内定していたタイトル戦直前に現役王者が突然の引退申し出 タッグパートナーは別王者に挑戦を直訴…大混乱の裏側は

またもや令和女子プロレスの課題が露呈した。既報カードが当該選手の引退申し出で変更に。しかもタイトル保持者の離脱だけに事態は深刻だ。しかしその流れを引き継ぐカタチで、相方の笹村あやめがSEAdLINNNG(シードリング)シングル王者・Sareeeのベルトに挑戦を直訴。その思いを笹村本人に聞いた。

会見後の4ショット(左から中島安里紗、Sareee、笹村あやめ、南月だいよう代表)
会見後の4ショット(左から中島安里紗、Sareee、笹村あやめ、南月だいよう代表)

「死闘」中島VS Sareeeは食物連鎖のピラミッド

 またもや令和女子プロレスの課題が露呈した。既報カードが当該選手の引退申し出で変更に。しかもタイトル保持者の離脱だけに事態は深刻だ。しかしその流れを引き継ぐカタチで、相方の笹村あやめがSEAdLINNNG(シードリング)シングル王者・Sareeeのベルトに挑戦を直訴。その思いを笹村本人に聞いた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

 WWEとの契約解除に伴い、帰国してからのSareeeは「かわいいよりも闘いを」→百貨店での髪のつかみ合い→当たりが強いせいか対戦相手が見つからないハードヒット問題……と何度か物議を醸す事象に襲われたが、年の瀬に入り、またもや問題に直面した。

 SEAdLINNNG年内最終戦(12月28日、後楽園ホール)で決まっていた、王者・リトベリ(笹村あやめ&海樹リコ)VS Sareee&中島安里紗によるタッグタイトル戦が、リコの「一身上の都合」による突然の引退申し出により白紙に。

 結局、対戦カード変更を余儀なくされたSEAdLINNNGは、14日、急きょ謝罪会見を行うものの、その流れを受けて笹村がシングル王者のSareeeに対戦要求した。

「Sareeeさんの持つ、シングルのベルトに挑戦させてください。SEAdLINNNGを盛り上げたいという気持ち、この歯がゆさ、全部、Sareeeさんにぶつけたいです」

 おそらく笹村は、やりきれない思いを強引に切り替えて、Sareeeのシングル王座への挑戦を迫ったに違いない。

 その思いを汲んで王者・Sareeeはこれを受け入れる。その場にいたベルト管理委員会もこれを了承し、急転直下、王者・SareeeVS笹村によるタイトル戦が実施されることになった。

 会見後、笹村に話を聞いたが、最も聞きたかったのは、8月25日に後楽園ホールで実施された、中島VS Sareeeによるタイトル戦の話である。

 まさに「死闘」ともいえる壮絶なぶつかり合いは、 Sareeeに軍配が上がり新王者に輝いたが、笹村は否応なしにあの試合と比べられる。それを承知でSareeeへの挑戦を直訴した覚悟だった。おそるおそる笹村が口を開く。

「ホントこれ、表現悪いと思うんですけど、殺し合いというか食物連鎖のピラミッドを見ているような感覚でした」

「私がやらなくて誰がやるんだ。戦うぞ!全てと!!」(中島安里紗)

 さらにこう続けた。

「自分もプロレスラーになりたいと思って、いろんな団体を見ているうちに、初めて好きになった女子レスラーが中島安里紗だったんです。殺気だったプロレスというか、相手を上回る強さを見るのが好きなので。だから、たしかにあの試合と比べられるプレッシャーはありつつも……。でも自分も意外とそういう試合は好きなので、違うカタチで超えれたらいいなとは思います」

 そこまで話した笹村は、続けて以下の言葉を発した。

「やっぱああいう試合をし続けることって、絶対に寿命が縮まると思うんです。言い方はあれなんですけど。でも、プロレスは闘いであるべきだし、そこに関しては自分も同感というか、自分もそう考えています」

 先術通り、今年はSareeeがWWEとの契約を終えて帰国し、3月に会見を開いた際、「プロレスは闘いなので、かわいいとかキレイよりも闘いを見せるほうが先」といった発言が物議を醸した。

「自分もそうだと思いました。試合中に受け身を取れなければ、大怪我や大事故につながってしまう。だから技術があってこそナンボの世界だとは思います」

 そもそも笹村にとってSareeeはどういう存在なのか。

「Sareeeさんはホント雲の上の人っていう感覚があったので、今までも1回、対戦があるかないかくらいですし、海外から帰ってきて、一度も試合をしたことはなかったので、まさかこのタイミングで、いろんなことがありタイトルマッチが決まったってことは、もうこれは運命なので、これを機に、ベルトを持ってシードリングを盛り上げていきたいなと思います」

 では実際、笹村はどうSareeeに勝つつもりでいるのか。そこは気になるところだ。

「たぶん、同じことをやっても上回れてしまうっていうのはあるので、どうしようかな。結構、作戦を考えていく派の人間なので、当日までじっくり考えていきます」

 なお、14日の会見上で記者から「緊急事態だからこそやってみたいことは?」と聞かれた、“悪魔”中島は「他に決めなきゃいけないことややらなきゃいけないことが多すぎて、そこまで至っていない感じですね」と語っていたが、結局、19日に、対戦相手がDASH・チサコと組んでのタッグで、松本浩代、水波綾に決定。

「私がやらなくて誰がやるんだ。戦うぞ!全てと!!」(中島のXより)と発信している。

 おそらく誰もが釈然としない思いを持ちながら、それでも今は、すべてをリング上にぶつけるしかないだろう。

 その意味で、12月28日の後楽園ホールは、さまざまな情念が渦巻く大会になることは間違いない。

次のページへ (2/3) 【写真】「死闘」だった中島 VS Sareee、実際の様子
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