田辺誠一、惚れ直した役者・吉川晃司を語る「愛され兄貴」「重心が取れていて美しい」

田辺誠一は本作を「清涼感をもたらすようなおどろおどろしさ」と表現する【写真:舛元清香】
田辺誠一は本作を「清涼感をもたらすようなおどろおどろしさ」と表現する【写真:舛元清香】

「結構おどろおどろしい感じなんです」

――原作のミステリアスで怪奇な世界観は今回、どのような映像に生まれ変わりますか。

「結構おどろおどろしい感じなんです。映像の色感は青っぽい感じで、カメラもやけに斜めに設置しています。普段、ドラマを観ていると大体は明るいライティングの作品が多いと思うのですけど、『なんだこれ?』と言ってもらえるような不思議な感覚を出せていると思います。清涼感をもたらすようなおどろおどろしさ。そこに京都の歴史ある世界観が織り交ざる。それに由利が乗っている車が、ものすごく古いフォードで、それがかっこよくて」

――独特な世界観を醸し出すアイテムですね。

「撮影中に1度、スパークプラグが壊れまして、京都にはパーツがないということになって、その日の撮影ができなかったこともありました。それで、自動車屋さんが自分でプラグを作ったんですよ。あの古い車もすごく絵になるんです」

――今回、吉川さんは地上波の連続ドラマに初主演です。役作りにおいて、田辺さんと話を重ねながら撮影したと聞きました。

「吉川さんに志尊君、監督をまじえた4人で話をする機会が多かったです。原作は新聞小説だったようでして、話の作り方が映像化する時のリズムとは違うんですよね。脚本化をする作業が大変だったと思います。その練りに練った脚本を、僕ら生身の人間が現代に演じるにあたって、もっとこうしたらさらに面白い、もっと視聴者の興味をかき立てられるストーリーにできるんじゃないか、と練っていました」

――座長を務める吉川さんの存在感、演技への姿勢は。

「吉川さんは僕らの世代からすれば、『永遠のかっこいい兄貴』ですから。その吉川さんが主役でドラマをやる。座長として良い評価も悪い評価も一身に受けると思うんですよね。だからこそ、僕ら役者もスタッフもそうですが、兄貴のためになんとしてでも少しでも面白いものを作らなきゃいけない、という思いでした。吉川さんはかっこいいんですけど、お茶目で冗談ばかり言って、愛され兄貴なんです。みんなの力が結集した現場でした」

――現場で話し合って高め合い、新しい世界観を作り上げたということですね。

「座長がどうしたいのか、どういうドラマにしたいのか。僕ら共演者はそこを見ているのです。最初の頃にみんなで話し合っていた時に、吉川さんが『これだと嘘になっちゃう。そうすると俺、顔に出ちゃうから』という趣旨のことをおっしゃったことがありました。その時に、ハッとさせられました。役者には、設定や行動、セリフなりに無理があると思う部分はあったりするのですが、みんなでものづくりに取り組んで現場が進む中で、どこか自分をまひさせたり、ごまかす部分があるのです。自分のポリシーが揺るがない程度に、どこか迎合するところもあったりします。吉川さんは役者歴も僕らより長いですけど、ミュージシャンとして自分が感じたことを今の時代に対して発信してこられて、自分の感性を一番大事になさっていて、そこがブレると発信できなくなってしまうと思うんですよね。だから、そうおっしゃったと思うんです。そうあるべきだと思っています」

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