亀田興毅が天心のボクシング転向を分析「カラダを作れたら、すぐに世界を獲りますよ」

来る8月14日、エディオンアリーナ大阪 第1競技場で「3150(サイコー)FIGHT」が開催される。これは元プロボクシング世界王者の亀田興毅ファウンダーがプロデュースするボクシングイベントになるが、プロボクシング公式戦の後のイベントにキックボクサーの皇治が参戦し、「ABEMAスペシャルマッチ」(正式なルールは後日公表)を闘う。これまでもお笑いタレントのTKO木下やプロレスラーの丸藤正道も参戦させてきた亀田ファウンダー。その意図は何か? 本人に聞いた。

コロナ禍が「3150FIGHT」と亀田ファウンダーを生み出した
コロナ禍が「3150FIGHT」と亀田ファウンダーを生み出した

14日開催「3150FIGHT」をプロデュース

 来る8月14日、エディオンアリーナ大阪 第1競技場で「3150(サイコー)FIGHT」が開催される。これは元プロボクシング世界王者の亀田興毅ファウンダーがプロデュースするボクシングイベントになるが、プロボクシング公式戦の後のイベントにキックボクサーの皇治が参戦し、「ABEMAスペシャルマッチ」(正式なルールは後日公表)を闘う。これまでもお笑いタレントのTKO木下やプロレスラーの丸藤正道も参戦させてきた亀田ファウンダー。その意図は何か? 本人に聞いた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

「なるとは全く思ってなかったんですよ」

 取材の冒頭、亀田ファウンダーに、なぜボクシングイベントのプロモートをするようになったのかと聞くと、そんな答えが返ってきた。

 亀田ファウンダーいわく、「でも、自分はボクシングのおかげで今があると思っているんですよ」という。

 詳しく聞いていくと、全てはここにつながっていくことが分かってきた。

 亀田ファウンダーは言う。

「自分がボクシング業界にいるなかで、コロナがあって、選手が試合ができる場がなくなってきてしまった。さらに興行数が減ってきて、観客の動員数も50%にしないといけない時期があったり。選手もファイトマネーがもらえない。となるとボクシング業界のビジネス上、儲けることが難しくなってきたんですよね。実際、選手たちからも『ファイトマネーをもらえていない』って声を聞くじゃないですか。そしたら、かわいそうやなあと思って」

 亀田ファウンダーが意を決して動いた。

「そのときに、このタイミングかなって思ったんで、去年の2月かな? 自分がボクシングジムの会長になってやったんですけど、やるのであれば、真剣にやろうと思って。ちゃんとボクシングを稼げるスポーツになるようにしようと、いうところで、今やっているところですね」

 そもそもボクシングには、常に後楽園ホールで大会を開いている。そんなイメージがある。

「それが昔の常識ですよね」

 しかも「ABEMAスペシャルマッチ」には、番組企画といえど、キックボクサーの皇治が参戦する。いわゆるボクシングらしくない打ち出し方だ。これに関して亀田ファウンダーは、「昔の常識は今の非常識ですよ」と答え、「時代って変わっていくので。温故知新で伝統も大事にしつつ、新しいものも取り入れていくってやっていかないと、変わらないですよね。というのは、実際、格闘技って盛り上がっているじゃないですか。それは僕も当然ながら分かっている話でね。だからといって、あれはボクシングと違うって、ずっと敬遠していくのも違いますよね」と話す。

「3150FIGHT」では皇治(左)とヒロキング(右)の「ABEMAスペシャルマッチ」が行われる
「3150FIGHT」では皇治(左)とヒロキング(右)の「ABEMAスペシャルマッチ」が行われる

通常の倍のファイトマネーを現金で払う

 つまり亀田ファウンダーからすれば、細かな違いこそあれ、同じリングを使った興行である以上、お互いに活用できるところは活用すればいい、と思っているようだ。

「見ている人たちからしたら、ボクシングもキックも分からないですよ。説明できる人なんか誰もいないです。そのなかで、『僕はボクシングなんだ』って(偉そうなことを)言ったって、結果、どうなったのかっていったら、今じゃないですか。後楽園ホールでも今は会場を満員にできないですよ。それでいいんですか?」

 亀田ファウンダーにはそういう危機感がある。

「そんな現状になんの憧れもないですよ。選手たちも、ファイトマネーって4回戦は6万円なんですね。ネットで調べたら出てきます。6回戦で12万円とかって決まっているんです。それを選手たちはチケットでもらうんです」

