復興五輪の“陰”、福島第一原発の今 期間中の取材要請は0件、コロナ禍で受け入れ中止に

東京五輪で3大会ぶりに復活した野球の開幕戦、日本―ドミニカ共和国戦が28日、福島県営あづま球場で行われた。視察に訪れた国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長や大会組織委員会の橋本聖子会長、ソフトバンクの王貞治球団会長らを前に、日本は劇的なサヨナラ勝ちを収めた。復興五輪を掲げながら無観客となった今大会を、地元・福島や海外メディアはどう見たのか。

福島県営あづま球場周辺の様子。五輪ののぼりがはためいていた【写真:ENCOUNT編集部】
福島県営あづま球場周辺の様子。五輪ののぼりがはためいていた【写真:ENCOUNT編集部】

五輪・パラリンピック期間中、海外メディアからの視察や取材の要請は1件もなかった

 東京五輪で3大会ぶりに復活した野球の開幕戦、日本―ドミニカ共和国戦が28日、福島県営あづま球場で行われた。視察に訪れた国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長や大会組織委員会の橋本聖子会長、ソフトバンクの王貞治球団会長らを前に、日本は劇的なサヨナラ勝ちを収めた。復興五輪を掲げながら無観客となった今大会を、地元・福島や海外メディアはどう見たのか。

 試合開始の約2時間前。会場のあづま総合運動公園周辺には多数の警察官やボランティアスタッフが警備にあたっていたものの、一部のメディア関係者を除いて人の姿はほぼなし。閑散とした空気が漂っていた。警備にあたっていたスタッフの一人は「警備体制は県警を挙げて、といった感じですが、近隣の方が散歩がてらのぞきに来るくらい。目立った混乱もありません」と話した。

 タクシー運転手の60代男性は「交通整理のアナウンスもないまま、いきなり通行止めになって、どこまで入っていいかも分からない。五輪の関係者を乗せることもありますが、仲間に聞いても降ろす場所もまちまちです」と困惑の表情。「無観客は寂しいけれど、仮に有観客なら仕事は休もうと思っていた。いろいろなところから来る人を乗せると、いわきに住む孫に会えなくなるから」と、複雑な胸中を口にする。

「復興を見てもらうと言ったって、無観客だったら誰に見てもらうのか。試合はすぐそこでやってるけど、どこか遠い国の出来事のよう。今日も何も変わらない日常の一日です」。球場近くに住む70代の男性は、復興をうたうなら観客を入れてこそだと口にする。

 では、福島第一原発は今どうなっているのか。福島第一原発では現在、構内のほとんどが防護服なしで行き来でき、私服のまま視察に参加することができるほどに除染作業が進んでいる。一方で原子炉建屋内の燃料デブリや燃料の取り出し作業を含めた廃炉作業はまだまだこれからといった状況だ。

 震災の象徴ともいえる福島第一原発について海外メディアからの取材はあったのか。東京電力福島第一原子力発電所の担当者は「東京五輪・パラリンピックに際しまして、準備期間も含め海外メディアからの取材の要請並びに受け入れは1件もありませんでした」と回答。さらに「現在、新型コロナウイルスの感染状況もあり、取材、一般の方の視察も含め、すべての受け入れを中止しております」と語っている。

次のページへ (2/2) 【写真】東京五輪・野球の開幕戦が行われた福島県営あづま球場 周辺警備の実際の様子
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