青木真也「どこかでやめないと体が持たない」 入れ替わりの激しい世界で感じた現実

「ONE163」(19日、シンガポール・インドアスタジアム)が行われた。青木真也(EVOLVE MMA)はザイード・イザガクマエフ(ロシア・ダゲスタン)に1R・1分26秒TKO負け。大会のメインを務めた若松佑弥、岡見勇信、秋元皓貴の日本勢は全敗。悔しさの残る大会となった。一夜明けた20日、青木が囲み取材に応じた。

待ち合わせ場所でプールに入っていた青木真也【写真:ENCOUNT編集部】
待ち合わせ場所でプールに入っていた青木真也【写真:ENCOUNT編集部】

青木真也はザイード・イザガクマエフにTKO負け

「ONE163」(19日、シンガポール・インドアスタジアム)が行われた。青木真也(EVOLVE MMA)はザイード・イザガクマエフ(ロシア・ダゲスタン)に1R・1分26秒TKO負け。大会のメインを務めた若松佑弥、岡見勇信、秋元皓貴の日本勢は全敗。悔しさの残る大会となった。一夜明けた20日、青木が囲み取材に応じた。

 待ち合わせ場所はホテルのプールサイド。雨が降ったり止んだりとぐずついた天気が続いていたシンガポールだが、この日は真夏の日が差していた。取材陣が到着すると青木はすっきりとした表情でプールを泳いでいた。

「生きていく」をテーマに戦ったこの試合。青木は86秒で見せたかった姿について教えてくれた。

「やっぱり格闘技って死ねないっすよね。やっぱり死ねないからこそ学びもあるし、死ねないからこそ、こうつらさもある。そういう意味で教材としてとか、人が生きてく上で見て、学ぶものは大きいんじゃないですかね。死ねた方が楽っすからね」

「死ねた方が楽」についての真意についても白い歯を見せながら説明する。「それで終わりの方が楽じゃないすか。負けてすぱっと終われるなら楽ですけれど、負けても続いていくし、勝っても続いていくっていう部分がやっぱり難しい。昨日の試合だと勝ち負けありますけれど、勝ったらお前次、どうするんだよってありますし」と遠くを見つめた。

 大会のなかで青木は世界の格闘技の入れ替わりの速さを実感していた。

「やっぱUFCだってそうだし、ONEもそうだし、Bellatorだってそうなんすけれど、金が集まって、そこに選手が集まれば、どんどん基本的には代謝が早くなってくるんですよ。だから昨日勝っていても次ハードなやつと戦うっていうのは続いていくんですよね」

 ONEでは特にその動きは加速しているという。「(自分は)なんとか生き残っていたんだけれど、そろそろしんどいよねっていうのを僕自身感じていて、やる前に思っていましたけれどね。勝とうが負けようがどこかでやめないと体が持たないっす」と振り返った。

 格闘技を知る者はみな、勝っても負けても青木に注目する。「負けて話題になる選手になれてることがありがたいっすよ」とかみしめた。

一夜明けすっきりした表情の青木真也【写真:ENCOUNT編集部】
一夜明けすっきりした表情の青木真也【写真:ENCOUNT編集部】

平田樹にかけた言葉も明かす

 話題になるという意味では、今大会で計量失敗した平田樹には負けたとしみじみ。大前提に今回の一件をプロとして「ダメ」と言いつつ青木の考えを明かした。

「平田のやつはダメなんだよ。ダメなんだけれど、今たたくやつらはだせーよって。俺は前戦のとき、ばかにしたよ。今回は本当に俺は抑えた。なんか優しくないんすよ。みんな今の方がたたきやすいじゃないですか。芸がない。ユーモアがない。みんな愛はないっすよね。今たたいているやつは、本当にたたかれたことがなかったりとか、追い込まれたことがないやつです」

 さらに「なんだかんだでおもしろい。試合が2つあるんだもん。そこはなんか価値だなと思いますけれど、よく頑張ったっす」と平田のひとつの魅力を評価した。

 今大会では日本人3人がハイドレーションテストを失敗。青木の相手・イザガクマエフも1回目のテストをパスできなかった。その際には「(相手の体重が)ライト級をオーバーしてもやりますよ」と発言。この真意についても明かす。

「平田ダメじゃないですか。俺がそれでやんないなってなったらどうするんだって思いません? これで俺が金だけもらって帰りまーすってやったら『お前そんな悪いやつだったの』って思われんじゃん。そのテンションはないですね。でも責任感はあるからそこは」

 青木はだからこそ落ち込み心身ともに満身創痍(そうい)な平田に「いいから引っ込んでろ、休んでろっつって全部形にしてやるからって」と声をかけたという。これは同じ格闘技というフィールドで戦う先輩だからこそかけた言葉だった。

「これも結局、DREAMのときに田村潔司さんとか桜庭和志さんとかにケツ拭いてもらってんですよ。2008年の大みそか(Dynamite!!~勇気のチカラ2008~)が青木―エディ・アルバレスなんですけれど、そのときのメインが田村―桜庭なんですよ。それって結局俺らじゃ数字にならないから先輩たちが働いてくれたんですよ。結局僕も若いときに先輩にケツ拭いてもらってるから別に何かあったって、俺らおじさんがやるのは当たり前なんですよね。彼らは言わないっすけど、僕ら未熟なのをカバーしてくれましたからね。

 若松佑弥とか平田とか、僕たち上のおじさんたちがちょっと間を持たせている間に育ってもらって上がってもらって。おじさんたちがひょろひょろっていなくなったら彼らが上がって今度また彼らがそんとき(ケツを拭くこと)になったら、下の子たちをちょっと引っ張って回していけばいいんじゃないですかね。と俺は思いますけれどね。なのでできるならば、やっぱ日本人に“介錯(かいしゃく)”してほしいっすよね」

 生きていく以上終わりじゃない――。青木が試合前に口にしていた言葉だ。今大会確かに日本人は世界に完敗だった。しかし、これで終わるわけではない。ベテラン、中堅、若手の全員が同じ方向を向いて世界の格闘技界のなかでの勢力図を変えていきたい。

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