築43年の中古物件が一変、元イケア勤務の夫婦がリフォーム 驚きの“北欧流”収納術

女性が憧れる北欧の暮らし。長野・松本市在住のエッセイスト・桑原さやかさんはスウェーデン出身の夫・オリバーさんと2児を育てる母だ。自宅は北アルプスを望む築43年の中古物件で、3年前にボロボロの状態で購入後、DIYで北欧風にリフォームしている。4月18日に新著『居心地のいい場所は自分でつくる 北欧の日常、自分の暮らし』(ワニブックス)を発売した桑原さんに、自宅のこだわり、おしゃれなインテリアの見せ方を聞いた。

キッチンはイケア製。DIYで大きな窓を取りつけた【写真:『居心地のいい場所は自分でつくる 北欧の日常、自分の暮らし』より、撮影/松浦摩耶】
キッチンはイケア製。DIYで大きな窓を取りつけた【写真:『居心地のいい場所は自分でつくる 北欧の日常、自分の暮らし』より、撮影/松浦摩耶】

ボロボロの家がDIYで一変 「満足度は8割ぐらいかな」と笑顔

 女性が憧れる北欧の暮らし。長野・松本市在住のエッセイスト・桑原さやかさんはスウェーデン出身の夫・オリバーさんと2児を育てる母だ。自宅は北アルプスを望む築43年の中古物件で、3年前にボロボロの状態で購入後、DIYで北欧風にリフォームしている。4月18日に新著『居心地のいい場所は自分でつくる 北欧の日常、自分の暮らし』(ワニブックス)を発売した桑原さんに、自宅のこだわり、おしゃれなインテリアの見せ方を聞いた。(取材・文=水沼一夫)

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 家を買って丸3年。リフォームがようやく形になってきたという桑原さんは「何とか
心地よく住めるようになったところまではいったかなと思っています。本当全部の部屋に手をつけたって感じですね。でも、やっぱり気になるところはすごくいっぱいあって、まだまだやりたい気持ちです。満足度は8割ぐらいかな」と、笑顔で話した。

 かつて夫婦ともにイケアで働き、職場で知り合って結婚した。物件購入の一番の理由は価格だった。「家を買おうと悩んでいたときに、中古物件も結構高かったんですけど、この家はびっくりするくらい安かった。どんな家だろうと見に行ったら、夫もすごく気に入って、この家ならいいかと思って買ったんです」。住宅ローンは組んでいない。リフォームは業者に頼めば高くついたが、自分たちですれば出費を抑えることができた。

「北欧に住んでから、気持ちにも金銭的にも時間にも余裕を持つということがすごく大事で、この余裕がないと自分が見えなくなるというのを実感しました。日本に住んだとしても余裕はずっと保ちたいな、というのは一番大きくありましたね」

 桑原さんはノルウェー北部のトロムソで暮らした経験があった。もう一つの決め手は周辺環境だった。「トロムソはすごくちっちゃい街なんですけど、ちょこちょこいい感じのカフェやレストランがあって、さらに自然がすごく近かった。私たちは自然だけでなく、街が近いというのも結構大事だなと感じていたので、そのバランスがちょうどいい松本はすごく似ているなと思いました」

 手に入れた夢のマイホーム。とはいえ、最初は今とは想像もつかないくらいボロボロの家だった。2年ほど、空き家同然で手入れがされていなかった時期があったからだ。

「買ったときは、本当にもう虫だらけ。ボロボロだし、置いてあった家具を割ると虫が食べた跡があったり、天井をのぞくとハクビシンのふんがすごい落ちてくるみたいな感じでしたね。瓦の隙間からコウモリが入ってきたり、住んでからも、『また入ってきた…』みたいなこともありました。『ここに穴があるからまた埋めておこう』と話していましたね」

 すさんだ印象をがらりと変えるべく、夫婦で取り組んだのがDIYだ。和のよさを残しながら、北欧風にカスタマイズすることをコンセプトに掲げた。

「私も夫も日本の家がすごく好きで、この家も純和風の家です。畳に床の間があって、書院造りで、『ザ・日本の和室』みたいなところもある。そういう和の雰囲気を残しながら、でも北欧で見てきたインテリアも取り入れられたらいいなと思っていました」。夫の母国スウェーデンは物価が高く、築50年以上の物件がほとんど。リフォームは当たり前の習慣だったという。自身はDIY初心者だったものの、桑原さんは夫に刺激されて、ほとんど和室だった家を“日本と北欧のミックス”に大改造する。

