お盆に入り、行楽地は人出でにぎわいを見せている。レンタカーも含めて車を運転する機会も増える中、気をつけたいのがあおり運転被害。道路の混雑や渋滞により、イライラするドライバーの暴走に巻き込まれてはたまったものではない。一方、もし遭遇してしまった場合、どうすればいいのか。過去に被害を受けた2人のドライバーの対照的な“結末”を紹介する。（取材・文＝水沼一夫）

　関東圏に住む20代男性は、「5年ぐらい前ですかね。大学生のとき、かなり本気のあおり運転をされました」と、今でもおびえた表情で振り返る。

「ちょっと自分も悪かったんですけど、三重県の高速道路を運転していまして、サービスエリア（SA）に入ろうとしたんですね。追い越し車線から自分が左にウインカーを出して入ろうとしたときに、全然入れるスペースだったんですよ。ただ、そこで急に入ろうとして自分が車を動き出したときに、後ろからそのスペースを埋めるかのようにすごいスピードを上げてきた車がいました」

　瞬間的に恐怖感を覚えた。車にドライブレコーダーはついていなかった。

「『あ、怖いな』と思ったんですけど、SAに入る道は一本道なので幅も狭くて、抜かせるほどの幅もなかった。たぶん100メートルぐらいあったと思うんですけど、その間もすごい幅寄せというんですか、車間距離が本当に当たりそうなぐらい詰められて、後ろのバックミラー見たら、車がすごい蛇行運転をしていたんです。友達といったん怖いから逃げようということで、駐車場は混んでいたんですけど、1個だけ空いているスペースがあった。そこに車をもう急いで前向きで止めちゃったんですね」

　もうこれで安心…ではなかった。

「運転していた人が付いてきて『お前、どこ見て運転してんだ、ボケ！』と怒鳴ってきました。車の窓を開けて。最終的にドアを殴られたとかはなくて、そのままその車はSAから抜けていきました」。幸い、大きなトラブルに発展しなかったが、なすすべもなく肝を冷やした。

　今では車にドライブレコーダーをつけている。「何か役立った経験は直接はないんですけど、何かあれば証拠にはなるのでいいかなとは思ってます」と、安心材料になっているという。

　一方で、同じ状況で、あおり運転ドライバーを撃退したのが40代男性だ。

「ドライブレコーダーをつけていない車に乗っているんですけど、あおり運転されて、『お前ドライブレコーダーついてるよ』と言っただけでチンピラが逃げていったって話はありますね」

　男性は幼い子どもがいるため、車に「BABY IN CAR」のステッカーをつけていた。にもかかわらず、迷惑行為の標的にされてしまった。

「僕は田舎もんですから、ちょっと格好つけた車に乗っているんですけど、その分イケてる車とかは結構後ろからグーンと寄せてきたりとか、幅寄せしてきたりとかっていう経験はありますね。高速道路とか特に。あと、車のヘッドライトが結構白くピカッと光ったりとか、ナンバープレートとかも普通のライトじゃなくて、真っ白できれいに映る。そういう車なので、たぶんそれで目をつけられたのではないかと」と分析するが、だからといって、あおり運転していい理由にはならない。

　すごんだ目つきで「何だこの野郎」と因縁をつけられたが、そのとき、とっさに出たのが、上記の言葉だった。

「あおり運転殺しのひと言。これはぜひ使ってください。あおり運転されたら、もう一旦止まって、『お前ドライブレコーダーついてるからな、覚悟しとけ』ってひと言言ったらサーって去っていきますから」

　ドライブレコーダーの映像が証拠となり、危険運転者が逮捕されるケースはたびたび報道されている。激高した相手すべてに通じるとは限らないが、男性はウソでもいいから存在を告げ、窮地を切り抜けることができた。

「ドライブレコーダーがついていようがついてなかろうが、ついてると思わせたら、そういうあおり運転って結局されなくなるんだなというのは実感しましたね」としみじみと語った。