「作り込まれたネタは作らない」 M-1最年長ファイナリスト錦鯉が貫くネタ作りのポリシー

間近に迫ったM-1は「体が動くうちに獲りたい」【写真:山口比佐夫】
間近に迫ったM-1は「体が動くうちに獲りたい」【写真:山口比佐夫】

初の自叙伝に「『終活』じゃないけど、自分の人生を振り返りたかった」

――結成当初は年間60本のネタ作りを続けていたとか。

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渡辺「夏休みの宿題というか、そうやらないと絶対ネタを作らない。年60本っていうと聞こえはいいかもしれないけど、毎回毎回突貫工事で、1日で5本作ったこともある。一つ一つの完成度よりも、とにかく数をこなす。質よりもまずは量というか、どうせやってることはそんな変わらねえだろって」

長谷川「ピカソのやり方ですよね。ピカソも生涯で何十万って数の作品を生み出して、有名なのはそのうちの数十作品ですから」

渡辺「ピカソは締め切り前日に描いたりしねえんだよ!」

――オールド世代的なボケやツッコミも特徴だが、意識するファンの年齢層は。

渡辺「まあ、万人に伝わりやすいネタをやりたいなとは思ってますけど、あんまり世代とかは気にしてないですね。若い子は若いやつが笑かせよとも思ってる。というか、若い子にウケるネタは作ろうと思ってもなかなかできないですよね」

長谷川「そうなんですよ。タピオカとかナタデココとか、はやりものを取り入れようともしたんですけど……」

渡辺「ナタデココは俺ら世代だろ! タピオカもちょっと古いからな!」

長谷川「全部の世代に刺さるネタというか、100人が見て100人ウケるネタってなかなかない。そういうネタが良しとされてることも分かるけど……。例えば、若手のライブとか見に行くとお客さんもその世代で、共感できる世代ネタとかは大爆笑なわけですよ。でも、僕は世代が違うからやっぱりあんまり笑えなかったりする。同じように、焼きそば食べてる人に『伊賀野カバ丸かよ!』って言っても、若い人はキョトンとしてるなんてこともあるわけで」

渡辺「『伊賀野カバ丸』は50代でも古いって言われるよ!」

――あらためて今回初の自叙伝を出版してみて。

長谷川「僕はめちゃくちゃうれしかった。去年のM-1後の会見で『人生大逆転って本を出したい』って言って、長年の夢がかなった感じ。ずっと自分の人生の年表を作りたかった。『終活』じゃないですけど、自分の人生を振り返りたかったんですよね」

渡辺「終活って……雅紀さん、もう終活入ってたのかよ(笑)。っていうか、俺は雅紀さんのエンディングノートの片棒を担がされてたのかよ」

――M-1に向けての意気込みを。

長谷川「僕らが出られるラストイヤーは、僕が56歳のとき。それまでに体のこともあって、まだ元気なうちに決めたいなという思いはある。先日もネタ中に腰を痛めて、この先はもういつどうなるか分からない。『この体が動くうちにM-1を獲りたい』ってコメントをする人は、今回の決勝には僕ら以外いないでしょうね」

渡辺「僕らもいい年齢だけど、この先の人生の中では『今日の自分が一番若い』からね」

■長谷川雅紀(はせがわ・まさのり) 1971年7月30日生まれ、北海道札幌市出身。お笑いコンビ「錦鯉」のボケ担当。北海道の専門学校を中退後、1994年にコンビ「まさまさきのり」(その後『マッサジル』に改名)でデビュー。解散後、ピン芸人「のりのりまさのり」を経て、2012年に渡辺と「錦鯉」を結成。

■渡辺隆(わたなべ・たかし) 1978年4月15日生まれ、東京都江戸川区出身。お笑いコンビ「錦鯉」のツッコミ担当。大学中退後、2001年にコンビ「ガスマスク」でデビュー。解散後、コンビ「桜前線」を経て2012年に長谷川と「錦鯉」を結成。

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