仲代達矢の“秘蔵っ子”井手麻渡が映画初主演で見せた覚悟

撮影を振り返る井手【写真:荒川祐史】
撮影を振り返る井手【写真:荒川祐史】

仲代との共演シーン「僕にとって、一番緊張する人かもしれない」

――共演シーンは緊張したそうですね。

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「緊張しましたね。でも、知らない人たちではないので……。あとは演技で引っ張っていただきました。近いから余計に緊張してしまう部分もあるなと思います。僕にとって、一番緊張する人かもしれないです」

――映画と演劇のアプローチには表現の仕方に違いはありましたか?

「それも苦労した点でした。やること自体にはそんなに差はないと思うんですが、作る過程には違いがあります。舞台はけいこして、本番になったら、お客様に見せる。スタートから終わりまで止まることなく駆け抜けることができます。映画の場合は、一つのシーンを何回も繰り返しますよね。演技の精度を上げて、作っていく感じです。今どういう作業をしていて、何が求められているのかを的確に状況を判断していく能力が求められます。舞台で言えば、『今日はこのシーンのけいこをします』という感覚に近いかもしれません。その作業が演劇とは違うかな、と思いました」

『ある町の高い煙突』 ©2019 Kムーブ
『ある町の高い煙突』 ©2019 Kムーブ

――撮影で印象に残っていることは?

「現場の真ん中で1カ月過ごすと、思った以上に手作りなんだなっていうことを感じました。スタッフ1人1人、地元のエキストラさん、ボランティアさん。誰1人が欠けても同じにはならない。本当にチームプレーなんだ、と。見る側であったら、映るところだけを見てしまいがちなんですけれども、実際に制作現場に行くと、見えないところにこれだけの人が動いていて、苦労があるということを感じました。一つ一つがとても貴重な経験です。和服姿で、山の中での撮影することが多かったので、ヤブ蚊にしこたま刺されて、足がパンパンに膨れました(笑)」

――そもそも俳優を志したのは?

「父は黒澤映画が大好きで、僕も子供の頃から観ていました。19歳のときに『お芝居をやってみたい』と言ったら、無名塾を勧められ、受けたんです。後から聞くと、父は無名塾を落ちていたみたいで……。喜んだのと同時に、なんかちょっと嫉妬したみたいですよ(笑)」

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