 格闘技の世界でも時折聞く話だが、ファイトマネーをチケットで手渡された選手たちは、それを自分で手売りし、初めて収入を得ることができる。要はリングに立つためには、営業活動もこなさなければいけない。

「それ、誰が憧れるんですか? だから、それはあかん。(自分たちの興行では)禁止にしろって。僕は4回戦の選手でも6万円の倍、12万円を現金で渡すようにして。4回戦の選手だけじゃなくて、他の選手でも通常の倍の金額を現金で渡そうと。チケットで渡すのをヤメようと思っています。でないと、憧れが生まれない。まずはそこからやろうと思っています。もし、それ以上にチケットを売りたいっていう選手は破格の値段で卸してあげると。それを『頑張って売りたい』って言うなら『売ったらいいやん』って。売ったらそれも(定価との差額が)自分に入ってくるでしょ?」

 先ほど、亀田ファウンダーは「格闘技って盛り上がっているじゃないですか」と話した。実際、「THE MATCH 2022」(6月19日、東京ドーム)には6万5399人(主催者発表)の大観衆を集め、実に7年越しで那須川天心VS武尊を実現。PPVでの売上を含めると、格闘技史上でも類を見ない約50億円の売上を計上したといわれている。

 そこで亀田ファウンダーにそれについて訊ねると、「いいんじゃないですか。いいことです」とコメントしながら、「でも、僕はあれがすごいとは思っていないです。むしろ、まだまだこんなレベルなんだってとしか思ってないです」と話した。

「ボクシングはもっと低いですけど。東京ドームでやって、すごい売上だって言ってますけど、野球は毎日やっていますからね。EXILEだってコンサートをやったら、5日間、連続満員ですよ。『THE MATCH』を5日間、連続できるんですか? あれ、何年後にまたできるんですか。あれを月イチくらいそれができるくらいの規模感に持っていかないと。ボクシングにはそれができるだけのポテンシャルもあると思うんですよ」

東京ドームを5日間、満員にできる根拠

 事実、亀田ファウンダーも「THE MATCH 2022」には足を運び、その熱気を感じたはずだが、それをどうボクシングに転換させるかが課題になる。

「そうですね。興行の作り方とか。細かいところを見ていましたね、どっちか言ったら。僕も作っている側なので」

 ちなみに天心VS武尊はどう思ったのか。

「いい試合だと思います。素晴らしい試合だと思います」

 この後、天心はボクシングに転向することが決まっている。さまざまな関係者が天心の実力を予想しているが、亀田ファウンダーの見立ては?

 この質問に、亀田ファウンダーは「全然通用するんじゃないですか?」と話し、「世界チャンピオンになると思います。ただ、その時期はもうちょっと先になると思います。12ラウンド闘うカラダを作るには、2年くらいは必要なので」とつづけた。

 逆にいうと、2、3年後は世界チャンピオンも夢ではない?

「全然イケると思いますよ。アマチュアでずっとやってきている選手と一緒じゃないですか。天心選手は格闘技をずっとやってきているから、それと同じですよ。ルールは違えど。2年もあれば、すぐに対応しますよ。アマチュアエリートと同じやから」

「井上尚弥選手もそうじゃないですか。アマチュアボクシングからプロに転向してから、1、2年で世界チャンピオンになっているじゃないですか。叩き上げの選手だと無理ですけど、経験のある選手なら、比較的すぐに対応できるんです。だから2年間くらいは、しっかりカラダをつくって、カラダを作れたら、すぐに世界を獲りますよ」

 旧来のボクシング関係者なら敬遠しがちの格闘技界ともうまく交流し、天心の実力も高く評価する亀田ファウンダー。前述通り、東京ドームを5日間、連続で満員にできる可能性をボクシングや格闘技といったリングビジネスでも感じている。

 そこまで亀田ファウンダーが話すからには、その根拠があるのだろう。そう思ってそれを確認すると、「ボクシングも格闘技も、そもそも人間の理屈の中に入ってきますからね。そこを見ると、血がたぎってくるんですよ」と話した。たしかに人間の持つ闘争本能は、他には変えられない根本的なものがある。

 そう考えていくと、「3150FIGHT」が何を見せてくれるのか。ぜひとも「観る側」をKOさせるような“非日常”を体感させてもらえることを楽しみにしている。

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