K-POPはなぜ世界を熱くするのか 著者「10年後も国境や国籍関係なく広がる」

K-POPが世界を席巻している。BTSがアメリカのビルボード「HOT100」チャートで1位を立て続けに獲得、さらにBLACKPINK、TWICE、NCTらのYouTubeミュージックビデオ(MV)が軒並み億単位の再生回数を記録するなど、人気は加速している。日本でもJ・Y・Park氏プロデュースのNiziUが社会現象になり、K-POP型オーディションシステムが受容されている。“K-POPに沼る”人々が続出している理由は何か。「K-POPはなぜ世界を熱くするのか」(朝日出版社)の著書である田中絵里菜さんに聞いた。

「K-POPはなぜ世界を熱くするのか」の表紙
「K-POPはなぜ世界を熱くするのか」の表紙

SHINeeのアルバムに衝撃受けて渡韓 デザイナーとして勤務

 K-POPが世界を席巻している。BTSがアメリカのビルボード「HOT100」チャートで1位を立て続けに獲得、さらにBLACKPINK、TWICE、NCTらのYouTubeミュージックビデオ(MV)が軒並み億単位の再生回数を記録するなど、人気は加速している。日本でもJ・Y・Park氏プロデュースのNiziUが社会現象になり、K-POP型オーディションシステムが受容されている。“K-POPに沼る”人々が続出している理由は何か。「K-POPはなぜ世界を熱くするのか」(朝日出版社)の著書である田中絵里菜さんに聞いた。(取材・文=鄭孝俊)

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――K-POPをテーマにした著作はKARAや少女時代が日本デビューした2010年以降、書店にたくさん並ぶようになりましたが、K-POPはいったいどんな人たちが作り上げているのか、いわば“生産現場”に迫った論考はあまり見かけなかったように思います。この本を書くきっかけを教えてください。

「日本でグラフィックデザイナーとして仕事をしているとき、K-POPのクリエイティブに興味を持って東京・新大久保に行き、そこでSHINeeのアルバム『Romeo』のパッケージの洗練されたイメージに衝撃を受けてK-POPにハマりました。初期衝動そのままに15年に韓国に渡り、現地の雑誌社でデザイナーとして働くようになりました。そのうち日本の雑誌社で働いている友人から取材の通訳や撮影のコーディネートを頼まれたり、K-POPアーティストを支える音楽プロダクションの方やボーカルトレーナー、アートディレクター、デザイナー、ミュージックビデオの撮影監督ら裏方の人たちにインタビューする機会が増えてコラムを書いたりしていました。それが出版社の方の目に留まり、声をかけていただきました」

――バイタリティーがすごいですね。韓国語を勉強しながら仕事もしていたんですね。

「韓国に渡って最初の9か月間、弘益(ホンイク)大学の語学堂に通いながら仕事をしていました。デザインという点では、K-POP関連のグッズの完成度は高いと思います。日本では見かけないデザインだな、という驚きがありましたね。例えばCDのパッケージを見ても、missAの『Bad but Good』は規格外の三角形、SUPER JUNIORの『Mr.Simple』は30センチ四方という巨大なもの、BIGBANGの『ALIVE』はだんだん錆(さ)びていく鉄の容器、といったように定型のCDとは違う面白さがあって、チャレンジ精神が感じられます。またSHINeeの『Romeo』のCDに封入されていたブックレットは芸術性を突きつめています。グッズとしてCDの価値を高め、購買意欲をそそるための創意工夫や業界全体での切磋琢磨、デザインに対する探究心が売り上げアップの要因になっていると感じています」

BTS「Butter」は高齢層も入りやすい音楽的工夫がある

――K-POPというと、最近はBTSにハマったという人が多いように思います。

「彼らはあっという間にグローバルスターになりましたね。韓国では最初は若年層向けの音楽だったように思いますが、最近はグローバルを意識した立ち居振る舞い、切り替え、匙(さじ)加減が上手で、国籍や世代を問わず人気を集めるようになりました。K-POPは聴かないと言っていた高齢層も入りやすい音楽的工夫がなされていて、K-POPの間口を広げることに成功しました」

――確かに、「私もARMY(BTSのファン)です」とカミングアウトする中高年をよく見かけます。

「彼らの楽曲にはすべての世代に受け入れられる楽しさがありますね。音楽ライターのまつもとたくおさんからおうかがいしたのですが、最新曲『Butter』は上の世代が懐かしくなるドラムの音が入っている。わざと古い楽器の音を入れつつも、若い人も楽しめる。バランスがうまく考えられています。『Butter』が公開された瞬間、あるファンがYouTubeに再生回数のカウンターを立ち上げているのを見つけました。YouTube、iTunes、Spotifyの再生回数をリアルタイムで視覚化するチャンネル。BTSを1位にしようという熱意と執念を感じました。私たちの力でスターを作っていこうという力がすごく表れていました」

――こういったファンダムの行動には韓国の文化が影響していると思いますか?

「はい。韓国ならではだと思いますね。日本の年末の音楽賞は審査員が決めていますが、韓国は音楽番組が週6本あって、音源点数やファン投票で毎回分かりやすく1位を決めています。韓国ではこうした応援文化がなじんでいて、それが海外のファンにも伝播していったんだと思います。こうした熱心なファンダムの存在が、K-POPの世界的人気を生んだ原動力になっていると思います」

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