藤井聡太2冠王手! 叡王戦第3局は豊島将之2冠の激しい攻めに動じず 真田圭一八段解説

真田圭一八段
真田圭一八段

週1局を上回る対局をしている2人ならではの境地に

 ここは他にもさまざまな手、考え方ができた局面だ。つまり豊島2冠は展開を選ぶことができた。その中で、おそらくは最も激しいと思われる順を選んだ。この背景には、両対局者の現状が多分に反映されていると感じられた。叡王戦と王位戦、2つのタイトル戦を同時進行で戦い、特に最近は週に1局を上回るほどのペースで2人は戦っている。そうなると、具体的な指し手とは別に、相手の思考回路を感じとる距離感がどんどん近くなって、そのことが将棋の組み立て方に影響するようになる。

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 そんな中で、この将棋に関しては、豊島2冠は激しく攻めたい、または激しく攻めなければダメだというような、なんらかの感性が働いたのではないだろうか。実際の展開としては、その後85手目▲7七桂と進んだ局面は、藤井2冠がよさそうな局面になったと思う。だが、その直後の△6六香。この手が豊島2冠の指したかった手ではないだろうか。

 ここは、第一感は△6六桂と、香ではなく桂を打つ手。だがそれではよくならない。△6六香は、藤井玉が身動きのできなくなる手で、終盤の手としては厳しい手だが、持ち駒に乏しい現段階ではそれほどでもない。よって狙いとしては、藤井玉にプレッシャーをかけて、その状況でどう対応するかを見てみたい、そんな考えがあったのではないか。

プレッシャーに動じなかった藤井2冠が勝ち切った

 ここからの藤井2冠の指し回しは素晴らしかった。安全に指すならどこかで▲6六角と香を外してしまえばよい。だが必要以上に安全主義に陥ることなく、87手目攻めの▲3三歩、91手目後の▲6八歩を可能にする読みの入った▲6三歩成、105手目落ち着いて盤上の駒を活用する▲9六銀、と硬軟自在の指し回し。自玉が頭金一発で詰んでしまう形ながら、全く心理的負担や動揺を感じさせない指し方で勝ち切ってしまった。

 玉を薄くしてプレッシャーをかけても効果は無いなと、豊島2冠も舌を巻いたのではないか。安定した強さを発揮して勝ち切った藤井2冠。これで叡王奪取に王手となった。どんどん隙がなくなっていく印象で、果たして次局勝って3冠王を決めてしまうのか。ますます目が離せなくなってきた。

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