翌13年も前田敦子さんに「タイムマシンなんていらない」を歌ってもらうも、こちらも惜しくも最高位は2位。「別に2位でもいいからカミングアウトすればいいじゃないか」と思わなくもなかったが、せっかくここまで引っ張ったのだ、発表は1位を獲ってからと再奮起し、日々作曲に勤しんだ。

　その甲斐あって、16年にAKB48「君はメロディー」でオリコン首位を獲得することができ、「成瀬英樹＝you-me」であることをカミングアウトできたのだ。

「君は僕だ」がヒットし「you-me」という作曲家の名が世に出たとき、このペンネームの正体にまつわる推測を目にした。さまざまな仮説や推測を楽しみながら拝見した。と同時に早く自分が作曲したことを世に広めたい気持ちもあった。

　いつの日か「デレク・ターナー」氏も筆者のようにカミングアウトをするのか、それともずっと秘密のままか。いやしかし、本名そのものが「デレク・ターナー」である可能性もやはり捨てきれないかもしれない。

　この文章を読んでいるデレク・ターナーさんへ。あなたの正体がどこのどなたであろうとも、あなたの作品が素晴らしいことには変わりはありません。これからも素敵な作品を作り続け、我々を楽しませて下さい。

□成瀬英樹（なるせ・ひでき）作詞・作曲家。1968年、兵庫県出身。92年、4人組バンド「FOUR TRIPS」結成。97年、TBS系ドラマ「友達の恋人」（瀬戸朝香・桜井幸子主演）の主題歌「WONDER」でデビュー。2006年、AAA「Shalala キボウの歌」で作曲家デビュー。AKB48提供「BINGO!」「ひこうき雲」、前田敦子「君は僕だ」「タイムマシンなんていらない」などがトップ5ヒット。16年、AKB48のシングル「君はメロディー」でオリコン年間チャート2位を記録するミリオンセラーを達成。21年、乃木坂46「全部 夢のまま」を作曲。

○成瀬英樹公式HP：https://hidekinaruse.com/

○YouTubeチャンネル「成瀬英樹のポップス研Q室」：https://www.youtube.com/channel/UC_RUkkST9KnBykcR9ZhTcpQ