「100年に1人の逸材」をほうふつ 「100年に1人の貴公子」がDDT躍進の切り札【連載vol.56】

「100年に1人の逸材」棚橋弘至をほうふつさせるファンサービス

 ある日の会場。各選手がサイン会に臨んでいた。上野の前には、ひときわ長い列が出来上がっていた。一人一人に笑顔で丁寧に対応している。「あ、○○さん、ありがとう」「××さん、あの試合どうだった?」…ファンの顔と名前を憶えているようだ。そう、まるで「100年に1人の逸材」棚橋弘至のようだった。

 新日本プロレスが厳しい時代に、棚橋は熱心に草の根運動に取り組んでいた。ファン一人一人を大切にし、また会場に足を運んでもらおうと必死だった。棚橋の活動が新日本プロレス復興の一因だったことは、誰も否定できないはず。

 また、こんな話もある。昔、ある団体でサインが欲しくて出待ちをしていたファンが、お目当ての選手に冷たく断られてしまった。それを見ていたのか、他の選手が優しくペンを走らせた。そのファンは感激し、その選手のファンクラブの会長を務め、本まで出版した。その選手は引退したが、今でも40年以上、交流があるという。

 ファンを大切にすることは何よりも大事。誰に教えられたわけではないが、上野は心のこもったファンサービスを自然にしている。いわば「100年に1人の貴公子」だ。

 8・21富士通スタジアム決戦の先も走り続ける。「新日本プロレスに追いつけ、追い越せ」をうたうDDTそしてサイバーファイトの貴重な切り札が上野勇希。間違いない。

次のページへ (3/3) 【写真】調印式で佐々木大輔に踏みにじられた上野勇希だが気持ちを切り替えた
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