元自衛隊「対テロ部隊」の日本人がウクライナで“極秘任務” ロシア侵攻前に現地入りした驚きの理由

ロシアがウクライナに侵攻して2か月以上が過ぎた。外務省からは退避勧告が呼びかけられる中、危険を承知しながら、さまざまな役割を持った日本人もウクライナに入っている。ジャーナリストや医師、ボランティアなどだが、元自衛隊特殊部隊の男性は、ロシアの侵攻前にウクライナ入りし、“特別任務”を担ってきたという。この人物が、ウクライナで何をしていたのかを語ってもらった。

ロシア侵攻後、避難民でごった返すウクライナの電車。女性と子どもがほとんどだった【写真:男性提供】
ロシア侵攻後、避難民でごった返すウクライナの電車。女性と子どもがほとんどだった【写真:男性提供】

「避難ルートを確保」ロシア攻撃前に現地入りした目的

 ロシアがウクライナに侵攻して2か月以上が過ぎた。外務省からは退避勧告が呼びかけられる中、危険を承知しながら、さまざまな役割を持った日本人もウクライナに入っている。ジャーナリストや医師、ボランティアなどだが、元自衛隊特殊部隊の男性は、ロシアの侵攻前にウクライナ入りし、“特別任務”を担ってきたという。この人物が、ウクライナで何をしていたのかを語ってもらった。

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 待ち合わせの喫茶店に現れた男性は、自身のウクライナ滞在についてこう振り返った。

「戦争が起こる前にウクライナに入って、滞在中に戦争が起こって、その後、ハンガリーに離脱したという流れです。ハンガリーを含めて1か月滞在して、帰国しました。戦争が始まって、万が一、邦人を避難させるときを想定し、道路や通信を含めたウクライナ国内のインフラ状況や国境周辺を見て回って、情報を収集して提供するというのが主な活動でした」

 情報の提供先は、守秘義務を理由に明かさなかったが、それ相応の組織が背後にいるようだ。スーツ越しにもかっぷくのよさがひと目で分かり、精悍な表情やゴツゴツとした指から自衛隊で経験を積んだベテランの雰囲気が漂った。特殊部隊とは、通常の部隊では対応できないゲリラやテロリストに対応する組織と言われている。男性は英語も流ちょうに話すが、自身の名前については口をつぐんだ。

 男性がウクライナ行きの“指令”を受けたのはロシアの侵攻前だ。同様の経験を持つ同僚も一緒で、荷物の中には小型のドローンやカメラを携帯した。キーウ、オデーサ、リビウなど東部を除く主要都市と国境地帯を回り、避難ルートのめぼしをつける作業を行った。並行して、日本で報道されているニュースの内容と現地の実情の差異をファクトチェックする目的も遂行した。紙幣は現地通貨、ユーロ、ドルを用意。「今までの経験上、例えば、国境沿いで捕まったときとかはいつでも渡せるように準備はしてました」と万一に備えた。ウクライナ人のドライバーを雇い、ときには自分たちでレンタカーを借りて、隅々まで足を運んだ。

 並行して情報収集にも努めた。今回のロシア侵攻ではマスメディアの報道が必ずしも正確とは限らないことが証明されている。日本でも放送されている欧米発のニュースも例外ではなく、ファクトチェックを進めながら実際の状況を確認した。当初、ウクライナにピリピリしたムードはなく、「あいつらは絶対来ない」「あれはただの威嚇だ」との声も聞いた。しかし、ロシアが攻撃を始めると、平穏な日々は一変した。

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