RIZINが複数の東京五輪候補との交渉認める メダリスト×元少年院が実現か

限られた選手がRIZINで成功をつかむ
限られた選手がRIZINで成功をつかむ

東京五輪からRIZINに転向するアマチュア選手は?

ーーもちろん名前は言えないでしょうけど、いま五輪関係の選手とは何人くらい接触していますか?

榊原「多いですよ。我々からのアプローチでテーブルに着く場合もそうですし、五輪の選考には漏れたけど、こっちの世界に興味を持っている選手からの売り込みもある。思った以上にいると思います。柔道、レスリングの各階級を中心に、それ以外の競技からも話はあります。やっぱり五輪に関わるレベルの選手だから、ジャンルを問わず、ベースのポテンシャルはズバ抜けていますし、格闘技に転向するとしたら、みなさんが思っている以上に飲み込みが早いと思いますね」

ーー東京五輪が終わってみないとわからないでしょうけど、何人くらい転向組がいると思いますか?

榊原「いや、あんまり来てもらってもね(苦笑)。それとメダルがあるからと言って成功するわけじゃないことは過去の例を見てもわかっていることじゃないですか」

ーー確かに。

榊原「プロの世界ってそんなもんじゃない。心技体はもちろん、ルックス、トーク力、発信力、色気みたいなものを含め、総合的に必要になるから。結果だけが重視されるアマチュアとは違うと思うんですよね。それを念頭に入れて考えると、RIZINで活躍できるかどうかっていう選手の人数は、相当絞られると思います。数名じゃないかな」

ーー数名!

榊原「とはいえ、総合的なポテンシャルを持ったアスリートを五輪の終わった後に口説いても遅いので、五輪前から積極的にコミュニケーションを取って、話を進めていけたらいいなと思っています」

ーーRIZINには各階級がありますけど、どの辺りに加わって来そうですか?

榊原「RIZINは一番熱い階級にバンタム級(61キロ)があって、朝倉未来がいるフェザー級(66キロ)やその上のライト級(70キロ)、それ以外だとライトヘビー級(93キロ)やヘビー級とか。とくに柔道には重量級のいい選手がたくさんいます。各階級、1人しか代表に選ばれないのだとしたら大半は出られないわけです。次のパリ五輪を目指す選手もいると思いますけど、東京五輪を最後にアマチュアに区切りをつける選手も少なくないんです」

ーーとなると、メダリスト×元少年院(朝倉未来)という対決もあり得る?

榊原「あると思います。とにかくMMAの競技者だけで小さくまとまりたくないんです。ただ、最近はMMAという競技が良い意味でも悪い意味でも成熟してしまって、他の競技の選手が通用しづらくなっている。でも、そこに挑みたいんですよね」

ーー実際、石井慧選手は現役の柔道重量級の金メダリスト(2008年の北京五輪)としてMMAを始めたものの、世界の壁の厚さに苦しんでいます。

榊原「例えば秋山成勲のように、柔道出身でありながら打撃に対する適応力の高い選手もいた。だからベースにある競技で世界のトップレベルにあるというのは一つのアドバンテージ。そこからどう上積みしていくのか。そこは努力になってくる。(1992バルセロナ五輪金メダリストの)吉田秀彦なんてほとんど道着を着てリングに立ち続けていた。オリンピアンだからこそ、チャレンジしがいのある競技がMMAだと思いますね」

ーー第1回UFC(93年11月12日、米国コロラド州デンバー)では片手だけボクシンググローブを着けた選手もいました。今後のRIZINでは違和感のあるルールの試合はありそうですか?

榊原「マッチアップ次第によっては吉田×ホイス・グレイシー戦(2002年8月28日、国立競技場)のように顔面だけ打撃を認めないMMAルール戦があってもいいと思っています。もちろん厳格なルール運用は大前提として必要ですよ。ただ、まずルールありきではなく、ファンが観たいものがあってそこにルールを合わせていく決闘があっても良いと思います」
 
ーー今年のグランプリ開催はどうなりますか?

榊原「どの階級でいくのかを決めるのはもう少し先ですね。朝倉未来中心でフェザー級で行くのかというのも含め、まだ決めかねています。軸になる選手がいない階級でやるのは難しいですし、一方で充実しているバンタム級は堀口恭司や佐々木憂流迦の本格復帰も含め、満を持して来年でもいいと思うし、そこにオリンピアンが入ってくるとさらに群雄割拠してくるでしょうね」

ーー年頭の会見では、今年の大晦日の目標は平均視聴率10%だと話されていました。

榊原「それを目標の一つにはしたいですね。せっかく格闘技が世間と勝負できる機会が年に一度はあるわけだから、今年こそは。こんなものじゃないはずです。もしも2年連続で低視聴率を続けたら、来年こそは放送がなくなってしまうことにもなりかねない。だからこそ、何かしら知恵を絞っていろんな挑戦をしていきたいですね」

ーー例えばどういうアイデアでしょうか?

榊原「やっぱりギャビ・ガルシア×神取忍とか、今までの流れにあるものは可能性があると思います。一方で、これまでの流れとは全く違う驚天動地なことを仕掛けていくことは、常に頭の片隅に置いていますよ」

ーーそういったマッチメイクを総称して「魔球」と呼ばれることがありますね。

榊原「戦略的に投げたいですよね、『魔球』は」

ーー戦略的に?

榊原「だけど『魔球』を投げるためには今からその題材になるようなことを知恵を絞りながら、いろんな角度でアプローチしないと。まずは今からそのためのネタを仕込みたいと思います」

□榊原信行(さかきばら・のぶゆき)1963年、愛知県半田市出身。大学卒業後、東海テレビ事業株式会社に在職中に総合格闘技イベント「PRIDE」の立ち上げに関わる。2003年にPRIDEを主催するドリームステージエンターテインメントの代表に就任。07年春に権利を売却。15年の年末にRIZINを立ち上げ、CEOとして日本格闘技界を牽引している。

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