伊藤沙莉が語る同じ監督と仕事をする意味 『探偵マリコ』で内田英治監督と再タッグ

映画、ドラマ、CMなどで幅広く活躍する俳優の伊藤沙莉(29)が映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』(6月30日公開)で『ミッドナイトスワン』の内田英治監督、『さがす』の片山慎三監督とタッグを組んだ。1つの映画で2人の監督と組むのは、20年のキャリアを持つ伊藤にとっても初めての経験だった。

映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』について語った伊藤沙莉【写真:舛元清香】
映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』について語った伊藤沙莉【写真:舛元清香】

映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』で内田英治監督、片山慎三監督の2人とタッグ

 映画、ドラマ、CMなどで幅広く活躍する俳優の伊藤沙莉(29)が映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』(6月30日公開)で『ミッドナイトスワン』の内田英治監督、『さがす』の片山慎三監督とタッグを組んだ。1つの映画で2人の監督と組むのは、20年のキャリアを持つ伊藤にとっても初めての経験だった。(取材・文=平辻哲也)

『探偵マリコ』は、新宿・歌舞伎町を舞台に、自称忍者の恋人・MASAYA(竹野内豊)を持つ、探偵マリコ(伊藤)がFBIから行方不明になった地球外生命体を探す異色のエンタメ。そこに、別れた娘を捜す落ちぶれヤクザ(北村有起哉)やホスト狂いのキャバ嬢(乃木坂46・久保史緒里)、シリアルキラー(松浦祐也)などクセ強キャラが絡み、予想外の展開を見せていく。探偵モノや80年代のハリウッド大作へのオマージュも感じさせる。

「SF的なこともあって、内田さんはそこに行ったかと思いました(笑)。やったことのない世界観とやったことのある世界観が合わさって、新しいものが生まれるなっていうワクワクは大きかったです」

 伊藤は2017年、内田監督の映画『獣道』で主演。以来、Netflixドラマ『全裸監督』(19年)、映画『タイトル、拒絶』(20年、内田プロデュース)などで仕事をしてきた。6つからのエピソードを2人の監督がそれぞれ演出するというスタイルで撮影したが、違いはあったのか。

「むしろ違和感がなくて、不思議だったんです。ビジョンがちゃんとリンクしていたんだと思います。1つの作品を作っている感覚があったまま、私自身もマリコとしてブレることもなかった。内田さんはやんちゃな遊び心の持ち主というか、エチュード(即興)が好きな人。片山さんは腰の低い方で、『あの、いいですか』と聞いてくれ、その場で生まれたものを、ちゃんと大事にしてくださいますし、お二人とも共通しているのは嘘がないこと。すごく役者としては恵まれていました」

 親しみを込めて「ダディ」と呼ぶ内田監督の現場では、いきなり「泣いてみて」と言われたことも。

「内田さんは、多くを語る人ではないのですが、あってもおかしくないパターンが欲しい人なんです。『泣いてみて』みたいに言われるのは久々の感覚でうれしかったです。『全裸監督』の撮影の時に、お芝居に対して、『今やってるお芝居はどこで覚えたの? 役としての言動に嘘つかないで』と言われて、気持ちを引き締め直したこともありました」

 同じ監督から何度もオファーを受けるのは俳優として光栄なことでもある。そこには厚い信頼ができているからだ。

「好きな監督と何回も仕事をさせていただけるからには、ちゃんと歴史を作っていかないと意味がない。変わらないと思ってもらえる部分と、ちょっと成長したなって思ってもらえる部分があって、次に繋がる、何かになるといいなと思ってやらせていただいてます」

 内田監督との仕事で印象的なものは『獣道』。親の愛情を受けずに育ったヒロインが居場所を転々としながらも、最後はAV女優として成功するまでの実話を基にした物語だ。

「第1歩目だったので、苦しさも違いました。撮影中にカットがかかっても、涙が止まらなかったこともありました。そんなことは初めてでした。ちゃんと怒られたことも、いい経験でしたし、今、役者人生を振り返っても、確実に軸になる作品だと思っています」

 自称・忍者の恋人、MASAYAを演じた竹野内豊との共演はどうだったのか。

「竹野内さんは現場でも、忍術を一生懸命やられてました。自分は忍者だ、伊賀流なんだという気持ちで臨んでいるので、竹野内さんが見えてる世界がちゃんと私たちにも映し出されて、何も疑いもない。マリコとMASAYAは深いところで繋がってる関係ですが、私もマリコとして、存在している時に、MASAYAの前に立つと、涙腺が緩くなるんです。甘えちゃうし、ほっとします。別に話し合ったり、引っ張っていくぞという態度ではないんですが、勝手に導かれていく。竹野内さんは憧れの人でしたけど、お芝居もお人柄も全て、すてきだなと思いました」。実年齢では23歳差。親子ほど離れているが、2人はいい味を出している。

□伊藤沙莉(いとう・さいり)1994年5月4日生まれ、千葉県出身。2003年にドラマデビュー。2020年以降、確かな演技力と出演作品の活躍を評価されギャラクシー賞テレビ部門個人賞、エランドール賞新人賞、ブルーリボン賞助演女優賞、山路ふみ子女優賞、文化庁芸術祭放送個人賞、橋田賞新人賞ほか受賞歴多数。近年の出演作は映画『ちょっと思い出しただけ』『すずめの戸締まり』『宇宙人のあいつ』、ドラマ『ミステリと言う勿れ』『拾われた男 LOST MAN FOUND』『ももさんと7人のパパゲーノ』、テレビアニメ『映像研には手を出すな!』(主人公の声)など。今年は舞台「COCOON PRODUCTION 2023『パラサイト』」、ドラマ『シッコウ!!~犬と私と執行官~』(テレビ朝日系)、『ミステリと言う勿れ』(9月15日公開)に出演。2024年度前期NHK連続テレビ小説『虎に翼』で主演を務める。

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