アユニ・Dが告白 BiSH加入時は「『あ』しか喋れない」「ホント、クソガキだった」

“楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバー、アユニ・D。6人がそれぞれ主演したオムニバス映画「BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK’N’ROLL」(公開中)の一遍「オルガン」では、妹役を好演。“妹”から見たBiSH、日々近づく解散への思いは?

解散への思いを語るアユニ・D【写真:舛元清香】
解散への思いを語るアユニ・D【写真:舛元清香】

解散への思いも吐露 映画「BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK’N’ROLL」公開中

“楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバー、アユニ・D。6人がそれぞれ主演したオムニバス映画「BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK’N’ROLL」(公開中)の一遍「オルガン」では、妹役を好演。“妹”から見たBiSH、日々近づく解散への思いは?(取材・文=平辻哲也)

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 妹が写真家の兄の死に直面する姿を描く「オルガン」(エリザベス宮地監督)は、グループの中でも妹キャラ、プライベートでも妹という自身を反映させた作品だ。妹はいろんな部分で恵まれている部分もあるはず。アユニ・Dはどう思っているのか。

「映画は自分にとって、大切なものになりましたね。BiSHで言うと、他に5人のお母さんがいる環境なので、甘えたいときは甘やかしてくれるし、叱るべきときは叱ってもらえる。だから、周りの人に育てられているな、と思いますね」

 2015年1月始動のBiSHに、最後のメンバーとしてアユニが加わったのは2016年8月。ターニングポイントは何か。

「ありがたいことに、入った最初から、本当にいろんなものが整っていて、いい人たちに恵まれ、毎日がターニングポイントといってもおかしくないです。個人的に思い入れが大きいのは、私が入って、この6人になって2か月目の日比谷野外音楽堂でのライブ(2016年10月8日『BiSH Less than SEX TOUR FINAL’帝王切開’』)です。初めて大きい会場でのライブで、まだメンバーとの関係性も曖昧。モロいけど、やりきった。あの初期衝動みたいな感覚は当時でしか出せなかった。客席の様子、横から見たメンバーの顔、振りを間違えた場所まで今でもすごく鮮明に記憶に残っています」と振り返る。

 これまで自身は「根暗キャラ」と言っているが、実際のアユニ・Dにはそんな印象は一切ない。しっかり思い、考えを伝えようとする。

「BiSHに入りたての時は本当に、しゃべるのが苦手でした。『あ』しか喋れない。(『千と千尋の神隠し』のキャラクター)カオナシ状態。人がくれた優しさも、バットで打ち返していたし、斜に構えるのがかっこいいと思っていた。ホント、クソガキだったんです。でも、BiSHでいろんな人に出会っていろんな人と話をして、経験させていただく中、喜怒哀楽も覚えましたし、たくさんの愛を教えてもらいました。人間としてかなり前向きに、楽しく成長はしてきているんじゃないかと思います」。

今後の決意を語るアユニ・D【写真:舛元清香】
今後の決意を語るアユニ・D【写真:舛元清香】

解散までカウントダウン「明日を生きるために今、必死に生きています」

 2018年にはソロプロジェクト「PEDRO」が始動。さらに2021年にはアユニ・D歌い手プロジェクト「青虫」としてもデビュー。「ソロ活動はBiSHとは全然違います。私はもともとそんなリーダーシップを取れる性格ではないんです。BiSHでは、(セントチヒロ・)チッチという大黒柱がいてくれるので、甘えっぱなしだったりするんですけど、ソロでは自分がフロントマンにならなきゃいけない。ゼロから自分が決めなきゃいけない。最初はやっぱり戸惑いました。ただBiSHをやるにしても、ソロをやるにしても、自分という人間1人がやっていることなので、BiSHで培ったことはソロでも、ソロで経験したことはBiSHにも活かせている気がします」と自信も見せる。

 昨年12月に、2023年をもっての解散を発表して以降、この映画を始め、いろいろなプロジェクトが進行しているが、同時に解散までのカウントダウンは日々近づいている。

「めちゃくちゃ意識するようになりました。解散を公表して、終わりっていうのが見えてきたからこそ、一つ一つのことを何気なく過ごしたくないなという思いは強くなっています。明日死ぬと思ったときの、今日の食べ物と、そういうものを意識しないときの今日の食べ物は全然違うと思うんです。本当にそんな感じです。明日を生きるために今、必死に生きています」

 生きていることは、実は日々、死へのカウントダウン。しかし、人間はそんなことを意識しないでやり過ごしている。それが普通の感覚だ。きっと、こんなことは死を前にした人や老人になって、初めて気づくことなんだろう。そんなことをアユニ・Dは早くに悟った。これは生きる上で、ものすごく大きな力になるはずだ。

 今後に向けての決意はこう語る。

「最後の最後のときまで、今まで通り変わらずやっていきたいし、至らない部分はもっともっと成長していきたい。コロナ禍になってあまりライブができないですし、今、BiSHを知ってくれ、好きになった方々もいらっしゃるので、いろんな人にできるだけ会って、感謝と愛を伝えに行きたい。雑草魂で貪欲に駆け抜けていきたいと思っています」と言葉に力を込める。BiSHの妹分は5人の姉を手本に着実に成長を見せている。

□アユニ・D(あゆに・でぃー)10月12日生まれ。北海道出身。2016年8月に“楽器を持たないパンクバンド”BiSHに加入。「PEDRO」「青虫」としてソロでも活躍している。

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