作業だったので、面白かったです」

 塙は現在、都内で妻の両親と二世帯住宅で生活中。隠居生活を送っている義父との生活をユーモラスにつづったエッセー『静夫さんと僕』(徳間書店)も好評だ。

「ドラマ化できたらいいなと思っています。『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』(NHK)とか、『きのう何食べた?』(テレビ東京)みたいなほんわか系のドラマになったら、面白いなと思っているんです」。ドラマ好きなだけに、その実現を楽しみしている。

□塙宣之(はなわ・のぶゆき) 2000年に土屋とナイツを結成。03年漫才協団(現・漫才協会)・漫才新人大賞受賞。08年にお笑いホープ大賞THE FINAL優勝、NHK新人演芸大賞を受賞。『M-1グランプリ』では08年、09年、10年の3年連続で決勝進出。11年に『THE MANZAI』準優勝。07年6月には史上最年少で漫才協会の理事に就任し、18年からは『M-1グランプリ』の審査員を務める。19年には自身が考える漫才論を書いた書籍『言い訳:関東芸人はなぜM‐1で勝てないのか』出版。落語芸術協会、三遊亭小遊三一門として寄席でも活躍中。平成25年度文化庁芸術祭 大衆芸能部門 優秀賞受賞。第39回浅草芸能大賞 大賞受賞(22年度)。文筆活動やドラマ・舞台でも活躍中。新作の『劇場舎人』(KADOKAWA)も3月1日より発売。

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