今井美樹、59歳「大きな第2ステージ」 娘の自立でロンドン暮らしも変化「新しい道を」

高畑勲監督の名作アニメ「おもひでぽろぽろ」(1991年)でヒロインを務めた縁で、ドキュメンタリー映画「紅花の守人(もりびと) いのちを染める」(公開中、佐藤広一監督)でナレーションを務めた歌手・女優の今井美樹(59)。年末にかけてのライブのため、日本に滞在中。プライベートでの環境の変化もあり、「今は第2のステージに歩き始めている」と語る。

映画「紅花の守人 いのちを染める」でナレーションを語る、今井美樹【写真:田村充】
映画「紅花の守人 いのちを染める」でナレーションを語る、今井美樹【写真:田村充】

映画「紅花の守人 いのちを染める」でナレーション 「おもひでぽろぽろ」との縁

 高畑勲監督の名作アニメ「おもひでぽろぽろ」(1991年)でヒロインを務めた縁で、ドキュメンタリー映画「紅花の守人(もりびと) いのちを染める」(公開中、佐藤広一監督)でナレーションを務めた歌手・女優の今井美樹(59)。年末にかけてのライブのため、日本に滞在中。プライベートでの環境の変化もあり、「今は第2のステージに歩き始めている」と語る。(取材・文=平辻哲也)

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「紅花の守人」は、中近東からシルクロードを経て中国に渡り、日本に伝わった紅花(べにばな)文化を守り継ぐ人々の姿を4年の歳月をかけて記録したドキュメンタリー。「おもひでぽろぽろ」の舞台が紅花農家だった縁でナレーションを務めた。映画の舞台あいさつでは、佐藤監督の「タエ子は今も山形で生きている」という言葉が身にしみた。

「あの作品(『おもひでぽろぽろ』)が続いているっていうだけではなく、イコール紅花を作る営みがずっと続いているということだと思うんです。費用対効果が大事にされる現代において、紅花を育てそこから染色までに至るそれぞれの営みを、意思を持って続けていくことは、ものすごく大変なことです。それをきちっとした実写で残すことが素晴らしいと思いました。自分にとって、タエ子は遠くにいる友のようなもの。タエ子は今、どう暮らしているかなと思ったことと監督の言葉が繋がって、泣きそうになってしまった」と振り返る。

 山形にいるタエ子、ロンドン暮らしの今井。その2人が30年の歳月を経て、ひとつになった。2012年のロンドン暮らしから10年。今井が実感しているのは、何かを長く続けていくことの難しさだ。

「そうですね。10年間、全く違う場所で生きられたのは、私たちをサポートしてくれる友人たちの存在は大きい。昔からのの友人だけではなく、新たにつながりができたご近所の方にも支えられています。国にはそれぞれ考え方がありますが、その地域の気候、気温、気質といったものに感覚的にアジャストしていきながら新たな生活を回しています」

 それを教えてくれたのは、ロンドンの自宅の庭だった。

「最初に住んでいた家の庭がとてもすてきだったんです。四季を感じながら、生命の営みを感じたりしていました。近所の街路樹さまざまなでとても素敵、そして街の大きな公園の木々はものすごく大きくてその圧倒感がなぜか温かい。私たちは何もない状態で行った新しい場所で、どうしていいのか分からない気持ちになっているのに、自然だけは回っていく。そんな姿にものすごく励まされました。こんなことは若い頃には気づかなかった。草花への眼差しが全く今までと違う気持ちになっていたところに、この映画のお話を頂いたことも意味があるように思えたんですね」

長女は20歳になったと語る今井美樹【写真:田村充】
長女は20歳になったと語る今井美樹【写真:田村充】

長女は10代をロンドンで過ごし20歳に「彼女には彼女の人生がありますから」

 2021年6月公開の永瀬正敏主演の映画「名も無い日」(日比遊一監督)に出演したことはあったが、アーティスト活動以外の仕事自体珍しい。

「他の仕事を一切やらないって決めているわけじゃないです。何年か前にも芝居の仕事(『名も無い日』出演)もやらせていただきました。でも、きちっとした時間が必要じゃないですか。ちょうど、その母親としても大事なタイミングにかかっていましたので、どっちつかずになるのを避けたくて、選択してきたということはありましたね」

 今、長女は10代をロンドンで過ごし、20歳になった。

「娘も大学生になって、家を離れて、新しい暮らしが始まっています。振り返ってみたら、私も19歳のときに(宮崎から)東京に出てきて、割と早いうちにたまたま人との出会い、仕事が始まっていました。彼女の今の年には、私は私で、自分の歩き方をしていたんですね。あのときは、遠く離れた両親が自分をどうサポートしてくれたのかは全然分からなかったし、羽ばたいていった彼女が、自分たちがどう思っているのかを知っているのかは分かりませんが、彼女には彼女の人生がありますから」

 長女の自立は今井にとっても、ターニングポイントになっている。年内はライブなどを積極的に行っている。

「エンジンをかけるのは簡単ではないです。5年前とも同じではないし、3年前とも違う。だけど、このまま立ち止まっているのも違う。あの頃できていたことができなくなっていることもたぶんすごく多いだろうし、やりたいことがずっと同じことかも分からない。ただ、歩き始めてみないと、その景色が変わっているのか、変わってないのかも分からない。だから、我が家のスタイルが新しい形になったことが大きな第2ステージだと思っています。これからを楽しみにしているわけじゃないけど、ちゃんと新しい道を探していかなきゃなと感じています」。現在、59歳。今井の新たな章はすでに始まっている。

□今井美樹(いまい・みき)1963年4月14日、宮崎県出身。86年シングル「黄昏のモノローグ」で歌手デビュー。CM・ドラマ・映画等、活動の幅を広げながら、「瞳がほほえむから」「PIECE OF MY WISH」「PRIDE」など数々の大ヒット曲を発表。2012年、英国移住。18年にはオリジナルアルバム「sky」を発表し全国ツアー開催。20年秋、タイムレスなセルフカバーアルバム「Classic Ivory 35th Anniversary ORCHESTRAL BEST」をリリース。今秋はビルボードライブ東京・大阪でライブ開催予定。

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