K-POPはなぜ世界を熱くするのか 著者「10年後も国境や国籍関係なく広がる」

「新しいチャレンジのサイクルが韓国はすごく速い」と語る田中絵里菜さん【写真:(C)MIYU TERASAWA】
「新しいチャレンジのサイクルが韓国はすごく速い」と語る田中絵里菜さん【写真:(C)MIYU TERASAWA】

日本はすし職人 韓国は創作料理店

――韓国ではひとつ大ヒットが出るとそれと似たようなものが次から次へと世に出てきます。

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「日本は著作権など権利を守ろうという思考とか、すし職人のように自分の技術を守りたい、という意識が強いのかもしれません。韓国はわりとオープンでヒット作品が出たらみんなでシェアして楽しもうという意識がある。レシピを共有して次世代ロールを作る創作料理店、韓国の食べ物で例えると“ビビンパ”といったイメージでしょうか。街を歩いていると分かりますが、はやるお店が出ると周囲に同じようなお店がたくさん現れます。お互い真似しあったり、でもその中で切磋琢磨して新しいチャレンジが生まれたり。このサイクルが韓国はすごく速いですね。K-POPについてもそれが言えて、先ほどお話ししたCDのパッケージのデザインについてもお互い“変形”の模倣という共通点から始まって、でも手に取るとそれぞれオリジナリティーがあふれている」

――K-POPは海外進出に熱心で、JYPエンターテインメント所属のNiziUは日本でも成功しました。

「いま日本では『プロデュース101』シリーズや『虹プロジェクト』のようなオーディション番組が増えていますが、それらを紹介するYouTubeの映像に外国語字幕が付いていなかったり、配信サイトが韓国で見られない、といったことが起きています。K-POPのYouTube動画にはたくさんの外国語字幕が設定されています。日本は国内市場が広いので海外に進出する必要性を感じなかったのかもしれませんが、海外ファンを増やそうとするのならそのあたりの整備が急務のように思います」

aespaはゲームとK-POPのいいとこどりで面白い

――BTSとは別にBLACKPINKの世界的人気も相当なものです。

「BLACKPINKはK-POPというより海外タレントのようでグローバル化させるのがすごくうまかった。もちろんK-POPならではのダンスや歌のクオリティーはアピールしつつ、Instagramも個人ごとに立ち上げてフォロワーを増やしています。メンバー4人それぞれが個人としてブランディングされていて、ファッションもセレブチックで売り方がすごくうまいですね」

――SMエンターテイントから昨年11月にデビューした4人組ガールズグループ・aespa(エスパ)の破壊力もすごいですね。同じく4人組のBLACKPINKと比べていかがですか?

「個人的には全然違うのかな、と思っていまして。彼女らがデビューするとき、『SMエンターテインメントがBLACKPINKみたいな新人グループを出そうとしている』という声が出ていましたが、ふたをあけたらSMのカラーが強くて。ゲームキャラクターのような未来型テックウェアだったり、コンセプト、作り込みがすごくてBLACKPINKとは全然かぶっていない。人気ゲーム『League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)』が18年のWorld ChampionshipでK-POPアイドル風の新バーチャルアイドル『K/DA』を発表したのですが、従来のユーザー層以外にも人気が広がりました。こうした前例があるからaespaは面白い。ゲームとK-POPのいいとこどりといった斬新さがあります」

10年後は国境や国籍は関係ないK-POPビジネスが広がる

――K-POPは次から次へと新しいグループがデビューしていますが、将来的に飽きられたりしませんか?

「私がK-POPにハマったのは10年前ですが、10年たってもまったく飽きることがありません。10年前と今ではK-POP自体も全然違いますし、彼らは常に新しいことを見据えてチャレンジしている。ここまで世界的に拡大したコンテンツが急に止まるとは考えにくいですね。NiziUが日本で成功したように、今後、世界各地でK-POPの育成システムを取り入れたNiziUのようなグループが誕生し、国境や国籍は関係ないK-POPビジネスが広がっていくと見ています」

――K-POPによって力を付けた韓国のダンスレッスンスキルやデザイン力も広がっていくのでしょうか?

「まさにそう思います。私自身がそうだったように、K-POPのCDのデザインに魅了されたり、K-POPアイドルのダンスを習うというよりは韓国のダンスレッスン技術そのものを学ぶために韓国に留学するといった人も増えていくのではないでしょうか。さらにデザインについて言うと、日本では実力があって特定のキャリアのある会社や人に仕事が行きますが、韓国はたまたまInstagramを見て素敵なデザインを見つけたら、その人をジャケットデザイナーに起用したり、新しい循環が常に生まれています。業界全体のチャレンジ精神がすごくあるので旬なものが取り入れられやすい。BTSの『LOVE YOURSELF』シリーズやTOMORROW X TOGETHERのアルバム『夢の章(The Dream Chapter)』シリーズが世界3大デザイン賞として知られるiFデザイン賞やレッドドット・デザイン賞を受賞するなどグローバル的に評価されてきて、K-POPアイドルのCDパッケージは必ずしも女の子向けにはなっていない。BTSもアルバム『LOVE YOURSELF』あたりからCDパッケージがすごく洗練されてきて、幅広い年齢層や国籍の人に受け入れられやすいものとして意識されているように思います」

GENTLE MONSTERは日本でめったにみられない破格なデザイン

――ソウルの街中のデザインで最近、気になるものは?

「韓国のサングラスブランド、GENTLE MONSTER(ジェントル モンスター)の店舗です。BLACKPINKのJENNIEとのコラボでも話題になっていて、アメリカ、中国、香港、シンガポールに進出しています。その韓国のお店のコンセプトが美術館のように頻繁に変わるんです。高さ3メートルほどのロボットがいたり、肝心のサングラスがどこにあるのか分かりにくかったり。ビリー・アイリッシュやリアーナなど海外の芸能人にも愛用者の多いサングラスブランドとして人気で、日本ではめったにみられない破格なデザインでかっこいいです」

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