日帰り登山での飲酒、高尾山でもNG? 「ケーブルカーなら…」山岳ガイドが語る基準

多くの人出でにぎわう秋の行楽シーズン、紅葉登山を楽しみにしている向きもあるだろう。汗をかいた後に絶景を望みながら飲むお酒も格別なもの、昔から山と酒は切っても切れない関係だが、一方で飲酒後の行動には事故のリスクもつきものだ。山でのお酒のマナーをどう考えるべきか。公益社団法人日本山岳ガイド協会の武川俊二理事長に聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

日帰り登山での飲酒はOK?(写真はイメージ)【写真:写真AC】
日帰り登山での飲酒はOK?(写真はイメージ)【写真:写真AC】

サントリーでは「山の日」の8月11日、登山時の飲酒を控えるよう投稿

 多くの人出でにぎわう秋の行楽シーズン、紅葉登山を楽しみにしている向きもあるだろう。汗をかいた後に絶景を望みながら飲むお酒も格別なもの、昔から山と酒は切っても切れない関係だが、一方で飲酒後の行動には事故のリスクもつきものだ。山でのお酒のマナーをどう考えるべきか。公益社団法人日本山岳ガイド協会の武川俊二理事長に聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

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「今日は山の日。乾杯は下山までとっておきましょう。登山も飲酒も、事前の計画が大切です」。大手アルコール飲料メーカーのサントリーは「山の日」の8月11日、「#ドリンクスマート」「#お酒を飲むなら下山後に」というハッシュタグとともに、公式ツイッターで登山時の飲酒を控えるよう投稿した。

 サントリーホールディングス広報部によると、同社では1986年のモデレーション広告開始当初から、「お酒は、なによりも適量です。」というメッセージを発信。適正飲酒を理解しやすいよう、時流や時節に合わせた発信を続けているといい、登山時の飲酒の危険性については「スポーツ前、スポーツしながら、スポーツ直後の飲酒は、心臓に過度の負担をかける危険行為です。また、お酒によって反射神経や判断力が鈍り、思わぬ大ケガや事故の原因になりますので、登山時には飲酒せず、下山後にお酒をお楽しみいただきたい」と回答した。

 一般的には控えるよう周知されている登山時の飲酒。一方で、SNS上には昼食時や休憩時にビールやウイスキーを飲んでいる投稿も多数あり、必ずしも皆が守っているとは言い難い状況だ。もちろん、山小屋やテント場など、泊地についた後に飲む分には問題なく、また山小屋で酒類の販売もされており、どのような状況でお酒を楽しむかは個々人の判断に委ねられていることは確かだ。

 飲酒運転などとは異なり法的に罰せられる行為ではなく、ある程度は自己責任とされてきた登山時の飲酒マナーだが、日本山岳ガイド協会の武川理事長は「標高が高く気圧が低いところは、血行がよくなるため酔いが回りやすい。当然、酔えば注意力も散漫になります」と飲酒のリスクを指摘、「どんなに低い山、簡単な山であっても登山時や下山前に飲むことは論外です。個人的にはマナー違反というより、やってはいけない行為だと思っています」と厳しい口調で語る。

 中には山頂にビアホールを設けている高尾山や、アルコールの販売を重要な資金源としている山小屋もあり、一概にダメとは言い切れない事情もある。それでも「高尾山の場合、ケーブルカーを利用すれば安全に下山できるので例外ですが、登山道で下山するならば飲むのは反対です。確かに、日帰り前提の山でも山頂付近の売店でビールを売っているところはあります。ビール一杯ぐらいなら……という気持ちも分かりますが、やめた方がいいとしか言いようがないですね」と極力控えた方がいいと語る。

「私もお酒は好きですし、山で飲む酒は確かにおいしい。しかし、登山はときに命の危険のあるもので、最高のコンディションで臨むべきもの。ケガをしたら他人にも迷惑がかかりますし、自己責任とは言い切れないと思います」

 どうしても山でお酒を楽しみたいなら、1泊以上、余裕を持った日程で臨むという選択肢もある。健康管理を最優先に、秋の登山観光を楽しみたいところだ。

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