【週末は女子プロレス #2】長与千種が語る「GAEAISM」大成功の舞台裏 自団体の敗北に悲観なしのワケ

「悔しくて過呼吸になるくらい泣きじゃくった」

 海外のドキュメンタリー映画でも紹介された過酷なガイア式トレーニングがいまの時代に通用するとは思えない。が、長与は過去のやり方を踏襲した上で現代風にアレンジ。重なる大会延期で「もうできないのでは?とへこんだときもあった」と言うが、そんな状況下で長与は「とにかく映画を見まくった」とのこと。映画とプロレスの関係とは…。

「もう見尽くした感があるくらい、すっげえ映画を見た。とくに最初の5分と最後の5分と中間の切り替わり、こればっかりを研究してた。それは自分の趣味でもあるんだけど、たとえばこのカードとこのカードを組んだときにどんな化学反応が起こるのかな、イヤだなと思っていることもやってみれば実はよかったりする。そんなことを考えながら見ていたんだよね」

 プロデュース的な研究に費やしていた1年。それはまた、欠場中の彩羽にも伝授した。思うように身体を動かせない分、プロレスアタマを鍛えたというのだ。

「選手にはセルフプロデュースの仕方も徐々に教えていった。プロレスは技術だけじゃなくて見せ方、立ち方も必要。細かいところのチェックを全部する。とくに(彩羽)匠にはケガの前からではあるけれども、この1年間で(プロレス)アタマをたたき上げた。彼女にカードを決めさせたりとかしているのは、策士を作るってこと。つまり、策士がいなければプロレスの団体っておもしろくないんだよ。だから策士を育てないと。どれだけ導けたかまだ分からないけど、いろんなものをたたき込んだ。今日(6・13)だってメイン(桃野美桜&門倉凜&星月組VS橋本&岩田美香&DASH・チサコ組)後に出ていって(勝った橋本の前で)復帰を宣言したでしょ。あれだって即興でいったんじゃないかな。団体ってそういう人がいるかいないかで全然変わるからね」

 だとすれば、マーベラス7・18後楽園で復帰する今後の彩羽ががぜん見逃せなくなった。今大会のメインでマーベラスが敗れ、AAAW王座の権利は仙女に持っていかれた。団体初の管理ベルトというチャンスを逃した桃野らは号泣…。しかし長与は、自団体の敗北に決して悲観はしていない。

「悔しくて過呼吸になるくらい泣きじゃくった。マーベラスは泣いた分だけ強くなるよ。強くなったときにまたおもしろいものが見たい。ガイアイズムってなんですかとよく聞かれるけども、続きですよ、トゥー・ビー・コンティニュードですよ。今日は終わりと始まりがあった。仙女との闘いはまだ続く気がするし、最後なんかフリーフォールかってくらいに桃野が(橋本のオブライトで垂直に)たたきつけられたからね。あれを耐えられたのは受け身(のよさ)ですよ。それにしても、1年間チケットを持っててくれたお客様に感謝ですね。どれだけの偉業をガイアジャパンが成し遂げてきたというのがこの瞬間に分かった。今日は(全キャリア)41年分のボーナスをもらったような気がします」

 紆余曲折を経ながらも、大会は大成功。その裏には、長与によって肉体とアタマを徹底的に鍛えられた選手たちの活躍がある。長与から里村へ受け継がれたガイアイズムはいま、次代を担う若い選手たちへ――。

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