腸内細菌に魅せられたサッカー選手 元浦和レッズ・鈴木啓太が臨む経営者としての挑戦

現役時代と変わらぬ情熱を腸内細菌に傾ける【写真:ENCOUNT編集部】
現役時代と変わらぬ情熱を腸内細菌に傾ける【写真:ENCOUNT編集部】

検体数は世界最多の700人以上、「ウンチください」と言ってギョッとされたことも

 現役時代からの人脈を生かし、創業当初から資金調達に奔走。アスリートの便の検体も自ら集めて回り、その数は今や世界中の研究機関でも最多となる700を超える。ラグビー日本代表の松島幸太朗や現プロ野球ヤクルトの嶋基宏など、各分野の一流選手からの検体も数多く寄せられる。

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「『ウンチください』と言われたら誰だってギョッとしますよね。研究の意図が理解されるまでは大変でした。検定キットを送ってもらったり、ときにはラボでフレッシュなものを取らせていただくこともある。そのかいあって、やっとアスリート特有の腸内細菌の傾向が分かってきました」

 鈴木氏の仮説通り、アスリートの腸内には免疫機能をコントロールする酪酸菌が通常の人の2倍近くおり、また、菌の多様性が高いことも判明。競技ごとの傾向もあり、便からどの競技のアスリートか割り出すシステムも8割近い正答率を出すまでに研究が進んでいるという。現在は腸内環境を整えるサプリメントの開発などのフードテック分野が主な事業だが、将来的には人々に行動変容を与えるようなヘルスケア領域への進出を目指す。

「人の行動は目的がないと変わらない。僕がいくら腸が大切だと訴えても、例えばファストフードしか食べないという人もいますよね。そういう健康に無関心な人たちも自然と腸を大事にするような、そうしなきゃいけないと感じるようなところまで持っていきたい。今はまだ詳しくは言えませんが、例えば便の匂いセンサーの開発だったり、取るべき食材が見えるようなリコメンドだったり。アスリートのコンディションに腸が大切というのは分かりやすいが、本当は誰にとっても腸は大切なんです。自分が幼い頃、母に教え込まされたように、誰もがいつの間にか腸を大事にしているような仕組みを作りたい」

 経営者としてはまだまだ駆け出し。ピッチを駆けていたころの情熱そのままに、新しい世界でも挑戦を続ける。

■鈴木啓太(すずき・けいた)1981年7月4日、静岡県出身。高校を卒業後、2000年にJリーグの浦和レッドダイヤモンズ(浦和レッズ)に入団。攻守を支えるボランチとして活躍。06年のJリーグ優勝、07年のAFCチャンピオンズリーグ制覇などのタイトル獲得に貢献。日本代表では国際Aマッチ通算28試合に出場。イビチャ・オシム監督が指揮を執った期間、唯一全試合にスタメンで出場。15年シーズンの現役引退まで浦和レッズ一筋を貫いた。引退後は実業家に転身、腸内細菌を研究するスタートアップ企業AuB(オーブ)株式会社の代表取締役を務める。

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