Vaundy、父親世代を夢中にさせる革新性と普遍性 “令和ポップス”の魅力を作曲家が分析

2022年はVaundyの年に…? 年末の紅白出場にも期待

 考えてもみてください。小田和正や山下達郎は、ぼくの「父親世代」であり、Vaundyから見ると「祖父世代」であります。もちろん、小田や山下の音楽が時代を超える普遍性を持っていることをぼくは誰よりも知っているつもりでしたが、Vaundyのような時代を切り開く新しいアーティストが「いの一番」に彼らの名前をあげることを、ぼくはとてもうれしく思います。

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 なぜなら小田や山下は「Jポップ」という言葉すらない70年代から、ぼくたちに「日本のポップス」という新しい風を感じさせてくれた、真の先駆者たちだからです。

 Vaundyはかたや、ネットラジオでの発言で「自分は米津玄師さんが起こしたイノベーション後の最初の世代だと認識している」とも発言していました。

 ううむ……。Vaundyは「世代をつなぐポップス」を作ることにかなり自覚的なんですね。なんとうれしいことでしょう。

 最新曲「恋風邪にのせて」も、イントロのギターフレーズから郷愁を誘う大名曲。ぼくたち昭和ポップス世代が大好きな「切ない系」のラブソングです。ライブのチケットも軒並み完売のようですし、この春からの日本テレビ系「news zero」の新テーマソングはVaundyが手がけ菅田将暉が歌う「惑う糸」です。前述のスガシカオのみならず、シンガー・ソングライターが他アーティストへの提供曲から大ブレークの足がかりを得る例をあげていくとキリがありません。

 どうやら、今年は「Vaundyの年」になりそうですね。いや、もうすでになっているのかもしれません。

 つらつらと書き連ねてきましたが、ぼくがお伝えしたいのは、こんなすてきな音楽を若者のものだけにしておくのはもったいない、ということ。まずは「おもかげ」を聴いてみていただけたら、きっと昭和ポップス世代にもおわかりいただけると信じています。Vaundyという21歳のアーティストが、3世代をつなぐ才能と意志を持った「ポップスの申し子」であるということが。

 そう言えば、つい先日、大団円を迎えたNHKの朝ドラ「カムカムエヴリバディ」も3世代のヒロインをつなぐドラマでした。令和4年の現在は、3世代を貫く「普遍性」が一つの大きなテーマである、と結論付けるのはやや勇み足にすぎるでしょうか。

 ぼくとしては、年末の紅白歌合戦でVaundyが「お茶の間の3世代」をつなぐようなパフォーマンスを披露してくれたならどんなにすてきなことだろう、と願ってやみません。

□成瀬英樹(なるせ・ひでき)作詞・作曲家。1968年、兵庫県出身。92年、4人組バンド「FOUR TRIPS」結成。97年、TBS系ドラマ「友達の恋人」(瀬戸朝香・桜井幸子主演)の主題歌「WONDER」でデビュー。2006年、AAA「Shalala キボウの歌」で作曲家デビュー。AKB48提供「BINGO!」「ひこうき雲」、前田敦子「君は僕だ」「タイムマシンなんていらない」などがトップ5ヒット。16年、AKB48のシングル「君はメロディー」でオリコン年間チャート2位を記録するミリオンセラーを達成。21年、乃木坂46「全部 夢のまま」を作曲。

次のページへ (4/4) 【動画】2022年はVaundyの1年に…? 最新曲「恋風邪にのせて」
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