宮沢氷魚、SNS全盛時代に俳句と向き合って感じたこと「言葉が人を傷つけることもある」

幼い頃から俳優に興味を持っていたという宮沢氷魚
幼い頃から俳優に興味を持っていたという宮沢氷魚

ドラマ好きだった母…自分で事務所に履歴書を持参「芸能界に挑戦しないと後悔する」

 俳優には幼い頃から興味を持っていた。「母がドラマ好きで、小さい頃から一緒によく見ていたんです。あのキラキラした世界に入りたいと思っていました。ただ、俳優1本でいくというのは考えていなかったんです。芸能界に入りたいけど、それがモデルか、音楽かは決まっていなかった。大学の2年間、米国留学した時に、自分はこれからどうしたいのかと考え、芸能界に挑戦しないと後悔すると思って、休みで帰国した時に自分で事務所に履歴書を持って出かけたんです。その時も誰にも相談はしなかったですね」。

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 ドラマ撮影前の昨年9月に行った舞台「ボクの穴、彼の穴。」(翻案・脚本・演出ノゾエ征爾)は大きな転機になった。戦場の塹壕に取り残され、見えない敵への恐怖と疑心暗鬼にさいなまれる兵士の物語。「これは、『ピサロ』『豊饒の海』でも共演した大鶴佐助君との二人芝居ですが、会話劇ではないんです。最後の方に一瞬だけ会話があるだけ。本当に1人で過ごしているような感覚でつらかった。そこで改めて自分と向き合ったんです。誰とも接することがない状況って、コロナ禍での生活と結びつくところがありますよね。みんなが経験しているからこそ、うそが通用しないと思い、リアリティーを追求し、最後は自信をもってやりとげることができた。このつらい経験があれば、なんでもできると思えました」。

 役者は他人を演じながらも、自身と向き合うこと。「そうですね。必ずベースには自分があって、引き出しからいろんなものを出して、コーティングしていくことなんだと思います。役者にはいろんなタイプの方がいます。何でもこなせるカメレオン俳優もいますが、僕はそういうタイプではないかなと思っています。どこかに自分がいないと、演技できない。軸がぶれてしまうんです。ですが、そこはマイナスに捉えずに、これからもそういうスタンスでいこうと思っています」。

 演じ方もデビュー当初から少しずつ変わってきた。「始めた頃は台本がボロボロになるまで読み込んで、セリフの言い方も全部決めていって、撮影に入っていったんです。多分、不安だったんでしょうね。でも、決めていくと、現場でその芝居しかできない。芝居では必ず相手がいます。その相手が、自分が思っていたものと違うものを見せた時に、全く対応できなくなってしまう。今は固めすぎに、その場の流れも大事だなと思っています」。

 本作での好きなシーンは神奈川・江ノ島での句会散歩。「杏ちゃんと日傘の話をするシーンがあるんですが、そこではリアルな昴が見られると思います」。今回は、(同じくNON-NO専属モデル出身の)田辺誠一さんが俳句の師匠役で共演させていただきました。田辺さんも、ほかに似た俳優がいない方。とても勉強させていただきました。僕も、『宮沢氷魚みたいな俳優って、他にいないよね』と言われるようになりたいと思っています」。目指すは唯一無二の存在だ。

□宮沢氷魚(みやざわ・ひお)1994年4月24日、米国カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ、東京都出身。「MEN’S NON-NO」(集英社)専属モデル。2017年、TBS系ドラマ「コウノドリ」第2シリーズで俳優デビュー。以後、NHK連続テレビ小説「エール」、ドラマ「偽装不倫」、映画「映画 賭ケグルイ」などに出演。初主演映画「his」では第12回TAMA映画賞最優秀新進男優賞、第45回報知映画賞新人賞、第42回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。舞台に「BOAT」「豊饒の海」「CITY」。3月26日には映画「騙し絵の牙」の公開も控える。

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