政府による観光需要喚起策「全国旅行支援」が始まってからおよそ1か月半。国内各地の観光地では開始直後から予約が増加し、空港や有名ホテルは大勢の観光客であふれている。旅行サイトによっては予約受付を再開しており絶好の機会を逃すまいとする観光客の関心を集めている。その一方で、全国旅行支援によって発行されている地域クーポンの有効期限が自治体によってバラバラになっており一部で混乱を招いている。特に兵庫県は有効期限が「チェックイン日または旅行実施日から3日間」（公式HP）となっており、3泊4日以上の旅行を計画している観光客にとってはチェックアウト日にクーポンが使えず、廃棄するケースが相次いでいるという。ホスピタリティーの観点、またリピーター獲得の機会逸失という点から見ても議論を呼びそうだ。

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　10月中旬に神戸を旅行した自営業者が怒り混じりにこう話す。「神戸市内のホテルに3泊しました。チェックインする際、1泊あたり3000円、計9000円分の『ふるさと応援旅クーポン』を受け取り、チェックアウトした後に残った6000円分のクーポンを南京町の中華街で全部使って最後のぜいたくをしようと思っていたところ、有効期限が3日間だったため余ったクーポンが全部紙くずになってしまいました。もちろん予定していた中華のフルコースも食べられずじまい。よく確認しなかった自分も悪いですが、せめてホテルのフロント係の方から有効期限に関する詳しい説明が聞きたかったです。行政は観光客の気持ちをよく分かっていないと思いますね」。

　地域クーポンについては「宿泊県でしか使えないしほんと不便」「クーポンを使い切れるか自信ない」「地域クーポン全然使えない」などの苦情がSNSにあふれている。それでも有効期限を見る限り北海道はチェックアウトの日まで、沖縄県はチェックアウトの翌日までとなっており、兵庫県に比べたらましな方だ。

「全国旅行支援」は国が財政支援をし各都道府県が実施する事業のため、有効期限の設定は各自治体の判断による。地域クーポンの有効期限が短い理由について兵庫県観光振興課は「兵庫への観光客は1泊2日が多い、という過去の行動データを加味した結果です。短期間だと観光客は早めのクーポン利用を考えるので地域経済に即効性があります。また、クーポンを発行・運営するのにもコストがかかるので、それらを総合的に判断した結果、有効期限を3日に設定しました」と説明するのだが……。

　観光・地域創生に詳しい麗澤大学大学院経済研究科長の籠義樹（かご・よしき）教授は「有効期限の設定にはクーポンを管理する自治体の処理能力が問われます。兵庫県の場合、手間暇やコストの節減、転売などトラブル回避のためにあえて3日間に設定したのだと推測します」とする一方で、「旅行最終日に地域クーポンが使えなかった旅行客の無念は理解できますし、旅行期間中はクーポンが使えると思い込んでしまうのは無理もありません」と指摘。そのうえで「地域クーポンが紙くずになってしまうとすると観光支援の意味がなくなるので、地域クーポンを転売可能にすれば良いのです。コンサートのチケットなどと違って、1000円のクーポンは1000円以上にはなりませんし、使える地域も限定されていますから、転売を仲介することによって得られる利益などたかが知れています。それより、1000円の消費が地域に生まれることが大事で、1000円のクーポンを誰かに譲ればいずれ1000円の消費となり地域経済に役立ちます。さらに、地域クーポンを旅行支援の最終日となる12月下旬まで使えるようにすればリピーターも期待できます」と提案する。

　ともかく今回の旅行支援を利用してこれから各地に観光に出かける人は、ホテルで受け取った地域クーポンの有効期限をまずはしっかり確認することが重要だ。