俳優の上野樹里が10月に上演されるミュージカル『のだめカンタービレ』で主人公の“のだめ”こと野田恵を演じることが、わかった。2006年の連続ドラマ、08年のスペシャルドラマ、09年と10年の劇場版でも同役を演じてきた上野が、初ミュージカルとなる新境地で再びのだめに挑む。20日、都内で会見に臨んだ上野は、およそ13年ぶりとなるのだめ役に「また別の形でのだめを演じることになるとは想像していなかった」と素直な心境を明かした。

『のだめカンタービレ』は、01年から10年まで『月刊Kiss』（講談社）で連載された二ノ宮知子氏による人気漫画。全13巻のコミックスはシリーズ累計で3900万部超のヒットを記録し、04年には『第28回 講談社漫画賞』の少女部門を受賞した。

　音楽大学のピアノ科に在籍しながらも指揮者を志している大学生・千秋真一が、落ちこぼれで変態だが天才的なピアノの才能を持つ野田恵と出会い、世界へと羽ばたいていく姿を描く。連ドラとスペシャルドラマ、ドラマ版の続編である劇場版前編・後編が制作されたほか、アニメ化や演奏会が開催されるなど「のだめブーム」を巻き起こした伝説的な作品だ。実写版はシリーズを通して千秋を玉木宏、のだめを上野が演じた。

　上野が13年ぶりにのだめを演じるきっかけとなったのは、原作者・二ノ宮氏とのラジオ共演。ミュージカル化されると聞いて「興味がある」と伝えたところ、出演が決定した。

　ドラマ版の「のだめカンタービレ」は、上野にとって連ドラ初主演作であり、出世作。現在でも「のだめの音楽とともに生き続けている」「色あせることなく記憶に残っている作品」と話すほど、思い出深いものとなっている。

　だからこそ、ミュージカル化は予想外だったが「歌い上げるというよりお芝居の延長で歌う。のだめがカンタービレするとどんな風に歌うのか、ちょっと面白いなって。挑戦してみようかなって思った。映像作品だと、その年齢にぴったりの俳優さんしか演じられない。今回も大学時代を演じますが、舞台ではリアルな年齢じゃなくても魅せられる。のだめとして、みなさんと再び会えるといい。未知の世界ですが、楽しみです」と声を弾ませる。

　千秋役に決まったのは、舞台を中心に活躍する三浦宏規。19年にミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役を史上最年少で射止め、舞台『千と千尋の神隠し』のハク、ミュージカル『刀剣乱舞』の髭切など、舞台での豊富な経験を持つ。

　幼少期はクラシックバレエを習っており、音楽はクラシック一筋。大人になるまでクラシック以外のジャンルを聞いたことがなく、ラフマニノフの楽曲を聞きながらバレエの振り付けを考えるのが趣味だったという。

　クラシック音楽を題材にした「のだめカンタービレ」は「大好きな作品」といい、「大好きな千秋先輩に自分がなるなんて夢にも思っていなかった。しかも、のだめを上野さんが演じるなんて、本当にうれしい」と喜びを隠さない。しかし、その一方で「正直、怖いです。『玉木さんじゃないんかい！』と言われそう……」と重圧も感じている。それでも「大役なので期待を裏切らないように、精一杯迷惑をかけないように頑張りたい」と気合を入れる。

　舞台やミュージカルの経験のない上野にとって、三浦は文字通り“先輩”となる。「千秋先輩についていきます」と語ると、三浦はうれしそうに顔をほころばせる。次の瞬間、ハッとした表情を浮かべて「『千秋先輩』と言われて、こんな顔にならないように気をつけたい（笑）」とコメントして笑いを誘った。

　会見には、原作者の二ノ宮氏のメッセージが届いた。「また新しい演奏を聞かせていただけるととてもワクワクしている。新しいのだめと千秋を見られるのが本当に楽しみです。みなさま、どうか自由に楽しく頑張ってください」とエールを送った。

　ミュージカル『のだめカンタービレ』は10月に都内のシアタークリエにて上演。演出は上田一豪氏、クラシック音楽監修は茂木大輔氏が担当する。