仮想通貨を稼げるNFTゲームを活用し、シングルマザーの貧困を解決しようという試みが話題となっている。今月10日、一般社団法人日本シングルマザー支援協会が日本最大級のブロックチェーンゲームギルド「LCA Game Guild（LGG）」とパートナーシップを提携したと発表。子育て中のシングルマザーに、NFTゲームで効果的に収入を得るためのサポートを提供していくという。NFTゲームとはどういったもので、どのようにしてシングルマザー支援につなげていくのか。今回パートナーシップを結んだ両団体を取材した。

　NFTゲームとは、暗号資産のブロックチェーン技術を利用したゲームのこと。ゲーム内容はカードゲームバトルや実際の歩行距離に応じて仮想通貨がたまる位置情報ゲームなどさまざまで、一般的なソーシャルゲームと同じくスマートフォンひとつで手軽にプレイすることができ、ゲーム内で手に入れた仮想通貨を電子マネーなどの形で日本円に換金することができる。仮想通貨の価値は株式と同じようにゲーム運営企業へやゲーム経済圏に対する信用で成り立っており、利用者数やサービス内容次第では価格が変動するリスクはあるものの、国や銀行等を介することなく財産的価値をやり取りする仕組みとして、近年大きな注目を集めている。

　日本シングルマザー支援協会の江成道子代表理事は「シングルマザーの中には、支援があっても情報にアクセスできない方も多い。正直、私自身も完璧に理解しているわけではありませんが、これからの時代、メタバースやITスキルにも触れていくことが大事です。30年前に出始めた当初、携帯電話は貧困層に買えるものではなかったが、今回、支援という形で新しいものに最初から触れられるのは面白い試みだと思う」と今回のパートナーシップの意義を説明。これまでにもアマゾンの欲しいものリストを使った支援など企業との提携は行ってきたが、NFTゲームを使っての支援は日本で初の試みとなる。

　今回パートナーシップを提携したLGGは、NFTゲームを始める人向けのマネジメント企業。NFTゲームを始めたいけど始められない人へのサポートや、今どのゲームが稼げるのかや、ゲームの攻略情報などをアドバイスするゲームギルドだ。LGG最高サスティナビリティ責任者の庄司隆弘氏は「私自身、小学生のときに事故で父親を亡くし、シングル家庭で育ちました。ゲームを使って何か世の中に貢献したかった。最初は『稼げるゲーム』といっても怪しまれましたが、江東区議会の三次ゆりか議員を頼って実際に1か月間NFTゲームをプレイしてもらい、信頼を得たうえで日本シングルマザー支援協会を紹介していただきました」と提携の経緯を語る。

　支援のイメージとしては、本来は課金して手に入る強いカードを同社があらかじめ用意。それをシングルマザーに提供することで、ゲームの専門的な知識や経験がなくとも収益をあげることが可能になるという。

「毎日5ステージ、15分程度プレイすることで規定の報酬が得られます。オートプレイモードもあり、最初に強いデッキを用意すれば誰でも勝つことができます。15分のプレイは連続でなくとも大丈夫なので、仕事や育児の隙間時間でできます。レートは相場によって変動しますが、5月11日時点のレートでおおよそ月に2万2000円ほど、上限5万円を支給予定です。本来は無課金ではなかなか稼ぐことは難しいですが、今回の支援では我々がデッキを提供するのでシングルマザーの方に費用が生じることはありません」（庄司氏）

　支援はまだ実証実験の段階で、実際にシングルマザーの貧困問題を解決するには課題も多くあるという。

「当然ですが、最初に強いデータを用意するにはそれを買うためのお金が必要になる。現在はこの取り組みに共感しスポンサーとなっていただける企業を募集している段階です。企業名を全面に出した形でギルド運営をLGGがサポートする事もできるので企業のESG活動の具体例としても有効な手段です。また、全体のプレイヤー数に対して支援された強いデッキの割合が増えすぎると、ゲーム内のパワーバランス・ゲーム経済圏を壊してしまう恐れがあり、ゲーム会社とも調整が必要です。今後、まずは若干名の方にテストプレイをしていただき、アンケートを取りつつ進めていきたい」（庄司氏）

　NFTゲームでシングルマザーを救うという異例の試みは実を結ぶか。