藤井聡太2冠王手! 叡王戦第3局は豊島将之2冠の激しい攻めに動じず 真田圭一八段解説

豊島将之叡王(竜王=31)に藤井聡太2冠(王位、棋聖=19)が挑戦する第6期叡王戦五番勝負第3局が9日、料亭「か茂免(かもめ)」(名古屋市)で行われ、先手の藤井2冠が121手で勝ち2勝1敗とし、叡王奪取に王手をかけた。中盤に一気に激しい戦いになった第3局を振り返る。

藤井聡太2冠【写真:ENCOUNT編集部】
藤井聡太2冠【写真:ENCOUNT編集部】

藤井2冠は得意の角換わり相腰掛け銀を選択

 豊島将之叡王(竜王=31)に藤井聡太2冠(王位、棋聖=19)が挑戦する第6期叡王戦五番勝負第3局が9日、料亭「か茂免(かもめ)」(名古屋市)で行われ、先手の藤井2冠が121手で勝ち2勝1敗とし、叡王奪取に王手をかけた。中盤に一気に激しい戦いになった第3局を振り返る。

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 1勝1敗で迎えた叡王戦第3局。勝った方がタイトルに王手がかかる、重要な1戦だ。藤井2冠の先手で角換わり相腰掛け銀に。いよいよというべきか、ついにこの形になった。藤井2冠にとって、角換わり相腰掛け銀は一番の得意戦法。デビュー以来、基本的にその位置付けは変わらない。

 この戦法の特徴として、確かな終盤力が絶対に必要。また事前の研究も大事だ。形勢を損ねると玉型が薄く粘りが利かない。中盤のねじり合いも難解な展開になりやすく、力量が求められる。要するに高い総合力がなければ指しこなせない戦法なのだ。藤井2冠はデビュー当時からこの戦法で勝ちまくっていたわけだから、その高い潜在能力を証明していたと言える。

 もう一つだけ非凡な点を挙げるとすれば、後手を持ってやや受け身となる展開になったとしても、対応を間違えない強さが備わっていたことだ。将棋は本質的には受けの難しいゲームで、それはプロでも変わらない。玉の薄い将棋でも勝ち切れる強さまで持ち合わせているのだから、高い勝率も当然と言える。

中盤は渋い展開から一気に激しい戦いに

 さて、対局に戻ろう。角換わり相腰掛け銀の、定跡最前線の形になった。まずは豊島2冠が研究手を見せる。58手目△8五歩と継ぎ歩を入れてから△2二金と手を戻した。これで前例を離れ未知の局面に。

 その後、65手目▲8四角と打った手が一つのポイント。この角は敵玉から遠く、意味は敵攻撃陣の牽制(けんせい)で、完全に受けの手だ。さらにその直後、67手目▲6六桂も攻めの銀を後退させる受けに重心を置いた手。持ち駒をどんどん投入して、相手の攻めの手段を奪う指し方だ。

 この辺り、どのような展開を志向するかは大局観が一番問われるところであり、藤井2冠がどのような判断、読みのもとに受け重心の展開を選んだのかが非常に気になる。一方、豊島2冠は相手が持ち駒を使ったことに満足して無理をしない。70手目△3一玉、74手目△5二金と玉を安定させながら間合いを計る。渋い展開になり、長い中盤も予測されたが、77手▲9五歩を境に、局面は予想外に激しくなった。以下△6五歩▲7四桂△8五桂と、豊島2冠が一気に牙をむいて攻めかかったからだ。

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