“映画監督”佐藤二朗が山田孝之を主演に起用した理由 売春、差別、障害…タブー描く

俳優の佐藤二朗(52)が監督した第2弾映画「はるヲうるひと」が6月4日、東京・テアトル新宿ほかで全国公開となる。架空の島の売春宿を舞台に、死んだように生きる男女がそれでも生き抜こうとする物語。佐藤が原作・脚本・監督・出演をこなし、山田孝之が主演した。佐藤が、性とタブーを扱ったR15+(15歳未満は観覧禁止)の問題作を撮った理由とは?

舞台俳優の起用は「作品のためになる」と語った佐藤二朗【写真:荒川祐史】
舞台俳優の起用は「作品のためになる」と語った佐藤二朗【写真:荒川祐史】

性とタブーを扱った映画「はるヲうるひと」で原作・脚本・監督・出演

 俳優の佐藤二朗(52)が監督した第2弾映画「はるヲうるひと」が6月4日、東京・テアトル新宿ほかで全国公開となる。架空の島の売春宿を舞台に、死んだように生きる男女がそれでも生き抜こうとする物語。佐藤が原作・脚本・監督・出演をこなし、山田孝之が主演した。佐藤が、性とタブーを扱ったR15+(15歳未満は観覧禁止)の問題作を撮った理由とは?(取材・文=平辻哲也)

ドラマ、アニメ、アイドル、K-POP、スポーツ…大人気番組が目白押しのお得キャンペーンを実施中(Leminoサイトへ)

 本作は自身が主宰する演劇ユニット「ちからわざ」で09年、14年に上演した演目の映画化。舞台はいたるところに置屋がある閉塞された島。凶暴凶悪な性格の長男・哲雄(佐藤)が置屋を仕切り、腹違いの次男・得太(山田)と妹・いぶき(仲里依紗)や遊女たち(坂井真紀ら)は哲雄の横暴に怯えながら暮らしていた。ある日、哲雄の振る舞いは一線を超えていく……。19年に第35回ワルシャワ映画祭の1-2コンペティション部門(長編監督2作目までの部門)に出品され、第2回江陵(カンルン)国際映画祭(2020年11月5~7日)では最優秀脚本賞に輝いた。

 佐藤は民放ドラマや人気クイズ番組「超逆境クイズバトル!!99人の壁」での明るくコミカルなキャラクターとは一転し、クリエーターとしての顔を見せる。本作を見ると、佐藤は演劇や映画の人間だと改めて分かる。「僕は、負を抱えた人が負の要因になる障害が最後に全部取り払われて、すごくいいことになるみたいな作品にはあまり興味がないんです。負は昨日と同じく、今日もそこにあるのに、明日も生きてみるかって思える話に、すごいドラマを感じるんです」と話す。

 この思いに、山田をはじめ、豪華キャストが集まった。「山田孝之は日本最高レベルの俳優だと思っています。最初にオファーした時はダメだった。映画『50回目のファーストキス』(18年)のハワイロケで一緒になった時に、『断ってしまって、すみません。本はすごく面白かったけども、方言がダメだったんです』というわけです。舞台は全員が関西弁を使う話で、映画の本もそうなっていた。孝之は、関西弁の役は関西出身の俳優がやるべきという考えで、それは理解できました。でも、ロケが終わる頃、僕がいつも行っている飲み屋に孝之がやってきて、『方言を標準語にできませんか』って。僕はすぐにプロデューサーに国際電話しましたね」。

 その山田の一言で、3兄妹の言葉使いは標準語となり、ほかの島民は各地の方言や架空の方言に変更した。「これは怪我の功名でした。女郎たちが訳ありでいろんなところから島に集まってきたという表現にもなりました」。メインは有名俳優にオファーしながらも、女郎役に舞台俳優を起用したのもこだわり。「彼女たちは一般的に知られてないけど、そういうのって、実は、役者としてはすごく有利。本物に見えるんです。もちろん、芝居の力がないとダメですけども、そういう人がいれば、その人のためじゃなく、作品のためになる」。

次のページへ (2/3) 僕が描きたかったこと「年齢が許すなら、多感な若い子たちにも見て欲しい」
1 2 3
あなたの“気になる”を教えてください