美しさやしなやかさ、おもてなし精神を兼ね備えたレースクイーンの存在が注目度を高めている。日本最大級のカーレース「SUPER GT」（5月3～4日、富士スピードウェイで第2戦）で今季、GT500クラスに参戦する名門レースチーム「ARTA」を力強く支えるのが、「ARTA GALS」だ。レースクイーンとしての今季の意気込み、“ならでは”の強みとは。加入3年目を迎えた28歳メンバー、沢すみれが目指す理想像を聞いた。（取材・文＝吉原知也）

　沢がARTA GALSの仲間入りをした2021年は、コロナ禍が厳しい状況で、制限が多くかけられていた時期だ。「例えば、イベントの場で、チームや私たちを応援してくださる皆さんと直接触れ合ったり、一緒にお話をする機会が少なかったです」。だからこそ、今季に懸ける思いは今までとは違うものがある。「今年は制限が緩和されそうです。今まで直接話したことがないのにもかかわらず、私たちのことをすごくよくしてくださった皆さんに、この2年分を回収できるぐらいに、いい形でコミュニケーションをとっていきたいです！」。表舞台に立つレースクイーンとして、ファンへの恩返しの1年にする気持ちでいっぱいだ。

　22歳の時にレースクイーンデビューを果たした。「かわいい服を着て仕事がしたい」という純粋な思いが今につながっている。レースクイーンの最初のオーディションが、人生を決定付けた。水着が必要なのに、当日忘れてしまったのだ。「『申し訳ありません、帰ります』とスタッフの方に告げました。そうすると、『謝り方が武士みたい』と言っていただき、ご厚意で（その場にあった）以前の衣装を着てオーディションを受けさせていただけたんです」。手痛いミスからの奇跡の合格。その美貌とチャームポイントの「笑顔」で人気を集め、着実に歩みを進めてきた。

　目指すのは、「車とレースについて語れるレース仲間的な存在」だ。マニュアル運転はお手のもの。「レースカーのマシンの側面、クルマのチューニング・カスタム面についても、結構語れます！　自分で勉強しましたし、活動を通して皆さんに質問して聞いて学んできました」。

　それに、仕事を通して数多くの車種に乗ってきた。“乗車遍歴”は華やかだ。印象に残っているのは、「レンジローバーです。船みたいでした。ものすごく安定感があって、後ろに乗っていたら寝ちゃうぐらい、本当に乗り心地が気持ちよかったです。さすがは英国の王室御用達だ、と感じました」。

　ところで、レースクイーンは「見られる仕事」であるとともに、写真撮影が大きな活動の場にもなってくる。ここに意外な“弱点”が。

「私は、『かわいい服が着たい』という一心で、レースクイーンがどういう仕事をするのか全く知らない状態で入ったんです。最初に『取材入ります』と言われた時に、そのまま写真を撮られるとは思っていなかったんです。それで撮影に入ってすごくびっくりしました（笑）。本当に写真が苦手なんです。親がずっと『写真は魂を抜かれる』と言っていて、私もそんな感じで思っていて……」

　グラビア界でも活躍する逸材の、まさかの苦手意識。「家族アルバムも、一番上のお姉ちゃんは5冊ぐらいあるのですが、末っ子の私は0.5冊ぐらいなんです（笑）。写真はどんどん慣れてきていますが、今も写真撮影の現場では、カメラマンの方には申し訳ないですが、『カメラを意識しない』という感覚で、お仕事をさせていただいています。結局、今も少し苦手なのかな（笑）」。そう言いながらも、今季のオフィシャルショットなどでは、抜群の魅力を放っている。

「『かっこいいチームにはかっこいいレースクイーンがいるのだな』と思っていただけることが目標です」。そして、「ファンの皆さんの顔を見て『ありがとう』と伝えて、心の距離を縮められたら」。輝く笑顔を振りまいていく。

　2023年シーズンのARTA GALSは、沢、真木しおり、はらことはの3人が引き続き参加。新たに今井みどり、木村理恵、藤井マリーの3人が加わり、6人体制で精力的に活動する。