水野裕子、学び直しのきっかけは家族のがん 30歳を前に「管理栄養士」目指し大学入学

数多くの“筋肉系番組”に出演してきたアスリートタレントの水野裕子さん(40)は、学び直しを実践した1人でもある。30歳を前に、スポーツと健康の学びを深めようと、修文大(愛知県)に入学して栄養学を修めた。卒業後に「管理栄養士」の資格を取得。社会人になってからの勉強や大学生活の大変さ、“気付き”について教えてもらった。

30歳を前に学び直しを実践したアスリートタレントの水野裕子さん【写真:水野裕子さん提供】
30歳を前に学び直しを実践したアスリートタレントの水野裕子さん【写真:水野裕子さん提供】

「管理栄養士」資格のガチガチのカリキュラム 地元にある修文大で“社会人”学生生活

 数多くの“筋肉系番組”に出演してきたアスリートタレントの水野裕子さん(40)は、学び直しを実践した1人でもある。30歳を前に、スポーツと健康の学びを深めようと、修文大(愛知県)に入学して栄養学を修めた。卒業後に「管理栄養士」の資格を取得。社会人になってからの勉強や大学生活の大変さ、“気付き”について教えてもらった。(取材・文=吉原知也)

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 芸能活動を頑張る中で30歳を前に、体作りや栄養、スポーツとの関わりをさらに学びたいと思い、大学に入りました。地元にある修文大の健康栄養学部管理栄養学科です。きっかけは筋肉系の仕事がつながっています。スポーツ栄養学の第一人者である鈴木志保子先生の影響が大きくありました。23、24歳の頃、鈴木先生と雑誌の対談でお会いし、初めてプロの栄養学に触れました。その後も雑誌の企画で定期的にお話する機会があって知識を教えていただいていました。自分なりに独学で勉強を続けていました。

 もう1つ理由があります。おばが末期の胃がんになって、食事の管理や栄養を学びたいと思ったからです。地元の大学に入ったのも、介護も兼ねてという考えもありました。おばは、1年以上ぶりに会った時にびっくりするほど激痩せしていたんです。どうしたのって聞いたら「ダイエットがうまくいった」という答えで、私は安心しちゃったんです。結局そこから数年たって、ふたを開けてみたら、もう手の施しようがない状態であることが判明しました。ものすごくショックを受けました。私自身、栄養や健康のことを自分なりに勉強していたはずなのに、なんで気付かなかったんだろうと、知識の不十分さを痛感しました。その後悔が「ちゃんと学ぼう」というスイッチになりました。

 2011年春の入学でしたが、東日本大震災が起き、お仕事の環境がかなり変化しました。所属事務所の理解と協力があって、地元の番組に出演させていただきながら、時間的な制約のある中で、学業との両立に取り組みました。

 大学での管理栄養士の資格取得のカリキュラムは、必修科目が多く、日々のスケジュールもガチガチに組まれていて、キャンパスライフみたいな自由度はあまりないんです。授業の内容は皆さんが思うよりも「医学」です。分子レベルの話から始まって、これはどういう成分構成で、体内に入ると何と反応してどう分解され、どんな成分になって体のどのパーツに吸収され、最終的にどういう風に体の中で働くのか、ということを勉強します。高校が商業高校だったので「単位のモルって何?」という感じで。食事のバランス表じゃなくて化学式、元素記号を覚えるところからやり直し、みたいな。大学1年生の時が一番大変でした。

「若いと記憶力って違うんだなあと痛感しました」

 クラスメートは11歳年下の子ばかり。若いと記憶力って違うんだなあと痛感しました。私自身、当時30歳で台本や段取りを覚えて頭を回転させる芸能界の仕事をしているので、それなりにできると思っていたんですけど、全然違って(笑)。もう必死でした。一番前の席に座って、先生の言うことを一言一句逃がさず受験生かのようにノートに取って、ペンもありとあらゆる色を駆使してまとめて、このまま見直したら絶対テスト大丈夫というレベルで毎授業しっかりやっていたのに、全然ノートを取らない子が、私が覚え切れていないところまで覚えているみたいな(笑)。それこそ学業自体が十何年ぶりで、こんなに頭に入らないのかとびっくりしました。時間はかかりましたが、19年3月に卒業しました。

 いま学び直しが社会で広がっています。仕事の時間の兼ね合い、学費の経済面で大変な部分はありますが、やりたいと思ったタイミングで取り組むことが大事だと思います。大人になって新たに資格を取得したり、転職のためのスキルを身に付けたり、どの形で学習するにしても、一番大事なのはモチベーション。私自身、学生時代は決して勉強が好きな方ではなかったです。でも、大人になって「学びたい」と自分が思えたこと、それは自分の中で大きな驚きでした。学びたいという今の気持ちを先延ばしにすることはもったいないです。

 物事に取り組むにあたって、自分の気持ちが乗っている時は、習熟度も集中力も高まります。何かをやらなきゃいけないけどどうしようとなっている時は、なかなか動けないし、やり始めてもしんどくなります。でも、自分が興味を持って、これをやってみたいと思ったことであれば、気持ちが乗ったタイミングで挑戦すると、必要なことは意外と後からついてくるものだと思います。万難を排して始めるのではなく、ちょっと無理やりでも一度始めてみた方が、いろんなことが進んでいくのではないでしょうか。私もあのタイミングで大学に行っていなかったら、管理栄養士の資格取得は実現していなかったと思っています。

 大学時代にもう1つ大変だったのが、リポート提出でした。どうしても仕事で授業や実験・実習に出られない日もあったのですが、クラスの子たちが仲良くしてくれて協力してくれて助かりました。しょっちゅう一緒にご飯に行きましたし、今でも連絡をくれるんです。年齢が一回り近く違うのに、今でも「裕ちゃん、裕ちゃん」って言ってくれるので、ありがたいですよね。なかなか大人になって、仕事でもなく、元々の付き合いがあるわけでもないところで、新しいコミュニティーはできないじゃないですか。そういう意味では、年齢も生活環境も全然違う子たちと一緒に過ごせたというのは、また1つ学びとは違う意味で、人生における自分の幅が広がりました。

□水野裕子(みずの・ゆうこ)1982年3月8日、愛知県生まれ。グラビアを経て、「KUNOICHI」 や「マッスルミュージカル」に出演。50を超える競技に取り組み、スポーツキャスター・アスリートタレントとして活躍。2011年4月、修文大健康栄養学部に入学し栄養学を学ぶ。19年5月、国家資格「管理栄養士」の資格を取得。趣味の釣りはプロ級の腕前。

次のページへ (2/2) 【写真】水野裕子の白衣姿
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