“教育”に進化するeスポーツ 強豪・クラーク記念国際高で取り戻した公務員の夢

ゲーミングチェアに座り、ゲーミングパソコンを操作するコース授業【写真:中島洋尚】
ゲーミングチェアに座り、ゲーミングパソコンを操作するコース授業【写真:中島洋尚】

eスポーツを通して実現した“夢”以上の高校生活

 CLARK NEXT Akihabaraを卒業した鬼島さんは、高校1年の冬に開催された全国高校選手権が、最初にAチームで出場した大会だった。役割はサポート。“勝てる”と思ったタイミングで集団戦を開始する“エンゲージ”役を任されたが、当時、思い通りにエンゲージできたのは、1試合で1、2回にすぎなかった。「講師の先生に教えていただいたのに、どうしてもうまくできませんでした」。半年間は授業と自宅で計10数時間パソコンと向き合い、エンゲージのタイミングを体に染み込ませた。1試合に4回、5回、6回と、思い描いたエンゲージができる回数が増え、翌夏の全国大会「STAGE:0(ステージゼロ)」でも再び、Aチームのサポートとしてエンゲージ役を務めた。「自分がAチームで出場できた理由を聞くと『エンゲージがうまいから』と言われたのはうれしかったですね。先生方に言われ続けた、ひたむきな努力が実を結びました」と振り返る。

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 生徒会長、コース長を務め、最後の最後で全国114校164チームが参加した昨年12月の全国高校eスポーツ選手権を制した。「それまでどうしても倒せなかったN高を、準決勝で破ったときが、3年間で最高の瞬間でした。次が(優勝の)トロフィーを掲げたときですね。努力すれば必ず結果が出せることを、この3年間で学びました。後輩から卒業のときにいただいたメッセージに『(鬼島さんの姿は)何かの主人公を見ているような気分にさせられました』というのがあるのを見たとき、そのぐらい充実した時間だったんだなと、あらためて思いました。中学生のときに見た“普通の高校生活の夢”とは、良い意味でかけ離れました」と、鬼島さんは、顔をほころばせる。3年間のeスポーツを通した教育で“公務員になる”という夢を取り戻し、さらに“夢よりも充実し過ぎた高校生活”の経験を、後輩たちに伝える。

 昨年4月に開校したクラーク記念国際高校の新たなキャンパス「CLARK NEXT Tokyo」(東京都板橋区)の責任者・成田康介キャンパス長は実感として、「eスポーツは急速に世の中に浸透してきている。ただし、一般的な認知としては、まだフィジカルスポーツ同様にはとらえられていない。高校教育についても同様で、子供たちの意識と教員や保護者層の理解のギャップがないとはいえない。このギャップを、生徒たちの成長をもって埋めてゆきたい」と話す。そして先述の笹原教諭は「eスポーツのプレーヤーを応援する人がいる、ということが重要。野球やサッカーと同じように、大会を見に行って、熱狂する人がもっと増えてほしい」という。保護者の理解を得てeスポーツを学び、経験を積んだ生徒たちが、『自分のプレーが人の心を動かし、熱狂を生み出せる』と実感できる環境が生まれたとき、eスポーツ教育は、さらなる進化を遂げるに違いない。

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