 約16畳あるリビングは、畳だった床の半分をフローリングに張り替えると、モダンな雰囲気に様変わりした。「フローリングのところにはソファーを、奥にはまきストーブを置いて、家族のリラックス空間になっています」。テレビはプロジェクターに変更した。あえて、テレビが目につかないような配置にしている。これも北欧から学んだものだ。北欧の家では食事中にテレビをつけているのを見たことがないという。暮らしの中で、家族とのコミュニケーションを大切にしている。

「北欧の郊外の家はすごく大きくて、テレビ専用の部屋とかもあるんですね。それはもちろんテレビを楽しむためでもあるんですけど、家族で話す時間を大事にしたいというのが大きいです。それもインテリアに反映されているのはすごく面白いなと思ったので、私たちも取り入れています」

 キッチンはアイランドキッチンで、イケアでオーダーして夫婦で組み立てたものだ。

「めちゃくちゃ大変で時間がかかったんですけど、とにかくキッチンは収納をいっぱい増やして、こまごましたものを全部しまえるようにしました。北欧の家でも収納はたくさんあって、引き出しを開けると、全然きれいに収納してないというか、人にもよるんですけども、放り込んであるみたいな感じなんです。だけど、扉を閉めちゃえばすごくきれいな空間が仕上がるようになっていて、私たちもそうしたいなと思っていっぱい収納をつけました」

 キッチンは窓にも工夫が。もともと4枚あった窓ガラスを外し、外の景色が見える1枚の大きなガラスに変更した。「自然を感じながらご飯を作れるといいなと思って大きい窓を買いました」

桑原さやかさんの新著『居心地のいい場所は自分でつくる 北欧の日常、自分の暮らし』
桑原さやかさんの新著『居心地のいい場所は自分でつくる 北欧の日常、自分の暮らし』

北欧のアイデアが凝縮のインテリア お勧めは壁面収納

 そして、インテリアだ。ここには、北欧のアイデアが凝縮されている。

「北欧の家を見ていると、家具とか大きいものは全部シンプルなものにしていて、カーテンやクッションカバー、テーブルにテーブルランナーを敷いたりとか、そういう小物を遊んでいる家庭が多いです。布は遊んで、家具はシンプルでずっと使いたくなるものにしておくと間違いないなっていうのはすごく思っていました。特に北欧の家は白い壁の家で、もう床も白かったり真っ白な部屋も多いです。床も壁も全部真っ白になると、色みがある物を置いてもごちゃごちゃしないというか、割と映えるんですね。だから、家具でも何でも困ったら白を選ぶといいなっていうのは思っています」

 家具などのインテリアは壁やカーテンまで白を基調。カーテンを開けたままにすることも多く、柔らかな光が差し込み、足を踏み入れただけで明るい気持ちになる。

 壁面収納も特徴の一つだ。

「壁の取りつけ家具って昔はちょっと抵抗があったんですけど、壁を使うとインテリアも軽やかになるし、インテリア自体もすごく簡単にかわいくなれるんだなって思っていますね。イケアは特に壁面収納だらけで、種類が多くて超助かるっていう感じです。いろんな種類が安くあって、カラーも豊富なので、壁面収納はお勧めです」

 夫婦の寝室は、夜になると窓から星が見える。これも、畳の上にイケアのベッドを置き、高さを調整したものだ。

 こだわりは家の外にも。裏のスペースには、もともと畑だった場所に小さなサウナ小屋を建てた。フィンランドの暮らしにサウナは一家に1台というくらい欠かせない。「ちょっと思いつきでやってみたら、すごくよかった。いいのができてびっくりした」という自信作だ。

「北欧の人たちは家が大好きなので、家のことを小さいときから意識しています。夫も友達の家に行ったらインテリアのアイデアをもらうということを、子どものときからしていて、インテリアがすてきなのはこの積み重ねなんだなっていうのはすごく感じましたね。ちょっとずつ自分で変化したり、挑戦してみたり。それを永遠やっているのが北欧の人たちなんだなと」

 夫と二人三脚で、コツコツと積み重ねて理想のすみかに。訪れる客はどんな反応を示すのだろうか。

「私たちは古民家でもなくてどこにでもあるような普通の日本の家を買ったんですよね。それが、『本当どこでもある家なのに、こんなかわいくなるんだね』って言ってくれたときはすごくうれしかったです」

 北欧の人々は「1日中、家のことを考えている」と言われている。今では桑原さんもその楽しさにどっぷりと漬かっている。

「夫とは暇があったら次どこを直せるかなと話しています。5分休憩があれば、『裏庭のデッキスペースをもっと増やそうかな』みたいな話をしたり。それがすごく楽しみだし、家がよくなるってすごく大きくて、自分の手でよくすると、もっと楽しいんだなということを感じましたね」と結んだ。

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