コロナ禍は「虚無が怖かった」 公演中止の連続で女性伝統芸能者・市川櫻香が抱いた不安

5日に愛知・名古屋能楽堂にて公演「古典の日」が開催される。同公演に出演するのが、伝統芸能者・市川櫻香。「名古屋むすめ歌舞伎」を立ち上げ、歌舞伎宗家である成田屋の故・十二代目市川團十郎さんから「市川姓」を認められた女性だ。今回の公演は、11月1日が「古典の日」と制定されていることを広く周知し、伝統芸能や古典について伝えていくためのイベント。「古典の日」は2008年11月1日に、「源氏物語千年紀」を言祝いで制定された。公演では子どもおどり「お乳や乳母(おちやめのと)」、むすめ歌舞伎「哥宗論(うたしゅうろん)」、舞踊「七福神」の3演目を上演。今回はコロナ禍以降初めて観客を迎えての公演となる。櫻香へのインタビュー最後は、コロナ禍で伝統芸能と向き合う心境や思いを聞いた。

「古典の日」に出演する市川櫻香の舞踊「七福神」【写真提供:日本の伝統文化をつなぐ実行委員会】
「古典の日」に出演する市川櫻香の舞踊「七福神」【写真提供:日本の伝統文化をつなぐ実行委員会】

「虚無が来るのが怖かった」コロナ禍でも燃え尽きなかった“何かを生み出す力”

 5日に愛知・名古屋能楽堂にて公演「古典の日」が開催される。同公演に出演するのが、伝統芸能者・市川櫻香。「名古屋むすめ歌舞伎」を立ち上げ、歌舞伎宗家である成田屋の故・十二代目市川團十郎さんから「市川姓」を認められた女性だ。今回の公演は、11月1日が「古典の日」と制定されていることを広く周知し、伝統芸能や古典について伝えていくためのイベント。「古典の日」は2008年11月1日に、「源氏物語千年紀」を言祝いで制定された。公演では子どもおどり「お乳や乳母(おちやめのと)」、むすめ歌舞伎「哥宗論(うたしゅうろん)」、舞踊「七福神」の3演目を上演。今回はコロナ禍以降初めて観客を迎えての公演となる。櫻香へのインタビュー最後は、コロナ禍で伝統芸能と向き合う心境や思いを聞いた。(取材・構成=コティマム)

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――「古典の日」のトリの演目「七福神」は、コロナ禍でも前向きになれるような演出がされていますね。

「にぎやかで華やかな舞踊です。実は『七福神』の最後は名古屋東照宮さまに来ていただいて、客席の皆さまに御祈祷(きとう)していただく趣向にしています。『お客さまと一緒にコロナ禍をなんとか逃れていきましょう』という思いです」

――2020年はコロナの影響でエンタメ・芸能文化業界は大きな打撃を受けました。櫻香さんにはどのような影響がありましたか?

「2020年は大きなイベントや演目はやめて、動画配信のみにしていました」

――イベントが軒並み中止になる中、どのように過ごされていましたか?

「『虚無』が来るのが怖かったです。何もしたくない、何も考えたくない状態になってしまうのが怖かった。こんな風に過ごしたことは生まれて初めてでしたから。ほんの少し休むだけで体のコンディションや感覚も変わります。『創造的なことができるだろうか。創造したとしてもすぐに体が動くだろうか』『活力をもって、体が燃えるように動いていけるだろうか』と、エンジンがかかりませんでした。もちろんお稽古はしていましたが、途中から虚無に襲いかかられ、『何かを動かしていく』という活力を忘れかけたときもありました。反省しながらジタバタして。でも、このコロナ禍にパッと歌詞を書いた曲があります。そのときの曲が長唄になって、今度お披露目をします」

――コロナ禍で生まれた長唄ですか!

「誰かに頼まれて書いたわけでもなく、『何かしよう。何かしなきゃ』という感覚が書かせました。こういうときに芸術をやると、いいものができる。自分の感受性ってすごく大事ですね。満足いっていないときでも、振り絞れば『何かを生み出す力』は出てくるのです。『満足いっていない時こそ自分をキープしないといけない』と、コロナ禍で感じました」

――「古典の日」は、コロナ禍初のお客さまを入れての公演です。久々のお客さまとの時間ですね。

「お客さまも演劇や文化芸能を待ち望まれていたと伝わってきます。チケット申し込みの欄に『おめでとうございます』と書いてくださる人もいました。コロナ禍であっても、こういったことは絶やさないようにしたい。『古典の日』で日本の伝統的なものや古典に触れて、身近に感じていただきたい。ここからまた、伝統芸能や日本文化に興味持つ人を増やしていきたいです」

(おわり)

□市川櫻香(いちかわ・おうか)家業が伝統芸能の普及と邦楽の師匠であり、四代目に生まれる。1983年、女性芸能者で歌舞伎を行う「名古屋むすめ歌舞伎」を設立。故・十二代目市川團十郎の指導を受け、92年、市川宗家より市川性を許された。02年、演奏家・役者ともに女性による「むすめ歌舞伎」のヨーロッパ6都市8公演を敢行。團十郎の後押しにて07年「第一回櫻香の会」を開催。「第二回櫻香の会」では團十郎脚本「黒谷」で共演している。名古屋市芸術奨励賞、日本演劇協会賞、サントリー地域文化賞などを受賞。伝統芸能の表現者である一方、「日本の伝統文化をつなぐ実行委員会」のプロデュースに携わり、次世代芸能者の育成にも力を注ぐ。

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□公演情報
「古典の日」
日時:2021年12月5日(日)14時開演
場所:名古屋能楽堂(愛知県名古屋市中区三の丸1-1-1)
チケット:全席自由2800円
主催:日本の伝統文化をつなぐ実行委員会
お問い合わせ
メール:mkabuki2@gmail.com
FAX:052-323-4575

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