ウクライナの凄惨映像、子どもへの影響は 専門家「繰り返し見過ぎないことが大事」

生かせる東日本大震災の教訓

――子どもの状況や反応によって親も対応を変えていくことが大切ですね。

「映像を見た全ての子どもが強い反応を示したり、影響を受けるわけでもないというのもあります。大人と同様、今世の中で何が起こっているかということは知る権利もありますし、知っておいたほうがいいことでもあるので、報道やニュースを一切見せないという極端な対応は考えものです」

――過去には9・11の同時多発テロや東日本大震災でも特定の映像が議論を呼びました。教訓として生かせることはあるでしょうか。

「たとえば、津波の映像は繰り返し見ることで、子どももそうなんですけど、大人も同じように非常に気分が重くなってしまうことがありました。当時、多くの方にそういう反応が出たんですよね。メディアを見るときに、ネガティブな気分になる“刺激”になるものは自分から消しましょうということは、メンタルヘルスの専門家たちから発信をしていました。また、当時はなんともなかったんだけど、1年ぐらいたったときに追悼番組を見て子どもが涙を流し始めて、すごく驚いてしまったという相談を受けたことがありました。その場で反応がなかったとしても、時間がたったときに情緒的な反応が出ることがあります。そのときに、今、どういうことを感じてるのかというのを話題にしていただくのもよいかと思います」

□池田美樹(いけだ・みき)1969年、東京生まれ。東京都公立小・中学校スクールカウンセラー、武蔵野赤十字病院精神科臨床心理係長を経て、桜美林大学准教授(臨床心理学)。公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士。赤十字こころのケア、DPAT(災害派遣精神医療チーム)事務局支援として、東日本大震災、熊本地震災害等、多数の災害支援活動に従事する。DPATインストラクター、DPAT先遣隊員、セーブ・ザ・チルドレンジャパン「子どものための心理的応急処置」指導者。日本公認心理師協会災害支援委員会委員長、日本臨床心理士会災害支援PT副代表。著書(共著)に「災害看護 心得ておきたい基本的な知識」(南山堂)、「こころに寄り添う災害支援」(金剛出版)など。

○…一般社団法人「日本トラウマティック・ストレス学会」では3月3日、公式サイト上に「惨事報道の視聴とメンタルヘルス」と題した情報を掲載。惨事報道に対する心への負担を最小限にし、心の健康を保つための方法を大人・子ども別に紹介している。また、公益社団法人「セーブ・ザ・チルドレンジャパン」は3月1日、「専門家がすすめる、子どもと戦争について話すときの5つのポイント」とのテーマで記事を掲載。親が子どもに適切なコミュニケーションを取ることの大切さを訴えている。

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