Vaundy、父親世代を夢中にさせる革新性と普遍性 “令和ポップス”の魅力を作曲家が分析

作曲家の“you-me”こと成瀬英樹です。今回のコラムでは「昭和生まれの音楽ファン」のみなさんに「令和ポップス」の魅力を、作曲家目線でわかりやすくお伝えします。「新しい音楽も聴きたいが、何から手をつけたものか」とおっしゃるあなたにこそ、読んでいただきたい。「令和ポップス」はよく見ると「昭和ポップス」としっかりとつながっています。

作曲家目線で見るVaundyに魅力とは?【写真:写真AC】
作曲家目線で見るVaundyに魅力とは?【写真:写真AC】

作曲家を魅了した革新性、令和・平成・昭和をつなぐ普遍性

 作曲家の“you-me”こと成瀬英樹です。今回のコラムでは「昭和生まれの音楽ファン」のみなさんに「令和ポップス」の魅力を、作曲家目線でわかりやすくお伝えします。「新しい音楽も聴きたいが、何から手をつけたものか」とおっしゃるあなたにこそ、読んでいただきたい。「令和ポップス」はよく見ると「昭和ポップス」としっかりとつながっています。(文=“you-me”成瀬英樹)

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 最近、ぼくが愛聴しているアーティストに「Vaundy」がいます(“ばうんでぃ”と読みます)。ぼくがVaundyの音楽を遅ればせながら知ったのは、昨21年「milet×Aimer×幾田りら」による「おもかげ(produced by Vaundy)」をYouTube「THE FIRST TAKE」で視聴したときでした。

 イントロのキャッチーなフレーズから一気に惹きつけられる多幸感に、サビの「僕らは」「愛で満たしてる」という、真っすぐなメッセージ。それにつながる「本当」という言葉にあてられたメロディーの2音、この2音のセンスにぶっ飛びました。

「Hon-To」という音の響きと、愛のメッセージを補完する意味性を、たった2音で全肯定するこのフレーズ、個人的には平成のミリオンヒット「青春アミーゴ」(修二と彰/05年)のサビの出だしの1音「Si」の素晴らしさに匹敵するとさえ感じてしまいました。

 この令和の名曲を「昭和ポップス」とつなぐキーワードは「シティポップ」であります。この広義で曖昧なジャンル名は、近年やや便利に使われすぎているきらいも感じますが、「おもかげ」に関しては、ぼくの考える「シティポップ」ど真ん中のサウンドです。

 ここではざっくり「16ビートのメジャーセブンスを基調とした曲」がシティポップである、とだけお伝えしておきます。これは山下達郎が在籍した「シュガー・ベイブ」の「Down Town」に端を発するもの、と言い切らせていただくこともお許しください(昭和世代には「EPO」のカバーバージョンがよりポピュラーでしょうか。伝説のテレビ番組「オレたちひょうきん族」のテーマソングとして知られています)。

次のページへ (2/4) スガシカオのブレーク前夜に重なるVaundyの“希望成分と絶望感”のバランス
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