ASAYANと虹プロから見る時代の変化 テレ東Pが語るオーディション番組ブームの背景

テレ東が世界に先駆けて開発した番組「ASAYAN」について語る伊藤隆行プロデューサー【写真:(C)テレビ東京】
テレ東が世界に先駆けて開発した番組「ASAYAN」について語る伊藤隆行プロデューサー【写真:(C)テレビ東京】

オーディション番組の増加「虹プロの成功が大きい。非常にインパクトがある成功例」

――当時、どんな苦労がありましたか?

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「誰がオーディションに合格したのか、という情報が外部に漏れるのを防ぐため放送の2日ぐらい前に収録していました。ギリギリ間に合うよう編集作業に入ったんですが、編集がついに間に合わないことがあって……。サブのテープを使って実質生放送という形で何とか乗り切りました。放送後、軽い打ち上げをしましたが、今までの人生で1回切りですね。記憶がなくなったのは。起きたら朝になっていて後輩からは『気絶してましたよ』と言われました。何日も寝てなかったのもあるんですが(笑)」

――「虹プロジェクト」(日本テレビ)以降、日本版「Produce 101」(TBS)、SKY-HI(スカイハイ)主宰の「THE FIRST」(日本テレビ)、「Who is Princess?」(同)などのオーディション番組がネット配信を巻き込んで続々と放送されています。ブームの背景には何があるのでしょうか?

「やはり虹プロの成功が大きいと見ています。非常に大きくてインパクトがある成功例になった。J・Y・Parkプロデューサーの存在も大きかったですし、非常にスタンダードなオーディション番組の作り方をしていて視聴者の心を打った。昔は教える側をオーディション参加者が乗り越えていく姿を撮っていましたが、虹プロは教える側のプロデューサーが参加者をほめて評価し若い人の力を引き出していました。私が虹プロの中で見たものは時代が変わった、ということ。頭ごなしに叱ったりせず夢のかなえ方を言葉としてしっかり教えていたし、若い人を進化させる言葉を紡ぎ出していました。プロデュースする側の人間味も伝わってきて学びや気付きにつながりますし、社会の組織の中でリーダーはどうあるべきか、そんな共感性のあるリーダー像を汎用化した姿を見せられた気がしています。そういう現象が人々の共感を得られたことにどの放送局もどのプラットフォーマーも気付いたのは紛れもない事実だと思います」

「ASAYAN」は怒られて泣く、「虹プロ」は褒められて泣く

――J・Y・Park氏にはどういう印象を持っていますか?

「以前なら大概はオーディション参加者に頭ごなしで『何だ、これは!』って怒るところをJ・Y・Park氏は評価するところから入る。眼光が鋭くて次に何を言うんだろうってみんな固唾(かたず)を飲んでいると、褒める言葉が出てきて、次いで指摘しておかないといけない言葉が出てくる。初めて評価され褒められて涙を流すオーディション参加者の姿に視聴者は共感したんだと思います」

――「ASAYAN」のときはどうでしたか?

「当然、デビューというゴールを目指さなくてはいけないので、質感としては怒られて泣く、といった責めの涙の方が多かった気がします。それが強ければ強いほどその後のアウトプットも大きかった。しかし、時代は変わり1990年代中盤から2000年代終盤までに生まれたZ世代は評価されることで泣く。ひとくくりにはしたくないですが、そういう印象があります。褒められて『やっていいんだ』と自信が付く。東京オリンピック・パラリンピックもそうでしたが、自由な発想で自分たちのやり方で世界に羽ばたいて行く若い人たちの背中を押してあげる、応援する、責めるのではなく評価する、そんな番組作りが求められていると思いますね。虹プロという現象はそれを分かりやすく伝えた。クリエーティブの現場ではベテランにはベテランの味もありますが、ベテランも若者もお互いがリスペクトして壁を取り払っていくことが大切です。『~夢のオーディションバラエティー~Dreamer Z』という番組が生まれた背景にもそれがあります。番組タイトルに『Z』の文字が入っているのは“Z世代”への思いが込められているからです」

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