たばこは「指定の場所で」に愛煙家が苦言 マナー遵守に理解も「喫煙所が極端に少ない」

分煙化が進む昨今、「たばこ」を巡るトラブルが後を絶たない。こうした問題がニュースで報じられるたび、喫煙者のマナーについて厳しい意見が寄せられるが、この状況を愛煙家はどう見ているのだろうか。集合住宅で実際に隣人とトラブルになった経験のある都内在住のIさんに話を聞いた。

喫煙所(写真はイメージ)【写真:写真AC】
喫煙所(写真はイメージ)【写真:写真AC】

喫煙者の69%が「喫煙スペースが減ったと感じる」と回答

 分煙化が進む昨今、「たばこ」を巡るトラブルが後を絶たない。こうした問題がニュースで報じられるたび、喫煙者のマナーについて厳しい意見が寄せられるが、この状況を愛煙家はどう見ているのだろうか。集合住宅で実際に隣人とトラブルになった経験のある都内在住のIさんに話を聞いた。

“禁煙”の条件がない賃貸マンションに住んでいたIさんは、引っ越した当初、換気扇の下で紙たばこを吸っていた。

 しかし、喫煙するたび隣人から“壁ドン”を受けるようになり管理会社に相談。ほか居住者から騒音の苦情が多数寄せられていたこともあり、管理会社から「外に出て吸ってもらえますか?」と“お願い”され、結果的に窓を締め切り、加熱式たばこのみを吸うようになった。

 この“お願い”についてIさんは本音を語る。

「『外で吸ってくれ』とお願いされましたが、近所に喫煙所はありません。でも外で吸った場合は、“路上喫煙”になってしまう。ルールを守って紙たばこを吸う場合は、歩いて10分くらいの喫茶店に毎回行く必要があります。時間もお金もかかりますし、現実的ではないですよね」

 喫煙者のマナーについての議論では、必ずと言っていいほど「指定の場所(喫煙所)で吸うべき」という意見が出る。これについてもIさんは苦しい胸の内を明かした。

「マナーを守った喫煙=指定された場所での喫煙、という風潮は理解していますが、そもそも“指定された場所”が極端に少ない。渋谷や新宿といった市街地には喫煙所がありますが、それ以外の地域では一切ないことも珍しくないと思います。市街地でも駅の周りにしかなかったりするので、正直“マナーを守った喫煙”にはかなりの労力が必要です」

 Iさんが言うように、実際に渋谷や新宿で喫煙所を探して歩いてみると驚くほど少ない。そのせいか、駅周りの喫煙所は連日、多くの喫煙者で賑わっていた。特に印象的だったのは新宿駅・東南口の高架下にある喫煙所。人も多く、屋内式であることから、部屋の中はたばこの煙で白く染まっていた。

 こうした現状に愛煙家は何を望むのか。Iさんは「分煙に賛成」としながらも、苦言を呈した。

「非喫煙者の方の健康を害したいわけではないので、分煙の流れには賛成です。ただ、たばこ税を払っているからには喫煙所をもっと設置するなり、何かしら喫煙者に還元されてしかるべきなのではないでしょうか。嗜好品、臭い、健康被害、他人に迷惑がかかるかどうか、といった点で言えば、お酒も似たようなもの。非喫煙者の方も、お酒が“指定の場所”でしか飲めない状況を想像したらつらくないですか? 私はお酒も好きなので、本当にそうなっては困りますが……。これは私の“お願い”ですが、喫煙者もそうでない人も気持ちよく生活できるよう、しっかりと環境を整備していただきたいです」

 なおモバイルリサーチを展開するネットエイジア株式会社の「喫煙・喫煙スペースに関する意識・実態調査2021」では、喫煙者の69%が改正健康増進法施行(2020年4月)以降、「喫煙スペースが減ったと感じる」と回答。非喫煙者の64%が「喫煙スペースは必要だと思う」と答えている。

 もちろんIさんの意見は愛煙家たちの総意ではない。しかしながら、思わずハッと気づかされる部分もあった。喫煙者と非喫煙者。双方が快適に生活できる日は訪れるのだろうか。

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